御相伴衆~Escorts 第一章 第二十八話「奥許し~貴女に温めていただきます」桐藤と一の姫④
御本のお話ではありません。これ以降は、目の前の、俺とのことになります。
御本では、頭の中で考え、どうなのか、思い描くだけですから、細かいことが解りません。お一人で、主人公(ヒロイン)のようになられましても、隣に、王子様はおりませんからね。心だけが惹き上がって、王子様の手の温もりは、実際に判りませんし、近くに来た時の息遣いや、腕を彼の首に回した時に感じることのできる、その匂い、身体を添わせた時の心臓の鼓動など、読みものだけでは足りません。その肌感覚が、補完されないからです。
じゃあ、もし、その感覚を知ってしまったら・・・、その後に、もう一度、その御本をお読みになったら、いいのです。一番、お好きな方とのそのことを思い出せば、より、その臨場感と、理解が深くなりますが故。これは、やってみてください。是非、お勧めします。姫様。
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「僕のこと、怖くなかったんですか?」
「え・・・あの、怖くないですよ、桐藤ですもの」
「良かった、じゃあ、これは?」
「・・・」
「怖くない?」
柳羅様はこくりと頷く。
・・・と、お顔を上げられる前に・・・、
「もう、お迎えに行きますが、よろしいでしょうか」
いつのまにか、唇が触れ合って、重なって・・・。
本当に、唇が触れ合うだけ。どうですか?離れるや否や、首を小さく横に振って、下を向かれてしまって・・・、なんだかね、実は、ゼリーを口移しした時のこと、お忘れになられてますね・・・。それもいい。むしろね。
「以前は、お薬がどうしても、飲んで頂けない時だけ、このように致しましたが・・・嫌でしたか?」
また、首を横に振る。今度は、はっきりとノーの意味ですね。じゃあ、いいんですね。
「待って、待って・・・だめ、桐藤」
でも、まあ・・・そうですよね。貴女は、お母様や、すぐ下の妹姫とは違いますから。俺から見たら、全く、違う存在です。それでいい。それでこそ、柳羅姫、貴女らしい。
「僕を、僕の顔を、目を見れますか?」
そう言うと、恐る恐るという感じで、顔を上げて下さいました。
「ありがとうございます。・・・多分、この方がよろしいのでしょうね」
ゆっくりと、抱き寄せて、少しずつ、手を回して、抱き締めてさしあげる。金色の髪を撫でて、耳にかけて、梳き払って。腕で、その細い身体を包んで、俺の懐に鎮めてさしあげる。
「嫌ですか?」
「いいえ・・・、桐藤は・・・とてもあったかいのね」
「姫様もですよ」
「・・・嬉しいです」
ありがたいお言葉です。こんなに早く頂けるとは、思いも拠りませんでしたよ。
「僕も嬉しいですよ。貴女は、正当で、完璧なスメラギの皇女でいらっしゃる。本当だったら、僕なんかが手を触れるなんて、許されないんですよ。それが、あまつさえ、腕の中に、こうやって、抱き締められるなんて・・・、小さい頃からの悲願でしたよ。貴女は、僕の初恋の人ですから」
「・・・、ごめんなさい、・・・なんか、涙が止まらなくて」
「いいですよ。好きなだけ、泣いて下さい。・・・貴女が、僕の腕を頼りにして、泣いて下さるなら、いくらでも、受け止めますから」
頭を撫でて差し上げる。少し、居ずまいが辛そうではないか?
「こちらに移りましょう。来てください」
ベッドに上がり、枕を背に挟み、壁に寄りかかって、掛けてみせた。どうしていいのか、解らない様子なので、また、お迎えに行く。
「あああ、ごめんなさい・・・」
「いいですよ、何度でも、させて頂きます」
二度目の『お姫様抱っこ』で、そのまま、先程のように、腰かけて頂いて。
「これなら、お互い、疲れない体制でいられますから」
「でも、・・・」
「ああ、そうじゃなくて、一度、俺の首から手を外してみましょうか。そう、そしたら、このまま、俺に凭れてください。椅子だと思って頂いて、結構ですよ」
自らの脚の間に、姫を降ろす。
「失礼します」
「あ・・・あの・・・」
腕を後ろから回して、身体を抱き寄せました。向きは違いますが、先程と同じようになりましたね。貴女の背中と、俺の胸が、ぴったりとくっつきました。磁石の様ですね。
「大丈夫ですか?」
「はあ・・・」
「腕、緩めた方が、いいですか?」
「・・・あ、あの、どうしたら・・・」
「いいんですよ。何もなさらないで、僕に寄りかかって、委ねてくださればいいんです」
「・・・」
この体制だと、顔が互いに、真横に接するので、視覚というより、肌感覚の刺激が優先されるのでしょうね。前を向いて、俯いておられるのでね。でも、そのように、首を前に下げられると、背中は後ろに動くんですよ。だから、身体同志は、より密着するんです。
「少し、お身体が熱くなられたような気がします。お熱が上がられてるような感じでしょうか?もし、そうならば、早めにお休みになられた方が、よろしいかもしれませんね。どうですか?」
「・・・、あ、多分、お熱ではないと思うのですが・・・」
意地悪な質問をしました。お気づきでないかもしれませんが、この後を進めてもいいか、と聞いたのです。全ての中断を意味する質問に対して、ノーとはっきり、お答えになられましたね。
「良かったです。お加減が悪いのであれば、無理はいけませんから」
「ただ、そうなってしまう、だけ、みたいです・・・」
「熱いのですか?」
「・・・桐藤の所為です。こんなことをするから」
なんてこと、仰るのでしょうか。小さな声が、震えていらっしゃる。
「何か、仰いましたか?よく聞こえなかったのですが」
「いえ、ちょっと、苦しいです。辛いです。・・・どうして、こんな風になるのか・・・」
「先程のように、向き合って、抱っこしましょうか。その方が安心するでしょうから、さあ、こっちを向いて」
聞こえてましたが、ここは、これで良いのです。
お応えをわかってらっしゃるのですから。
そう、全て、俺の所為です。俺が、貴女に、こんなことをしているからです。
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貴女のお母様から、教わった手練手管、結局、使う先が、柳羅様、貴女なのですよね。俺は、生粋のスメラギの人間です。出自については、色々な所から、推測が齎されるが、俺としては、そんなことはどうでもいい。片方の親がスメラギ人だということが解っている。そのことが解ってさえいれば・・・。そして、貴女が、国の外に嫁ぐことができない、その状態が(貴女には残念なことかもしれませんが)俺には、幸いなんですよ。
でも、それは、勿論、そんな欲得ばかりのことでは、ありません。
それは、先程、申し上げました通りです。
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先程のベッドサイドの時よりも、強く抱きしめてさし上げます。
「腕を僕の背に、回せますか?」
ずっと、大切なものを護るように、口元の前で組まれた、貴女の両手が、この体制だと、お互いの間を阻んでいます。
「無理なら、僕の胸に、手のひらを当てるようにしてもらっても構いません。ああ、お上手ですよ」
すると、自然と、お顔がこんなに近くにくるのです。仕方ないですよね。
「・・・だめ、・・桐・・・んっ・・・」
すみません。さっきのとは違います。少し丁寧に進め過ぎて、却って、こちらが、惹き上がってしまいました。
「こんな近くに、可愛らしい唇があるから、いけないんです」
なんて、お顔をなさるのですか?目は閉じかかって、その唇は少し開いて、呼吸が速くなっていて、これはまた、その下で、貴女の胸が、上下に動いています。
「苦しくて、お辛いのは、まだ、続いているのでしょうか?」
「・・・はい・・・もう、どうしていいのか」
「どこが、お辛いですか?」
首を振る、柳羅様。恐らく、ご自分の中で湧き上がってくる、女性としての感覚に押し潰されそうなのでしょうね。爆ぜそうな、その感じを堪えている。だから、お辛いのです。
大丈夫です。俺の手で、少しずつ、解して、解いて、楽にして、その中に埋没させてさし上げますから、その時は、心行くまで、溺れてくださいね。
戸惑いますね。切なそうなお顔で、目を逸らされると、また、惹き上がってしまいます。どうしたら、いいのでしょう・・・。
堪りませんね。柳羅様、俺と対峙してるだけで、貴女は、こんなに惹き上がってらっしゃる。それを、ご本人はお気づきでないんです。
「このままだと、倒れてしまいますね。いいですよ。横になってください」
ゆっくり、仰臥させて、離れると、また、同じ仕草になります。女性らしい、可愛い仕草だとも思うのですが・・・
「皺になるので、これ、お気に入りなのです。少し、お待ちくださいね」
見せているのですよ。脱いだジャケットを椅子にかけて、ネクタイを外します。ゆっくり、勿論、貴女の所から、見えるようにやっているのです。ご覧になっても、ならなくても、それはいいのです。意味が解れば、それで、いいのですよ。
これは流儀ですからね。カフスを外し、テーブルに置きます。左を外したら、右も。シャツのボタンを外します。ついでに、ベルトもとっておきましょうか。途中で、痛い思いをさせないように。無粋な、靴下も要りません。
やはり、向こうを向いてらしたのですね。流石に、僕だけ、丸腰になるわけにはいきませんから、シャツは羽織ったままですし、下もそのままです。安心してください。びっくりする程の姿には、なっていませんからね。
「・・・ジャケット、ハンガーに掛けないでいいのですか?」
「嬉しいお気遣い、ありがとうございます。これで、大丈夫です」
「そのジャケット、襟元の刺繍、お上品で素敵で、私も好きです。桐藤に良く似合うなと思って。他の方で、似合う方が見当たらないと、ずっと考えていたのです」
「嬉しいですよ。お気に入りなのです。お待たせ致しましたね。少し、楽になりましたか?起き上がれますか?」
この期に及んで、こんなにお話になられるとは。ああ、そうですね。簡単でした。俺と離れたから、楽になられたのでしょうね。また、苦しくなってしまうかもしれませんが。
「手をお貸ししますよ。捕まって」
ゆっくり、両手を引いて、身体を起こしますよ。お顔を見たら、少し、お酔いになっている表情ですね。でも、俺のシャツのボタンが、いくらか、外れているのをご覧になった瞬間、少し、戸惑われたようですが、・・・すかさず、抱き締めてさし上げます。
ワンピースは、大概、背中に着脱の為のファスナーがついていますね。たまに、前が空くものもありますが、少し、情緒に欠ける気もします。
「あ、・・・ダメ、ダメです。桐藤」
「何がですか?大丈夫ですよ。後は、腕を引いてくだされば、解放されますよ」
「そんな、もう、いけません。恥ずかしいです」
「綺麗な背中ですね、もう、触れてしまいました。許してください」
抱き締めながら、肩を包んでいる、青い布を腕に添って引く。
「・・・ダメです、桐藤・・・もう・・・」
「肩も、二の腕も、綺麗です。あと少し、腕を抜いてください」
左の腕が抜けました。そんなに隠さなくても、未だ隠れているのに、でも、可愛らしいキャミソールの肩ひもは、肩を滑り、腕にひっかかってますよ。貴女がどうしたいのかを裏切ってるのか、・・・でも、俺には追い風です。とても、それが、堪らなくしどけなくて・・・。
「柳羅姫・・・!!」
「桐藤、何を・・・あっ、そんな・・・」
ゆっくりですが、起き上がって頂いたのに、また、押し倒してしまいました。貴女がいけないのです。ご自分の、そのような感じに無自覚で、本気で困ってらっしゃるのが、とても、可愛らしくて、それ以上に、貴女ご自身が綺麗で、魅力的で・・・
「どうですか?苦しさが少し、楽になっていませんか?まず、お洋服、少し、きつくなられてたでしょう?」
「・・・あの時、実は、慌てていたので、これにしましたが、その通りです」
「きついのは、この辺りですね。右側も解放してさし上げましょうね」
「・・・あ、ちょっと、・・・そんな・・・」
とても、可愛らしい・・・綺麗な肌の腕、首、鎖骨、また、その呼吸で、上下し始めた、胸はやはり・・・、
「きついお洋服が解かれて、呼吸が、少し楽になられたのではないですか?」
「・・・桐藤、もう、恥ずかしいです・・・」
「じゃあ、お洋服、もう一度、お召しになりますか?」
「あああ、・・・」
お顔を隠されてしまって。
「このままで、しばらく、いいですよ」
「あの、毛布、掛けさせてください、お願い・・・」
「わかりました」
シャツを脱ぎ捨てて、それから、ブランケットを姫に掛けてさし上げて、そして、その中に滑り込みます。
「あ・・・寒くないのですか?桐藤・・・」
「毛布と仰ったから・・・、それに、貴女に温めて頂きます」
「・・・桐藤、・・・ずっと、意地悪です」
お解りだったのですね。ならば、話は早いですね。
~桐藤と一の姫⑤へつづく~
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第二十八話 「奥許し~貴女に温めていただきます」
桐藤と一の姫④ 御相伴衆~Escorts 第一章
物事は順調に進んでおられるようで、喜ばしい事でございます。
といった感じなのでしょうか?
次回もお楽しみになさってください。
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