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御相伴衆~Escorts 第一章 第八十七話特別指令3

「君の思いを遂げさせてあげるよ・・・永依可エイカ

 クローゼットの扉を開けて、部屋に入るような形になった。もっと、奇襲っぽくなるのかと、緊張していたが。

「え?・・・ああ、陸軍兵の方・・・?・・・どうして、ここに?」
「面識があったのか、なんだ・・・だってさ、良かったな、永依可」
「あ、いえ」

 桐藤キリト様、クスクスと笑いながら、柚葉ユズハ殿の方へ、俺の背を押す。

「どういうことですか?」
「許可する。永依可」

★⚔🔑

 途端に、柚葉殿の表情が変わった、怯むように、後退った。それを見た、桐藤様は、すかさず、柚葉殿の後ろに回り、羽交い締めにした。

「や、やめてください。桐藤、放してください」
「ほら、今だ、今の内に・・・」

 柚葉殿は、普段、聞いたことのない、高い声で抗って見せた。

 あ・・・

 同時に、一瞬、挑戦的な眼差しで、俺を睨むようにしたが、目を逸らした。

 その後、より大声で、抗ってみせた。普段の穏やかで、鷹揚な佇まいからは考えられないような、弱い者の振る舞いを見せた。みっともない、と言っていいぐらいの感じの・・・

「ふふふ、あははは・・・」

 桐藤様は、その嗜虐性を発揮しているが・・・

「お願いです。やめてください・・・」

 俺は、気づいた。

 逃げようと抗う柚葉殿を尻目に、勝ち誇った表情の桐藤様・・・

 加担し乍らも、なんというのか、いわゆる、ハイスクールの虐めを思い出した。

「あははは・・・じゃあ、まあ、・・・後は、頼むよ。永依可」

 そうだった。桐藤様は、ある程度、対象をさいなむと飽きが来て、後始末は、こちらの仕事となる。

 桐藤様が、満足気に部屋を出て行くと同時に、俺は手を緩めた。
 ・・・というか、俺もフリをしていたのだが・・・。
 
 柚葉殿は、涙目になっていた顔を、両手で塞いでいた。制服のYシャツは、ボタンが弾け飛び、スラックスが脱げかけている。と言うのは、俺がやったのだが・・・。

「・・・はぁ」

 涙を拭いながら、彼はクスリと笑った。要は、ここまでが芝居だったのだ。

「君も、大変だね・・・でも、随分、優しかったじゃない?」
「・・・」
「解ってたよねえ?・・・本当に、君が優しい♂だってこと、解ったよ。少尉」

 彼は、俺を階級で呼んだ。
   そして、その後・・・俺への呼び方が改まった。

「それとも、お兄様、って、呼ぼうか?・・・ふふふ」
「・・・いや、その」
「同族だって、解ったんでしょ?」

 やっぱり・・・、一瞬見せた、挑戦的な表情を、また見ることになった。

「うふふ・・・どっちにする?さっきみたいな僕がいい?それとも・・・」

★🔑

 墜ちた・・・のは、俺の方だった。

 あれほど、俺の頭の中では、あのキツい桐藤様とのことで、いっぱいだったのに・・・。

 素国の美しい、青い堕天使は、以降、俺の全てを支配することになる。

 結局、振り回されたのは、俺だけだった。
 
 桐藤様は、柚葉の嗜好を知らなかったのだ。俺と同じの・・・。

「飴」と「鞭」なら、俺は「飴」に弱い・・・可愛いあの子♂の、全てに嵌まった。

 そして、そのことは、それ意外にも、皇宮すめらみやの中で過ごす、俺の自尊心を支えた。
 女官が憧れ、後の第二皇女様付きの彼と、内密の間柄なのだから。

 そして―――

「へえ、・・・それで?」

 たかが、子どもの虐めに加担したが最後、スメラギ陸軍尉官の俺は、生涯、素国へ引き渡す、陸軍の情報を搾り取られることとなった。

 俺の特別指令は、このような形で続くこととなった。


~「特別指令」終 本編へつづく


御相伴衆~Escorts 第一章 第八十七話 特別指令3

 お読み頂きまして、ありがとうございます。
 これにて「特別指令」が終わりました。
 かなりの小さなお話でしたが、いかがでしたでしょうか?

 閉塞感のある皇宮の奥では、こんな感じで、密かに陰謀が巡らされているようです。

 次回から「暗躍の行方」という章に入ります。
 タイトルから見ても・・・そんな感じが続くのでしょうか?
 今後の『御相伴衆』の本編も、お楽しみになさってください😊✨

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