
御相伴衆~Escorts 第一章 隣国の王子編第六十九話 東屋での秘蜜~お見送り②
「ごめんなさい」
「謝らないでください。そんな、終わってしまう。『保留』だと言ったでしょう?」
「王子、姫はどうしたらいいですか?」
「・・・そんなこと、聞いてはダメですよ」
「だって・・・」
「じゃあ、ここで僕が跪いて、懇願したら、このまま、ランサムに来てくださいますか?」
「それは、・・・できません」
「じゃあ、少しだけ、お願いを聞いて貰えますか?」
ゆっくりと近づき、王子は、先程の続きのように、そっと、三の姫の頬に触れる。
「貴女に僕を憶えておいてほしいです。少しだけ、貴女に触れてもいいですか?」
「あ・・・」
次の瞬間、三の姫は、アーギュの大きな身体に包まれた。触れた瞬間から、比較対象として、余儀なく、数馬との感覚が引き出される。・・・懐は大きく、長い腕は、緩く自分を捉えているのを感じた。
違う。数馬とは違う。どちらかというと、小さい頃、父に抱きかかえられたのに近い感覚だった。安堵に近い、不思議な感覚だった。
「え・・・あの」
「なんですか?」
「イランイラン・・・?」
「よくお解りですね。嬉しいですよ・・・僕の匂いです」
知ってる。好きな人の匂いだ。途端に、涙が溢れてきた。目の前に触れている、濡烏の髪。女美架、どうしたんだろう?彼は、数馬じゃないからね。でも、この感じ、視覚と嗅覚が、数馬との疑似のように相まって、その時の感覚を呼び出しつつある。
違う、違うの。この人は数馬じゃないの。女美架、ダメだよ。
「大丈夫ですか?少し、震えてますね。怖いですか?」
ダメだ、涙が止まらなくなってる・・・
「びっくりさせてしまいましたか?すみません」
アーギュは、ハンカチを取り出し、女美架の頬を拭う。
「そんな姿を見てしまうと、弱いんですよ。男というものは、好きな人の涙にね」
ダメだ、顔近い。解るよ、もう、こんなの。
目の前の、まだ恋を覚え始めた娘が、何かに感じ入ったのだろうと、アーギュもこの反応には驚いたが、同時に逃すはずもない。惹き寄せて、口づける。女美架は、予測通りの流れに、逃れられるわけもなく、じっとして受け入れる。
口では「待つ」と言いながらも、裏腹の手練手管。数馬によって、施された、覚えたてのその感覚が、三の姫を嫌が応にも刺激する。・・・女美架の頭の中が真っ白になった。
アーギュから見れば、少し試せば、幼さを孕んでいながらも、既に、内在している、三の姫の女の本質が、どれ程のものか、見て取ることができた。唇を一度外し、再び、重ねる頃には、この子が、自分の想像以上に、大人なのだということが。
天賦の天女の質。腕の中のルースを、自在に磨きをかけ、輝かすのは簡単だろう。しかし、これは、お互いにとって、時間を掛けるのが最適であり、焦れるぐらいの方が、惹き合える。そんな事は、当に計算済みだ。あの噂の第二皇妃の末娘だ。三姉妹の中では、愛らしく、素直な性質は、こんなことにも、効果的に、発揮されているのかもしれない。計算以上に、惹き寄せられることに気づいた、アーギュは、更に女美架を捉えようとしていた。
「・・・正直、驚きました。最初、泣かれておられたので、嫌なのかと・・・」
「・・・」
「だめですよ。ご自分を責めては。僕には、正直な貴女が受け止められましたから」
「・・・」
「・・・これには、嘘はありませんから」
女美架は何も言えなかった。今を肯定も否定もできない。何か発してしまったら、全部が壊れてしまうような気がした。自らの立場、アーギュの立場、皇宮の家族や、自分を支えてくれている人達の気持ち・・・そして、数馬との大切なことまで、壊してしまうような気がしたのだ。それでも、次に、アーギュが繰り出す施しには、抗って見せる。
これ以上は、ダメ。しっかりして、女美架・・・。
「ああ、ダメです・・・」
「僕は、こうやって、可愛い貴女の腕を撫でているだけですよ。心配しないで、身体を預けてください」
思いとは裏腹に、それ以上、アーギュの施しに抵抗する間もなく、三の姫は、篭絡されていく。違うと解っていながら、錯覚が、感覚を奪い、塗り重ねられていく。目には濡烏の髪、別の男の腕の中で感じた匂いは、慣れ親しみ始めた、それと同じだった。三の姫の胎内の時計が狂い出す。
匂いと、髪の色の記憶・・・
『女美架はおかしくなってしまったのかも…』
勘違いをしているから・・・だから、自分は今、彼の腕の中で、酔い始めている。
このお方は、解ってる。大人だから、女美架なんて、どうにでもできる方法を知ってる・・・、狡くて、意地悪なやり方だけど、その甘さに抗えない。
アーギュは、巧妙に、女美架を刺激する。小さな身体を抱き竦めて、穏やかに、その腕をあやすように撫でているが、身体の接触は、その直接的で、能動的なアプローチだけとは限らない。女美架を背後から左腕で支え、捉えた右腕は、彼女の身体の鋭敏な所に触れている。撫でられているのは、腕だけではないようで・・・重ねられれば、結果を導ける。
「あ・・・ああ、ダメ・・・」
小さく、喘ぐように忍び音を漏らす唇を、捉えて、アーギュは、あやすように塞ぐ。逃げることを許されず、力が入ると、それは却って、応える形となって現れてしまった。
ああ、もう、ダメ、女美架は・・・
アーギュの計算通り、極簡単な接触にも関わらず、術中に嵌まった、三の姫は昂ぶり、極みに達してしまった。
見事な躾をされた、お姫様の価値は、更に、新しい男の手の中で、惹き上がったのだ。
貴女の彼氏は、とても好い、お仕事をしたのですね。感謝に付きません。ありがとうございます・・・君の役目は、彼女を幸せに導くものになりましたから、後は、私に任せてください。・・・それにしても、天賦の天女ですね。貴女は、あと少しで、僕の範疇に入ってこられるのですから。
「・・・」
女美架の媚態を顕わにしてしまったことに対する、羞恥を示す仕草に、アーギュは、また、底知れぬ価値を感じた。全てが、可愛らしすぎる・・・そもそもの質が、素直であり、その目覚めた女の感覚は鋭敏である。姫自身が気にし続ける『幼い』という見かけとは裏腹、このギャップにも、アーギュは刺激され、ますます、彼女を手に入れたくなる。
「しばらく、国での政務もあり、お会いできませんが、また、ご連絡致しますからね」
そう、忘れさせるつもりはない。私という男のことを、その身で、感覚で覚えておいてくださいね。
時計を見てください。もう時間がありませんよ。どうしますか?いいのですか?種明かししなくても、貴女が惹き上がった仕掛け、解りますよね?もう少し・・・。
もう騙し討ちではない、その施しに、三の姫は溺れていく。
「上手ですね。それは、大人のキスですよ。嬉しいです・・・」
もしも、数馬とのことがなかったら、何も知らない自分は、あまりのことに泣き出して、逃げ出していたかもしれない。三の姫は思った。『奥許し』の本来の役目と意味が判ったのだ。自分を取り巻く一国の姫という立場、事情、事実のことも頭に過りながら、アーギュの施しに溺れていく。先程とは違い、彼の手は衣服の中にあり、手のひらは、素肌を捉え始めた。先程以上の鋭い感覚ではあるが、波を打ち、リズムを刻むように身体に響く。苦しくて、甘くて、ダメだと思う気持が、却って、感覚を刺激する。
「大丈夫ですよ。声、我慢しないでください・・・愛していますよ」
初めてよりも、早くも、その極みの時が訪れる。
「ああっ、好き、好き・・・」
ついぞ、初めての恋人とのその時の振る舞いをしてしまった。女美架は、我が身のそれに気づき、戸惑う表情。涙が止まらない。
「嬉しいですよ・・・そのように思って頂けるのですね」
アーギュはしっかり、三の姫を抱き締めた。ダメ押しのように、深く口づけられる。なかなか、離れてくれない・・・、強いというよりも、身体の中にしっくり嵌め込まれるように抑え込まれているので、動くことができないでいる。
「はあ・・・タイムアップですね。とても、残念です」
「・・・」
彼の懐から、解放された瞬間、女美架の涙が溢れ出した。
「ハンカチ、ごめんなさい。お借りします」
「いいですよ」
「自分で拭きます」
悪いことをしてしまったかな・・・。すごい、混乱されているのだろうな。
「嫌いになりましたか?・・・こんなことをする男を」
「・・・わかりません」
「混乱させてしまいましたね。許してください・・・でも、これだけ、貴女を愛おしく思って、自分を抑えることができなくなってしまいました」
軽く抱き寄せられ、最初と同様の安堵の懐を示す。大丈夫ですよ。もう、何もしませんから。
狡い、狡い、全部、女美架が困ることしてる。
香水が偶然だったにしても、女美架が変になること、この人は知ってるんだ。
「大丈夫ですか?・・・この後、皆様の前に、また、出なければなりませんね」
数馬にだったら、今、思ってることを、全部、ぶつけて、言いあって、それから、仲直りしたりして、・・・そんな風にできるのに。
「本当に、申し訳ありませんでした。でも、解って頂きたいのですよ。愚かな私のことを。私は、昨日の夜、貴女を想って、眠ることができなかったのです。辛いことと捉えられたら、私としても苦しい・・・」
「大丈夫です。・・・でも、女美架はまだ、お返事もしていないのに・・・こんな」
「いいですよ。私を詰ってください。悪い男だと。それでも、いいのです。もしも、貴女に見限られたとしても、その時は、ここでの事を、良い思い出にしますから・・・」
立ち上がるアーギュをふと、女美架は見上げる。振り返って、見降ろして、彼は尋ねた。
「お嫌だったのではないですか?」
「・・・そんなこと・・・」
これは、誘導尋問だった。女美架は、応えかけて、ハッとする。
・・・いいのですよ。今は、その感じでいいのですよ。
驚くのも、無理はないことですからね。でもね、これは、ゆっくりと効く、お薬のようなものですから。解りますよ。心と身体の受け入れの時間がずれているだけです。私としても、ここで終わるのは、ものすごい、焦れてのことです。でも、それこそ、お互いの価値が上がるのですよ。惹き上げて、惹き上げて、そのまま、離れてしまうんですよ。わざとですから。そのことで、却って、繋がっていますからね。その先を求める身体に、心が追いついた時、貴女は、必ず、この私を求めることでしょうから・・・。
「ハンカチはお預けしますから。次、会う時にね」
何も無かったように、アーギュは振る舞う。携帯を弄ると、数分で、ジェイスと暁が、東屋にやってきた。
「そろそろ、お時間のようです、王子」
「お玄関に、皆様がお見送りにお出ましです」
「解りました。お待たせしていけませんね。さあ、参りましょうか。女美架様」
ここに来る前に、手を差し伸べてくれたのと同様に、優しい笑顔で、アーギュは女美架の前に跪く。女美架は少し俯くと、手を添えて、立ち上がった。暁が見ている。心配させてはいけない。だから、女美架、泣かないでいかないと。泣いたら、泣いたら、きっと、・・・
王子が、悪く思われてしまうかも・・・
そう思った瞬間、自分自身に、自省する。・・・多分、ダメだ、女美架、そうなんだ。
🌟🏰🌟
暁は、何気に、姫の変化に気づく。複雑な表情で、自らの感情を抑えているのが解った。それだけでも、何等かの動きがあったことを推測できた。女美架が何かを頑張って、堪えている。暁には、単純に、数馬とのことの葛藤が予測されていた。何かあった、とは思うまでに至らなかった。・・・大人になられていくのですね。姫様。そう、見守っている。
ジェイスは、銀縁の眼鏡のリムを指先で持ち上げた。完璧な尊敬する主人の、唯一の欠点というか、癖のようなものが発動されていることを見て取り、軽く溜息をつく。
またまた、このお方は・・・女性の瞳を濡らすようなことを・・・。
まあ、いいでしょう。今回は、寄り道ではなく、お妃選びということで、進められておられるのですから。社交界で馴らした恋の数々も、これでピリオドを打たれるとのことなのでしょうから・・・、目に余る一歩手前が、いつもお上手ですね。王子は。
🌟🏰🌟
玄関まで戻ると、皇帝が自ら、見送りに出ていた。以下、第二皇妃や、御相伴衆たちも、それに続いていた。
二人の様子を、それぞれが、それぞれの思惑で見つめている。
女美架には、それが針のように、突き刺さる感じがした。
普通にしなくちゃ。
まず、父の皇帝に、にっこりと微笑んだ。その姿は、一同を、安堵の表情にした。第二皇妃は、勿論のこと、殊の外、桐藤は頷きながら、一の姫は目を細めて、アーギュと女美架の二人の姿を見ていた。
柚葉は気づいた。あのアーギュが、あのシチュエイションで、何もしないわけはないのを知っていた。慈朗は、少しおとなしい感じではあるが、女美架の微笑んだ顔が見られて、安心していた。
「申し訳ないが、私どもは、ここで、失礼致します。アーギュ王子、また、どうぞ、ご来皇をお待ちしております。国王陛下、並びに王妃様に、よろしくお伝えください」
皇帝と、第二皇妃が、恭しく、頭を下げた。桐藤と一の姫も、それに習った。
「ありがとうございました。短いですが、とても実のある、愉しい滞在となりました。また、時間を見て、お伺いできたらと思います。・・・それと、よろしかったら、女美架様には、一度、ランサムにも、遊びに来て頂きたい、と思っております」
「まあ、そんなお約束を?では、近いうちに、是非、よろしくお願い致します」
母、第二皇妃の高い声に、女美架は、小首を傾げてみせた。
それを受けて、桐藤が指示を出した。
「良かったら、姫と、空港まで、お見送りを・・・柚葉、慈朗」
「わかりました。戻りの姫の護衛を兼ねて、務めさせて頂きます。いくぞ、慈朗」
「あ、はい」
「では、皇宮の専用のお車を一台、ご用意しますので」
運転士の渦が、丁重に頭を下げ、車の手配に向かった。
女美架は、ここで、初めて、数馬の不在に気づいた。
車に乗り込みながら、玄関の奥の方まで見ると、何かを荷物のようなものを抱えて、数馬が、こちらの方へ向かってきたのが見えた。
玄関口の奥に戻りかけた桐藤と、何か話している。車が発車した。
皇宮の皆が、王子に向かい、手を振っている。
その姿が見えなくなった瞬間に、三の姫は、王子に言った。
「ごめんなさい・・・王子、もう、泣いてもいいですか?」
「よく、頑張りましたね、大丈夫ですよ」
運転手はランサムの従者だった。ジェイスは助手席に座っている。
「いずれ、貴女の心配事は、私が全て、引き受けますから、今は、難しいかもしれませんが、大丈夫ですから」
アーギュは、女美架の手を握った。それは、先程まで、既に、自分を翻弄した男のものではなかった。温かい、安堵を与えてくれた。女美架の涙の意味と、その意識は、少しずつ、東屋の時から、スライドし始めていた。
ごめんなさい。・・・数馬。
女美架、私ね、一番心配になったのが、王子のことだった。泣いたら、困るのは、王子だと思ったの。怖かった。ダメなことになるの。でも、もうダメだと思う。女美架、違う所に行き始めてるのかも。だから、ごめんなさい。数馬、自分のお部屋へ戻るんだね。さっき見えたの、玄関で・・・あれは、部屋に来た時に、女美架の所に持ってきたのだものね。
本当に、ごめんなさい。・・・そして、ありがとう。
🔑🎨
「おめでたいことで、良かったですね。三の姫様も、これで、ランサムに、御輿入れですな」
「渦、僕たちが、ここで話すことは、誰にも言わないでね、はい、これ」
「はいはい、坊ちゃん。大丈夫、渦は、ここからは、耳がとても、遠くなりますよ」
柚葉は、ベテラン運転士の渦とは、仲が良い。通学の時に、渦の車に乗り合わせることが多い為、殊に、馴染みなのだ。慈朗も、この初老の運転士に、親しみを覚えている。柚葉は、渦に、少しだが、金子を握らせた。
「どう思った?三の姫」
「どうって?うーん、普通にお散歩して、僕たちとお庭遊びしたみたいに、お話をしてきたんじゃないの?」
「そうだね。『お話』だよねえ」
「えーーっ?!」
「そんなに、驚くかな?」
「だって、外だし、そんな」
「馬鹿だなあ。今度、許可取って、あそこ、行こうか?」
「あ、あああ、そういう場所なの?」
「そうだよ。普段は、一の姫専用だから」
「つまりは、桐藤と?ああ、そうか、外に出られるようになったから、そうだよね。一の姫様には、必要なのかもしれないね・・・ふーん・・・」
柚葉は、軽く、慈朗の肩に手を回した。
「普段は、庭師が整えてくれる以外は、禁域のようになっててね・・・」「それって・・・お妃様の、肝入り、っぽいよね」
「そうそう。解ってきたじゃん、慈朗。ごめん、渦、はい、これ」
柚葉は、また、渦に、金子の封筒を渡す。
「はいはい、坊ちゃん、合点だ」
「わあ、こんなの、ついてるの?」
スクリーンが、運転席と後部座席の間に降ろされた。
「いいだろう?これ」
「・・・、お見送り中だよ」
「いいの、王子と姫の車には、ランサム国の車が、前に、後ろに、横にいるから。俺たちは、帰りの姫様の護衛だよ」
「うーん」
「あのね、アーギュってさ、・・・」
「え?そうなの?・・・ダメじゃん、それじゃあ、姫が可哀想だよ」
「でも、多分ね。でも、ご乱行は、ここまでだと思う。さっきのさ、あのお方の感じ、なんか、違ったから。要するに、モテ男なだけで、女性を無碍にできないのだ、と言ってたけどね」
「言い訳っぽいね。それ。でも、柚葉に少し似てる。属性が違うけど」
「目移りしたのか?」
「違うよ・・・」
「どうやって、あのおチビさん、篭絡したんだろうなあ」
「やめてよ、柚葉、三の姫が、可哀想な言い方だし、王子にも失礼だよ」
柚葉は、ニヤニヤと、慈朗を見つめた。
「あったでしょう。ないわけないから」
「止めてー、数馬のこと、考えると、可哀想過ぎるから」
「まあね。・・・あの無邪気な笑顔は、もう見られないかもな」
「ねえ、そんなのなの?お姫様って」
「王子様だって、辛いぜ。好きでもない子を連れて、国に帰って、結婚させられるなんて・・・慈朗は優しいから、よく解っていてくれて、嬉しいよ・・・」
「わあ、もう、空港に着くから、柚葉・・・ダメだよぉ」
🦚🍓
空港に到着した。アーギュ王子は、王族専用機で帰国する。
「ここから、1時間半も飛べば、ランサムの領空です。つまりは、スメラギとランサムは、こんなに、近いのですよね。今度は、女美架様に、こちらに遊びに来て頂けたらと思います」
「はい、・・・そうですね」
「良かったです。そのように言って頂けて。その時は、柚葉と、絵のお上手な彼、」
「慈朗ですか?」
急に、自分の名前が出て、慈朗はまた驚いた様子で、姿勢を正した。
「あ、・・・はいっ・・・」
その様子に、アーギュ王子は、二人の従者に微笑みかけた。
「是非、遊びに来てください。礼拝堂や、美術館を、ご案内致しますよ」
「実現できればいいですね」
「そのように思います」
あ・・・姫は思い出した。柚葉の言った、同じ言い回しを、昨日、王子の口から聞いた。この言い回しは、ちょっと、含みがあるのだと。何となく、女美架は察した。
「ではね、また、ご連絡しますから、女美架様」
「はい、王子、お気をつけて」
女美架は、簡略だが、スメラギ式の挨拶をした。柚葉と慈朗は、それに準じた。
手を振り、王子はタラップの階段を上っていった。
そして、アーギュ王子を乗せた飛行機は、ランサムの方角の空に消えていった。
~次回 第七十話「姫の告白」につづく~
みとぎやのメンバーシップ特典 第六十九話「東屋での秘蜜~お見送り②」
~隣国の王子編 御相伴衆~Escorts 第一章
お読み頂きまして、ありがとうございます。
ちょっと、解りにくかったかもしれませんが、アーギュ王子は、女美架姫に何か・・・しましたね・・・。
次回は、その空港からの帰りの話となります。
お楽しみになさってくださいね。
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