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御相伴衆~Escorts 第一章 第二十五話 お許し 桐藤と一の姫①(一の姫視点)

 本日の御調べで、御殿医からのお許しが出たことを、お母様が、とてもお喜びになられて。私としても、この病気ですから、そのようなことは、もう、無理か、と思っておりました。元気な身体ならば、もう、この齢ですから、他国へ嫁いでいる頃・・・でも、そのようなことになるという実感は、全くなくて・・・。

 「恋物」のように、好きな方ができたとしても、きっと、叶わない。そのように思っておりましたから・・・。

 先程、蜜餅みつもちの儀で、桐藤キリトと一緒に、お許しを頂いたのですが・・・。たまたま、桐藤は、軍の方とのご勉学の予定があるので、午後は、そちらへ行ってしまわれたのだけれども。

「ただね、柳羅リュウラ、よく聞いておくれ。お前の病気も、今後、どのように悪くなるか、解らないと、御殿医の滋庵先生が、言ってましてね。確かに、お許しは出ましたからね、早いうちにね、その・・・」
「お母様、それは・・・」
「はっきり、聞きますよ。桐藤とは、どうなってるのかしら?」
「どう、って、お部屋で、お勉強を見て頂いて、ご本を一緒に読んで頂いて・・・」
「それだけ?」
「お茶の時間も過ごしています。好きなものを申し上げると、御菓子や、ご本など、探して、次の時には、必ず、持ってきてくれて、申し訳ないぐらいです」
「・・・ん、そうよねえ。その通りだわ。桐藤は、随分、お前に尽くしてくれてるのよね?柳羅。そうだわ、これからは、お食事も、お部屋でご一緒なさい、ねえ、いいでしょう?」
「ですが、桐藤も忙しいのではないですか?私ばかりに関わっておられないのではないでしょうか?国の為のお勉強を、沢山されているのだ、と伺っておりますので・・・」
「いいのです。もう、他のお仕事は、全て、外して、お前の専用にします。というか、そもそも、彼は、お前のものです。『姫付き』なのですから、ね?解るわね?」
「・・・はい・・・でも、・・・」
「桐藤は、本当に、賢くて、私の言うことを良く聞いて、このスメラギの行く末を、誰よりも、よく考えています。私はね、かねてから、桐藤に、お父様の跡を継いでもらいたいのです。男児を設けられなかった、ということもありますが・・・お前のその第一皇女の皇統という血筋で、次期皇帝として、桐藤を擁立しようと考えているのですよ」
「はい、それは、以前から、・・・そのように、伺っています」
「解りますね。だから、その・・・」

 お母様は、私に対しては、いつも、そんな感じに、じれったいように、お話される。仰る意味は、なんとなく、わかっているのですけど・・・。何と言うのか、ご報告のように、お話することではないし、桐藤とは、その・・・、なんというか、少しずつというか・・・。

 確か、妹の美加璃ミカリの時は、お父様とも、ご一緒の時で、私も同席していて・・・

「わかったわ。柚葉ユズハにお話してみますから」

 美加璃は、即答していて。私は、それに、とても、びっくりしてしまって。

 そんなこと、女性の方から、なんと言って、お話するのかしら?

「ごめんなさい。お姉様。私の方が、先になってしまって・・・」

 でも、すごく、美加璃は、嬉しそうにしていて。元々、柚葉のことが大好きで、柚葉と話したこととか、柚葉のどこが好きなのかとか、ずっと、私の所に来て、話してくれていて・・・。早く「恋物」のように結ばれたいのだと、はっきり言っていて、私の方が、恥ずかしくなってしまって・・・。

「お姉様、実はね、『奥許し』は、その最後の段階のことなんですって。だから、その前までは、お許し前でもしてもいいのよ」
「・・・」
「あ・・・ごめんなさい。お姉様には、解らないわよね。だからね、柚葉とは・・・」

 何かある度に、丁寧に、報告してくれて。ちょっと、自慢したかったみたいな所もあるけど、美加璃が幸せそうだから。でも、びっくりすることばかり言うの。恥ずかしいこともあったり・・・、それでも、何とかね、聞いてあげていたのだけれども。そのような向きのこと、解らなくはないのですよ、私だって・・・。桐藤は、私の身体のことを考えてくれてるから、とても、ゆっくり、進んでくださってるの、解ってますから。


「お前に似てるな、美加璃は。求めが、はっきりしすぎて、世話なしだ」「・・・陛下、美加璃が男の子だったら、どんなに良かったか、と思うのですよ。この勝達さは、皇子のようで・・・」

 お父様と、お母様が、そんなお話をしてらして。

柳羅リュウラ、お前は、その品の良さが良い。最近では、ますます、お婆様に似てきたと思う。まさに、このスメラギ皇統を象徴する姿と、品の良さだ」

 お父様のお言葉に、とても、嬉しく思いました。お婆様は、皇太后になられてからも、お亡くなりになるまで、スメラギの国の為に、色々と尽くされた方と聞きましたから。そのお婆様に似てるなんて、本当に、光栄なことなのですから。

女美架メミカも可愛いですわ。お人形さんみたいで、本当に、ドレスが何でも、似合いますからね。女美架は、然るべき、国のお妃にと思って・・・」

 お父様と、お母様が、末っ子の女美架を溺愛してるのは、とてもよく解ります。私もそうだから。天使みたいに優しくて、可愛いから。あ、最近、見かける、庭で絵を描いている子も、一緒にいると可愛い感じ、天使が二人でお似合いだとも・・・これは、私の思いつきのお話なので、皆様の前では、言いませんけど。

 今回のお許しについては、先程の儀式で、桐藤も、ご存知かと思うから、次にお部屋に見えた時には、そのお話をすることになるのでしょうね・・・でも、なんか、信じられませんし、美加璃の言うようなことまでは・・・美加璃と柚葉とでも、私には、想像できませんから。柚葉が、美加璃の手を取られて、中庭をお散歩されているのを見たことはありますけど・・・。

 ましてや、あの桐藤ですから。真面目で、きちんとしていて、お話と言えば、スメラギの経済、軍事という、それは大事なお話、女の私には、到底、知りえない、難しい国の政(まつりごと)のことが多くて。でも、私は、そのお話を聞くのが好き。知らないことを、解り易くお話してくれる、桐藤は、本当に賢いのだと思います。先生のようですね。桐藤は、学校の先生が向いていると、いつも思います。女美架が、宿題が解らない時は、大きな紙に絵に描いて、算術の文章題を、説明してくれていました。エレメンタルスクールの先生から、大学の先生まで、全部、できそうなくらい、賢いのかもしれない、と誇らしく、思いました。・・・それでも、お薬が飲めない時とか、お食事が進まない時に・・・あんな風に、優しく触れてくださるのは、私だって、その・・・、嫌ではありません・・・嬉しいことですから。

 あ・・・、私ったら、桐藤のことばかり。

📚

 お部屋に戻ると、お勉強の時間になり、なんか、ドキドキして、意識してしまいました。その時、桐藤は、新しい色の表紙の『恋物』を、持ってきてくれて、何事もなかったように、いつも通りにご指導してくださって。でも、

「プレゼントです」

 お勉強の後、帰り際にくださったのよね。「国産の女神」のシリーズでした。今、一番、欲しい御本で、先日は、抜粋編を読み聞かせしてくださったので、その先が、とても、読みたかったものだから・・・先日、やっと、お母様から、許可が出たもので・・・これは、紅色の表紙で、大人用の「恋物」のスタンダードだから。

「少女の為の『恋物』は全て、その蔵書を揃えてしまったそうですね。少しずつ、年相応の物を読まれるのも、気分転換になりましょうから」

 窓の方を見ながら、腕組みして、淡々と喋ってたのよね。でも、やっぱり、なんとなく、この時の桐藤は、何か、いつもと違う感じがして・・・。いつものように、お隣に座ったりしてくださらなかった。

「このシリーズを読み終えたら、最後の紫表紙のものも、よろしい頃になるかと思いますよ」

 そういうと、スッと背を向けて、帰ってしまったのよね。

 なんか、素っ気なく、わざと、そんな感じにしてるみたいで・・・。

📚📚

 同じ日の夕方、美加璃がお部屋に、そのお祝いを言いに来てくれた時、この話をしたら、とても、愉しそうに、私のことを見てきて、

「桐藤、そんなこと言ったんだ・・・うふふふ」
「何?」
「それって、『奥許し』のお許しが出たからよねえ」
「・・・でも、何も、そのことは、お話してくれなかったわ」
「・・・まあ、あの桐藤だもんねえ・・・多分、言えないよねえ。言わないで、プレゼントを置いてったのよ。照れてるのかもよ」

 美加璃は、解ったような顔つきで、腕組みしてるけど・・・。

「やだもう、説明なんて、要らないじゃない。お姉様は、桐藤のこと、お好きなんでしょう?」
「・・・」
「うふふ、真っ赤よ、お姉様」
「とにかく、このお話をお読みになったら?そうしたら、解るかもよ」
「このシリーズが終わったら、紫も、って」
「え、そうなのぉ、そうなんだぁ♡ わぁ、・・・すごいね、桐藤、やるわね・・・」
「何?なんなの?」
「教えてさしあげない」
「美加璃・・・なんなの?」
「桐藤も、お姉様が、お好きなのよ。それを、暗に示していったのよね」

 そんなことは、もう、とっくに、解っていますけど・・・

「ねえ、柚葉は、美加璃のそれを知って、どうしたのかしら?」
「言ってもいい?」
「・・・ええ」
「本当に、言ってもいい?」

 すると、美加璃は、勿体つけながら、私に耳打ちをしてきて・・・。

「その日のうちに、お部屋に来て・・・って?」
「そうよ」
「ええ、そんなことって・・・美加璃」
「何?」
「勇気があるのね」
「違うわ、うーん、これは、そういうことじゃなくて、好きあってれば、自然にそうなるものだから・・・でね、その時の柚葉は・・・」
「あああ、もう、いいわ。・・・私、本を読みたいので・・・」

 人のことは、あまりね、伺っても、何だか、恥ずかしいばかりで。

 慌てて、美加璃を追い返してから、その夜、私は、その物語の1冊目を、夜遅くまでかかって、読破しました。

 国母になる主人公(ヒロイン)は、そもそも、その伽20傑という人達と、恋人になることで、伽の種を集めていく、というお話で、まずは、一人目のお医者様と結ばれるみたいなのだけど・・・。

📚📚📚


「伽産物語 1の章より 抜粋」


「これを、貴女に差し上げますから、読んでください」

「これは、伽のタブレット・・・?」

「そこには、貴女がこれからなすべき、使命が書かれています」

「・・・先生、これから、私が、このお役目をするのでしょうか?」

「そのようです。その為には、私が貴女を、『国母』というお役目に目覚めさせなければなりません。それについても、ここに書いてありますから、よく読んでください。では、貴女が納得されましたら、そのように致しますので・・・では、失礼します」

 先生は、ドアを閉めて、出ていかれた。

「・・・え、・・・そんな」

 確かに、私は先生が好きで・・・でも、恐らく、もう時間がないのもわかっていて。伽の世界を救うには、この方法しかないなんて・・・。

📚📚📚📚

 なんか、この先生の動き、今日の桐藤みたいね・・・。タブレットをおいて、そのまま、素っ気なく帰っていったの。

 その後は、って・・・

 ・・・もう、色々と考えてしまって、今夜は、あまり、眠れそうにありません。

 アカツキにお願いして、果実酒に、少し、蜂蜜を入れて、温めたのを、作ってもらって、飲んで、やっと、横になりました。

                      ~桐藤と一の姫②へ続く~


みとぎやのメンバーシップ特典 第二十五話 お許し 桐藤と一の姫①
                      御相伴衆~Escorts 第一章

 新しいお話に入りました。
 この二人は、ロイヤルカップル的で、両想いですね。
 
 
 ちょっと、劇中劇のことを書こうかなと思います。

 掲載中の「舞って紅」で、「畸神譚」の三代目のお話が、ヒロインのアカの口から語られている所ですが、この「御相伴衆」では、もう一つの「畸神譚」の話が語られています。「国産物語」というタイトルに変わっています。これらは、みとぎやの創作の中の『伽世界』の神話に当たるものです。

 さて、次回は、どんな感じになりましょうか?
 お楽しみになさってください。
 

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