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御相伴衆~Escorts 第一章 第九十話 特別編「隣国の王女~白百合を摘みに②」
その日、午後一番で、二の姫美加璃姫が、ランサムから、一時帰国した。空港には、柚葉と慈朗が、出迎えに行った。
その間に、桐藤は一の姫に、今回の、素国の紫杏姫の来皇の件を話すと、一の姫の気遣いにより、その場に、三の姫が呼ばれ、それを知ることとなった。
数馬は、一先ず、奥殿に戻り、維羅に、報告がてら、一連の話をすることとなった。
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【スメラギ皇宮常設空港】
「ああん、柚葉、ずっと、会いたかったあ・・・」
「・・・お、お帰りなさいませ。しかし、姫、また、そのような、大きな声で、衆目もございます・・・あ、慈朗も、出迎えに来ているのですよ・・・」
タラップを駆け下りてくるなり、美加璃は、柚葉に飛びつき、抱きついた。慈朗は、明後日の方向を向いて、見てみぬ振りをした。
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「慈朗、どうか、怒らないでくれ・・・多分、そのような展開になるし、滞在中、美加璃姫は、俺にずっと、張りついて・・・」
「うん、仕方ないよ。だって、柚葉、二の姫付きだもの。僕が、皇妃様付きなのと同じで、お役目だから・・・」
「・・・悲しそうな目をしてるよ」
「うん、夜もずっと、姫様のものになっちゃうの、解ってるから・・・覚悟してるよ。僕は、今回、そうなったら、三の姫の前に出られない、数馬のフォローに回るから、大丈夫だよ」
行きの車の中で、柚葉は、慈朗と、対策を考えていた。乗るや否や、渦が後部座席との境のシャッターを下ろしたのは、言うまでもなかった。
「しばらく、無理だね・・・これが終わったら、好い事、考えてるんだ。いい子に待っていてほしいんだけど、慈朗」
「うん、大丈夫だよ。会えないわけじゃないし・・・でも」
「こういうのは、しばらく、無理だよね、今の内に・・・」
柚葉は、慈朗を横抱きにして、口づける。
・・・頭が痺れちゃう、長いやつだ・・・。あああ、離れたら、もう、二の姫の所に行っちゃうんだね、柚葉は。少しの我慢だね、お互いに。
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「『お絵かき君』も、来てくれて、ありがと。相変わらず、可愛いお人形さんみたいだねえ。今度、ドレス貸してあげるから、遊ぼうね」
「馬鹿なことを、慈朗は、お人形ではありませんよ」
小首をかしげて、慈朗は頷く。・・・『お絵かき君』って僕のことか。
「ううん、よく言われるから、慣れてますから。・・・あはは」
「ほらあ、ねえ、悪い気、してないよねえ、慈朗も」
「まぁ、進んで、したいとは、思いませんけど・・・美加璃姫様も、お元気そうで、何よりです」
柚葉は、慈朗に目配せして、本題を切り出した。
「実は、ご帰国されて、すぐ、このようなお話で恐縮ですが、我が素国から、親戚の姫が来皇することになりまして」
「へえ?何しに来るの?偵察かしら?」
「美加璃姫様・・・」
「ああ、ごめんねえ、柚葉の国の方なのにねえ、で、なんて、仰る方なの?」
「お名前は、紫杏姫と仰る方です。16歳で、三の姫女美架姫様と、同じ齢になられますね」
「会ったことあったかな?社交界の席で・・・?アーギュ王子に、媚び売ってる姫は、各国に、山程いるからね。確か、その内の一人なんじゃないかしらね?」
慈朗が、納得したように呟く。
「・・・モテモテなんだ、やっぱり、アーギュ王子って」
「・・・聞きしに勝る、といった感じですね。やっぱり、その噂は、本当ですか?」
「とすると・・・女美架狙いかもしれないわね。だとしたら、大変だわ、ちょっと、帰って、対策会議よ。だとしたら、桐藤も黙ってないでしょう?」
「えー、そういうことではないと思われますが・・・?」
「そういう風には、聞いていないけど、皇子がいるわけでもなく、お姫様が、ただ、遊びに来るなんて、・・・ちょっと、気にはなりますよね・・・」
「女美架を護らなきゃ。偵察と何か、嫌がらせをしに来るんだわ、きっと」
美加璃姫の推測で、この三人の中では、紫杏姫の来皇目的が、ひょっとしたら、それなのかもしれないという疑念が、生まれ始める。確かに、他に、目的が思いつかないのであるが・・・。
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【一の姫柳羅の私室にて】
桐藤が、三の姫女美架を連れて、一の姫の部屋で、話をしている。
「三の姫様、忙しい所、申し訳ございません、お呼び出ししてしまって」
「大丈夫。お姉様、桐藤、お部屋に呼ばれるなんて、驚きました。何か、私、粗相でもしたのかな・・・?王子とのことで・・・?」
「アーギュ王子の件は、とても、お悦びでいらっしゃるとのご報告が入ってますから、大丈夫よ。女美架は、そのまま、進んでいらしてね。心配しないで」
「そうですよ。ご安心ください。・・・実は、別件で、素国から、紫杏姫様という方が、ご来皇することになりまして」
「素国のお姫様が、遊びに来られるのね、柚葉の親戚なのかな?」
ここにおられる姫君たちは、穏やかな方で・・・。
桐藤は、この先を想像しつつ、説明を始めた。
「ちょっと、詳しいことは解りかねますが、恐らく、お妃様からの正式なお話ですので、皇素親交の一貫で、ということなのかと思われます。こちらに、皇子がおられれば、お輿入れのお話ともなりましょうが、そのようなことでも、ございませんのでね」
「その紫杏姫様が、女美架と同じ16歳になられる方とのことで、来られた時には、お話したりとか、お迎えができるのでは、というお話だそうですね」
「これまで、他国のお姫様というお友達はいなかったから・・・、そうね。藍国のアーギュ王子にも、来て頂いたのだから、今度は、素国の紫杏姫様とも、仲良くしなくちゃね。うん、何か、楽しいことを考えて・・・」
「ああ、そうでした。数馬が芸を見せてくれるかもしれないと・・・」
「桐藤・・・」
「あ・・・申し訳ございません、三の姫様」
桐藤が、数馬の名前を出したので、一の姫が桐藤を止めた。
三の姫は、ちょっと、困った顔をしたが、すぐに笑顔になり、答えた。
「あ、・・・うん、大丈夫。数馬、そうなんだ。今、奥殿にいる、って聞いたんだけど」
「そのようです。配置が変わってしまったので、私達も今朝、久しぶりに、お妃様に、この件で呼び出されて、会いました」
「元気だった?数馬は・・・」
「はい、数馬は変わりなく、いつも通りの元気溌剌です。今回は、芸人として、紫杏様に喜んで頂く芸を見せる役に徹するとのことです」
「・・・うん、そうなのね。数馬が、元気なのが、解って良かった・・・ありがとう」
一の姫は、妹姫を気遣った。
「ごめんなさいね。先日、アーギュ王子が、西のお城に来られたばかりで、疲れていませんか?」
「うん、でも、楽しいことだから、女美架も考えて、紫杏姫様に喜んで頂けるようにしたいと思うから・・・」
「ありがたき幸せです。三の姫様」
このお二人は、とても穏やかで、お話もよく分かって頂けて・・・
桐藤は、今回ばかりは、とても、ありがたく思った。
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「維羅、紫杏姫って、どんな姫様なのか、知ってる?」
「うふふ、来たわね。皇妃様から、お達しがあったのね。まだ、『奥許し』が済んでない素国の方ね」
「・・・維羅ぁ、なんで、そのピンポイントかなあ?」
「ねえ、解んないよ。数馬、素国からも、仕事が来るかもしれないよ」
維羅は、また、そういう言い方するんだよな・・・。
「もう、それ、冗談でも、言わないでほしいんだけど」
「何?」
「ご指南役、って言いたいんだろう?」
「あー、そういうこと、考えてたの?何も言ってないのに・・・、もう、数馬ったら。・・・確かに、可愛い子だよ。美人タイプ。目鼻立ちのはっきりした。細身で小さい子よ。女美架姫と身長は変わらないけど、もっと、細い感じ。ああ、数馬は、ぷっくり部位の多い、女美架姫の方が、タイプだと思うけど」
「維羅ぁ、糞意地悪いぞ・・・」
ネタがあれば、必ず、弄るんだよなぁ、本当に・・・
「あら、ご指南役って、言ったのは、数馬だよん」
「うるせえ・・っつうか、俺のタイプは、もう、維羅なんだから」
「あはは、嬉しい♡・・・ほっぺ、ぷっくりだよ、かーずま。もう一つ、情報、性格スペック、二の姫様に酷似ね」
「あ、そんなこと言ってたな、柚葉が・・・あああ、それって、やっぱり、かなり、ヤバそうだね」
「そうねえ。まあ、二の姫様よりも幼いから、男関係がどうの、っていうのよりも、前に出るタイプ?」
「どうなるかなあ・・・、トラブルになりそうな気がする・・・」
維羅は、当然、紫杏姫の目的は知っていた。更に、起り得る心配な点までも・・・。ついでに、これは、公式でないことも。
その実、維羅にも、柚葉こと紫颯の母、紫音から、同様なお尋ねと依頼が来てはいたのだが・・・
「紫杏姫がそちらへ参りますので、よろしくお願い致します」と。
正直、政治的な意味はない、と、維羅は踏んでいた。ただ、面白いことにはなりそうだとは思っていた。
「数馬は、協力するの?」
「芸を見せようかなと、お招きの記念に」
「じゃあ、その時だけ出れば、巻き込まれないんじゃない?」
「えー?・・・巻き込まれるとか、そんな感じのことなの?これって?」
「二の姫様も帰ってくるんだよ、バチバチになりそう、なんかね」
「それは、大変だ。流石の桐藤と柚葉でも、抑えられないんじゃないかな・・・」
維羅はまた、数馬の顔を覗き込んだ。
「それより、大丈夫、数馬? 三の姫様の前に、出られる?普通の顔して・・・」
「あ・・・ああ、それなんだよなあ・・・、苦しいとこだけど・・・」
「まあ、あまり、あちらに行かないようにしてるわけだから、数馬なら、芸事見せるので充分なお役目だと思うよ。もしも、何かあって、更に、要請があった時で、いいんじゃないのかな?こっちの仕事もあるんだしね」
「皆には悪いけど、そうしようかな」
「奥殿から、ストップがかかった、って言えば、いいからね」
「解ったよ、でも、どんな芸がいいかぐらいは、慈朗を通じてでも、相談させてもらうよ」
「それで、いいんじゃない?うん」
何とか、面目は果たせそうだと、数馬は思った。
数日のことだろうし・・・。
数馬は、できることだけをしよう、と考えていた。
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そして、その夜、慈朗の部屋になっている広間に、三人の皇女と、御相伴衆が、集合することになった。数馬は、やはり、伝言を、女官の月に頼んで、仕事があるから行けない、とした。数馬を覗く6名で、この隣国の王女を迎える会を、考えることとなった。
「アーギュ王子の会に引き続き、今度は、素国の紫杏姫様のご来皇につき、お招きの会を開こうと考えておりますが・・・。お姫様方には、お忙しい所、また、二の姫様は、ご帰国したばかりで、お疲れの所、お集まり頂き、申し訳ございません。ただ、今回は、お客様が、素国のお姫様ということで、何をして差し上げるのが好いか、男の私達では、解らずにおりまして、是非、御知恵を拝借したいと思いまして」
桐藤が、深々と頭を下げた。続いて、柚葉と慈朗が、同様の所作をする。
すると、一の姫が、姫の筆頭として、話を始めた。
「お話は伺いました。しかしながら、この時期に、紫杏姫様と言う方、ご面識もないし、何をされに来られるのでしょうね?ただ、遊びに来られると言いましても、あまりにも、唐突かとも思いますが・・・」
柚葉は、慌てて、隣の二の姫に囁いた。
「二の姫様、先程のお話は、まだ、されてはなりませんよ」
「どうして?柚葉?」
その様子に、三の姫が気づいた。
「どうなさったの?二のお姉様、柚葉?」
「大丈夫ですよ。女美架姫様」
「・・・やっぱり、今回の会は、数馬は、お手伝いに来られないのかしら?」
桐藤が、すかさず、事務的に、三の姫に説明した。
「いや、奥殿で忙しいと、連絡を貰いました。申し訳ないと。ただ、紫杏姫様の為に、芸事を見せてもいい、とは言っているので、当日は、参加すると思われますから」
「そうなんだ・・・、わかりました」
女美架は、慈朗の顔を伺い見た。
「大丈夫、その通りだから、女美架姫様」
「うん、わかってる・・・」
やり取りを見ていて、狐につままれたような表情で、二の姫が、柚葉に聞いた。
「数馬は、奥殿なの?」
「ああ、それは、皇妃様から・・・」
「柚葉、説明してなかったのか?」
「申し訳ありません」
「いいよ、柚葉、桐藤。二のお姉様。数馬は、私のご指南役を完了したので、奥殿のお務めに変わったのですって。ご出世みたいです」
一同は、三の姫の発言に、胸を撫で下ろした。
三の姫は、なんて、強くなったのだろうと、一の姫は、思いつつも、二の姫の傍若無人さは、相変わらずだと感じつつ・・・。
二の姫は、彼女なりに、妹姫を思いやっているのだが・・・。
「あ、そう、・・・そういうこと、なんだ・・・そうだ、アーギュ王子様と・・・おめでとう。女美架、そうだったわね」
「・・・うん、ありがとう。二のお姉様」
「うふふふ・・・おとなしくなっちゃったと思ったら、そうだったんだもんね。これで、女美架は、ランサム王妃だよね」
「まだ、正式には、お話が進んでおりませんから、そのようなご発言は・・・」
桐藤が、二の姫を窘めた。しかし、二の姫は続けてしまう。
「おめでたいことなのに?数馬は、気を遣って、隠れてるんでしょ?ああ、そうだわ。その素国の紫杏姫の事、思い出したわ、アーギュ王子から、あの子・・・」
「姫、二の姫、お待ちください、ちょっと、こちらへ・・・申し訳ございませんが、いくらか、下がらせて頂きます。よろしくお願い致します」
焦った柚葉は、半ば、二の姫を抱きかかえるようにして、慌てて、広間を退室していった。
「あら、まあ・・・」
「え?」
「柚葉ったら・・・」
「どうしました?一の姫様」
一の姫は、頬を赤らめて、口元を手で隠しながら言った。
「あんな、柚葉、初めて見ましたわ・・・だって」
「一の御姉様?」
「・・・いつもは、美加璃から、お誘いして、お部屋に下がるのに・・・まあ♡ うふふ・・・」
「・・・はあ、どうやら、そのようですね。いいでしょう。久しぶりの邂逅ですから・・・」
「ごめんなさいね。女美架も近々、ランサムに行かれれば、いくらか、アーギュ王子と、ご一緒できますのに」
慈朗はポカンとして、この一連の様子を見ていた。
あああ、なんか、多分、一の姫柳羅姫様だけが、二の姫様と柚葉の、本当の関係を知らないんだ。そして、僕と柚葉のことも・・・。
なんか、そんな、勘違いをなさるなんて・・・三の姫の奥許しの少し前に、桐藤とのお許しが出たのだから、・・・などと、慈朗は、なんとなく、生々しいものを感じてしまった。
でも、可愛らしい勘違いでもあるんだよな・・・と思い直しもした。
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一方、こちらは、慌てて部屋から回廊に出た、柚葉と二の姫。
「ああん、嬉しいけど、お部屋に下がるなら、それがいいけど、・・・違うよね?私に喋らせないようにしたのよね?」
「そうです。あそこで、数馬との件も、ちょっとでしたが、それ以上に、アーギュ王子と紫杏姫がどうの、と。そういう、デリケートな情報を、女美架様の耳に入れてはいけませんから・・・なので、その情報は、僕に教えてください。先に。後、知ってる事を、全部・・・」
「まあ、そうよね。アーギュ王子と女美架のお出逢いの日の様子、私は見てないから、解らないけど、・・・上手く、進んでるんでしょ?西のお城であの二人・・・なんでしょ?」
「そのように伺っています。ですから、上手く進める為にも、その・・・」
「知りたい?」
「はい、我が親戚ではありますが、姫の情報までは、私も、スメラギにおりながら、掴むこともできませんし、そのアーギュ王子のスペックがありますしね・・・」
「存じ上げておりますわ・・・なんで、私にお声が掛からなかったか、最近、解ったのだけど、親友の柚葉を思いやってのことなのよね、うふふ」
はあ?・・・ご自分のことなど、どうでもいい。こんな時に。
本当に、自分勝手だな。二の姫様は。
そう、紫杏姫、従妹もこんな感じなんだ。
そっくりなんだ。妹姫の女美架様の事は、二の次なのか?
「成程・・・それは、存じ上げませんでした。で、その紫杏姫様とアーギュ王子は、まさか、その本当に・・・」
「お部屋行こう、大事な話でしょ?」
「・・・話して頂けるんですね?そしたら」
「うん・・・いいよ♡」
「わかりました」
一の姫の言う通りの流れになってしまった柚葉。早くも、身を切ることになってしまった。
慈朗、俺は、また、熱を出そうかな・・・そしたら、看病にきてくれ・・・俺は、眠り王子になるから、天使のキスで起こしに来てくれ・・・後は頼んだ・・・。
隣国の王女~白百合を摘みに③へつづく
御相伴衆~Escorts 第一章 第九十話
特別編「隣国の王女~白百合を摘みに②」
お読み頂きまして、ありがとうございます。
今月は、このお話までになります。
三人の姫が揃うというのも、このお話の中では、なかなか、珍しいことのようです。
流石に、数馬は、三の姫女美架の前には出られないようで・・・。
それぞれの関係性と、今の人間関係の中で、紫杏姫を迎えることになりますが、どうなっていくのやら・・・?
次回は、いよいよ、その、素国の王女、紫杏姫が、スメラギにやってきます。お楽しみになさってくださいね。
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