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御相伴衆~Escorts 第一章 第七十八話暗澹たる日々⑧「西のお城へ1」
姫様、今朝は、何でしょうね。凛とされて、落ち着いた感じで、とても、お綺麗です。本当に、慌ただしかったですが、物事が進んでいく間に、大人になられてゆく感じが致しますよ・・・
暁は、姫の髪を整えながら、思っていた。
実質、今宵、アーギュ王子の西のお城でのお出会いが整えば、おめでたいことですね。お二人のご意向がありましょうから、慌てて、周りが追い詰めること無きように考えております。お二人のペースで、進んで頂きたいと思っていますから・・・。
「姫、本当に、お綺麗ですよ」
「ポンポンは、変えないの。女美架が飽きるまでするから」
「これは、姫様のトレードマークですものね。特別に、結い髪をする時と、お休みの時は、外されますけどね・・・それにしても、お熱も下がって、良かったですね」
「疲れると、熱、出やすいのかもね。でも、維羅も、心配ないみたいに、言ってたから」
なんとなく、女美架は、服の選定にも、気乗りしなかったが、第二皇妃と、一の姫が、カメリアに相談し、オートクチュールで、白いドレスを仕立ててくれた。裾のシフォンが着け外しのできるもので、小さなレースの小薔薇が、色とりどり、刺繍されている。
「お母様と、一のお姉様、すごい、愉しそうに、このドレスのこと、話してた。ちょっと、女美架、ドールハウスのお人形になった気分だったんだけど」
「こんなに、可愛らしいドレス、女美架姫様しか、似合いませんよ」
「今度、慈朗に、考えて貰おうかな」
「ドレスをですか?まあ、いいかもしれません。慈朗様なら、こないだのクッキーのラッピングも、素敵でしたからね。お話してみましょうか?」
「あ、ううん、なんとなく、思っただけ。慈朗も、お勉強一位キープで、頑張ってるから、邪魔したくないから、大丈夫」
お洋服、ちょっと、面倒臭くなってる。だから、慈朗にとか、悪いこと、言っちゃったな。
「緊張されてらっしゃるんですね」
「ああ、うん、そうかも。でも、女美架、今日は、ランサム語、教えて頂くのが楽しみなの」
「まあ、それは、それは、さあ、ご準備できましたね。下で、渦が待っていますから、」
「あ・・・暁は?」
「勿論、ご一緒しますよ。お食事のお世話など、最小限度の身の周りのことは、いつも通り、させて頂きますから。ご安心なさってくださいね」
「あー、よかった。他の人は、誰もいかない、って、王子が仰ってたから」
暁は来てくれるのね。それはそうかな、とは思っていたけど・・・。
「まあ、今回は、皇帝陛下や、皇妃様、一の姫様がお会いにならない、という意味なのでしょうね」
「そうなんだ。慈朗とかも、行かないんだよね」
「そうですね。姫は、そういう会の方がお好きですか」
「二人っきりで、長い時間、何をお話したらいいか、解らないの。だから、ランサム語、教えて貰うことにしたの。お勉強してると、時間経つの、速いし・・・」
「姫?・・・姫は、王子にお会いしたくないのですか?」
女美架は、少し、考えた。
「・・・緊張するから」
「大丈夫です。初めて、お会いするのではないでしょう?もう、知り合っているのですからね。お会いすれば、わかりますよ。愉しいデートになりますよ」
「デート、なんだ」
「違いますか?」
「うーん・・・そう、みたいだけど・・・」
暁は、優しく、姫の肩に手を置いた。
「はい、笑ってください。姫は、ニコニコされてるのが、可愛らしいですからね。こちらの空港に、お出迎えして、スヴェル湖の周りを、お車で回ってから、ピクニックのように、お昼を設えますからね。姫のお好きなフルーツサンドもありますよ」
「暁も、ご一緒して」
「え、だから、お側におりますよ、その時は」
「えっと、ランサムの方も、ご一緒で、あの、眼鏡の人も来るかもね」
「ああ、同じ方が来られるかは、わかりませんが。とにかく、参りましょうね。玄関に、渦を待たせておりますからね。遅刻したら、大変ですよ」
玄関には、桐藤と、一の姫が見送りに出ていた。
「三の姫様、アーギュ王子に、よろしく、お伝えください」
「女美架、私からも、同様にお願いしますね。愉しんでらっしゃい」
「桐藤と一のお姉様も、来られれば、いいのに」
桐藤と、一の姫は、顔を見合わせた。
「お邪魔にしか、なりませんよ」
「お気遣い、ありがとうございます。こちらも予定がございますので」
「そうなの・・・」
「では、姫様、車を出しますので」
運転手の渦が、穏やかに、三の姫を促した。
「暁、よろしくお願いしますね」
「お任せください。・・・というか、アーギュ王子に、お任せ致しますので・・・」
見送りに来た、桐藤が頷いた。
姉の一の姫も、一緒に来ている。
「その通りだ。粗相のないようにだけ、気を配ってくれ」
「かしこまりました」
「女美架、ドレス、お似合いです。可愛らしいので、自信を持ってね」
三の姫は、姉姫の言葉に、少し、口を尖らせた。車は発車した。
渦は、三の姫の不安を察しつつも、この後の予定を伝えた。
「西のお城には、姫様、久方ぶりでしょう。さて、空港に寄って・・・と。王子様のお車もお待ちですからね」
🍓
なんかな・・・
心配というか、緊張というか、『恋物』が過ぎて、女美架は「読んでる人の方が楽」なのが、よく解った。
紅色の『恋物』、少し、お姉様にお借りしたら、男の人が、沢山、出てきて、国産みの女神様、頭、おかしくならないのかな、って、思った。女美架は、数馬とのことがあって、次に、アーギュ王子と・・・って、いうだけで、悲しくなったり、ドキドキしたり、色々してて。
空港に着いちゃった。ランサムの旗のついたお車だ。
女美架、渦の車がいいのに、多分、あっちに、王子と乗せられるんだ、また。
「はい、着きました。ドアを開けますからね、お待ちくださいね」
隣に乗っていた暁が、三の姫に声をかけた。
「姫の言う通り、今日も、眼鏡の方、来られてますね」
「ああ、本当だ。王子の側近の人、姫の暁の役みたいな人だね」
「そのようですね。ああ、姫、ほら、王子が、手を振ってらっしゃる」
「あああ」
「どうしたのですか?」
「・・・お腹痛い」
「まあ、それは、学校に行きたくない時に、似てますね?」
「ちょっとだけ・・・」
車をなかなか、降りて来ない、姫の様子に、アーギュ王太子の側近兼通訳のジェイスが、近寄り、挨拶をする。
「一週間ぶりでございますね。暁様。女美架姫様、どうなされましたか?お出ましに当り、何か、ございましたか?王子が、お待ちなのですが・・・」
「いえ、大丈夫です。・・・えーと、先日も、いらっしゃった方でしたよね。ごめんなさい。失念してしまいまして・・・」
「ジェイスと申します。あの、本日のご予定の確認を、早速、させて頂きたいのですが、暁様で、よろしいのでしょうか?」
「そうそう、眼鏡の方、ジェイスさん。暁のお名前、覚えてるよ。ジェイスさんは」
「あ、・・・それは、ありがとうございます。あの、それより・・・アーギュ王子、申し訳ございません」
気が付くと、もう、王子が車の傍に・・・。三の姫は、ますます、顔を下にうつむいてしまった。
「この距離です。もう、私が出ていっても、よろしい頃でしょう?姫、ご無沙汰しております。見た所、小鳥が、巣から飛び立つのを戸惑ってる・・・ような感じですね。わかりました。では、今日は、私が、こちらのスメラギのお車に、乗せて頂きましょうか?」
「姫、ご挨拶を・・・」
「・・・こんにちは」
「じゃなくて・・・ああ、王子、申し訳ございません」
まあ、なんて、良くお解りなのかしらね。
姫の、なんていうのか、ちょっとした所なのだけれども・・・、この方なら、姫をお任せできますね。
暁は、姫の様子に半ば心配ながらも、そのように感じた。
「ジェイス、そんなに、打ち合わせをしたいのなら、暁殿に、そちらに乗って頂くといい」
「えーと・・・よろしいのですか?」
「しかし、王子、それでは」
「お前がいなくても、姫とは話ができるし、それに姫は、ランサム語を学びたいと仰っていますから、丁度良い機会です」
会話を聴いた、運転手の渦は、すかさず、申し出た。
「お任せください。宮の領内ですから、セキュリティ対策は、万全ですから」
三の姫は、大人たちが、自分の頭上でやりとりしているのを、きょろきょろと見上げていた。
暁が車を降りて、ジェイスと話を始める。その後、渦が車のドアを開けると、アーギュ王子が、女美架姫の右側に、暁に代わって、乗り込んできた。ニッコリと、姫に微笑みかける。車は動き出し、スヴェル湖に向かって、走り出した。
あ、暁が向こうに、代わりに、王子がきちゃった・・・
お腹痛い・・・どうしよ・・・。
~暗澹たる日々⑨へつづく~
みとぎやのメンバーシップ特典 第七十八話 暗澹たる日々⑧
「西のお城へ1」 御相伴衆~Escorts 第一章
緊張すると、お腹痛くなる。学校に行きたくない、とか、色々ですが、そういう経験はありませんか?
三の姫は、西の国の王太子のアーギュ王子に見初められましたが・・・。
背景の設定を言いますと、こちらの地球で言う所の、アジア圏が、スメラギ、素国、東国の三国という感じになりますが、ランサムというのは、いわゆる、西洋的な感じで、体躯も大きな人種となります。言語は、こちらでは英語がランサム語という設定です。
前回、いきなりの接近戦があったようですが・・・惹かれつつも、ちょっと、緊張する・・・「好きな人が苦手」と言っていた男の子がいたのを思い出しましたが、そんな感じになるのでしょうね💦
今回、この件が続き、印象として、長いようですので、残りを次回にしました。お楽しみになさってください。
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