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御相伴衆~Escorts 第一章 第五十八話 更なる『御指南』へ~数馬の思案 数馬と三の姫16 (数馬視点)

この話は・・・。

 数馬と三の姫の『奥許し』の翌日、三の姫は微熱を出し、御殿医の維羅イラの所に診察に行っている間の話。妹の発熱に心配した姉の一の姫も同行し、ある思いがあり、自らの診察も申し出ていた。お休みの日ということもあり、久方ぶりに、故あって、四人が、数馬と慈朗シロウの部屋に集まることなった。

🏹🍓👑

 数馬は、皇帝陛下と第二皇妃と三の姫と、その朝、朝食を共にした。呼ばれて行ったが、久方にお会いした、皇帝陛下が、とても、老けた印象を受けたのが、少し、心配になってはいた。しかし、そんな父皇帝と、無邪気に語らう三の姫を見て、お元気そうなのだ、とホッとした。その矢先、数馬は、第二皇妃より、三の姫の『ご指南』を更に、引き上げるようにとの命を受ける。

 朝食時は、両親の手前、元気に振る舞った三の姫、部屋に戻るが、午前中はまだ、微熱が下がらず、アカツキに連れられ、午後から御殿医の診察を受けることになり、数馬は久しぶりに、自由な時間を持つことになった。

「それにしても、・・・わかるけど、姫に仕向けるのは、ちょっとな・・・」

 自分が施すなら、いくらでもできるのだろうけど、初めての三の姫に、色々とさせるのは、どうなのだろうと、思案する。こんなこと、誰にも相談できることじゃない・・・けど、雑談程度に、話しやすいのは・・・当然のことながら、慈朗なのだろう。数馬の足は、元々の私室である、慈朗のいる部屋に向かう。

🏹🎨🔑

「あれえ、施錠だ・・・あ、ルナ・・・」
「あの、お察し頂ければと・・・今、柚葉様がいらっしゃってて・・・」
「ああ、そうか、・・・(って、月も知ってるのか?)」

ガチャッ

「・・・数馬、声聞こえた。何か用事?今、柚葉、お風呂なんだ」

 慈朗がドアを開けて、顔を出した。月は、ホッとした顔で、頭を下げて、その場を立ち去った。どうやら、二人の事を、知っているようだ。

「いいよ、入って」
「でもさ、柚葉、いるんだろ?」
「なんか、今日、数馬が来たってことは、何かあるかな、とか思って」
「うん・・・まあ・・・」

 慈朗はバスローブ姿だった。まあ、俺がいない分、柚葉が来てるんだろうなあということは、察しがついたが。

「うん、柚葉とも、上手く行けばいいな、って話してたとこ。さっき、月が、一の姫様と三の姫様が、御殿医の診察を行ったって、ランチの時、教えてくれたから、・・・時間があるんでしょ?締め出されて、可哀想だから、来ていいよ」
「あはは、そうなんだよね。行くとこ、なかったりもしてた」
「いいよ」
「慈朗・・・誰と喋ってんの?ああ、数馬じゃん・・・お疲れ」
「わあ、ダメだよ、柚葉、そんな恰好で」
「何々?・・・いつも、そんなこと言わないじゃん」

 柚葉が、風呂から戻ってきた。おい、バスタオルは、どうした?!

「すまん。邪魔してる」
「まさに」
「隠せよ」
「なんで?」

 慌てて、慈朗が、バスタオルを持って、走ってきた。

「ああ、もう、柚葉、お上品を信じている、女性たちを裏切らないで。バスタオル腰巻、はい」
「サンキュ、・・・んで、数馬は、暇してるんだあ、できなくて」
「なんだよ、それ、柚葉、マジ、品がないぞ。お前の専売特許は、どこに行った?」

 柚葉が、俺の顔をまじまじ見て、ニヤニヤした。また、何か言われそう💦

「ふふん、虐め過ぎたな、熱出させて、悪い奴・・・」
「違うよ、疲れてたんだよ、三の姫、きっと」
「ただ、暇で来たわけじゃないよね?数馬」
「うん、まあ、実は・・・」

 なんか、いちいち、引っかかる柚葉なんだけど・・・。まぁ、いいか。
 俺は、二人に、第二皇妃からのオーダーについて、話をした。

「なあんだ、そんなこと?」
「普通にすれば、いいんじゃないの?」

 二人は、同時に喋り出した。

「・・・うーん、まあ、そうなのかもしれないけど、そんなに、俺だって、寝所のこと、色々は知らないし・・・」
「これだろ?それとこれ」
「うん、そういうことだよね」
「まあ、これは、俺らも同じだから」
「・・・まあ、そうだけど・・・」

 なんか、二人で、それとか、これとか、言うけど・・・💦

「向きを作れば、やるって、女はむしろ」

 柚葉・・・、なんとなく、女性のこととなると、そういう言い方、あんまり、良くないと思うが・・・、

「でも、そのことそのものを知らないとすると、ショックがないかな?」
「あー、うーん、そうかもしれないけど・・・」
「だから、やるって、そういう生き物だから、あいつら」
「柚葉、それは酷いよ、そんな言い方しちゃダメだよ」
「あいつらの肩を持つということは、俺を敵に回したことになるよ、慈朗」
「もお、大袈裟だなあ、柚葉は」

 あああ、なんか、また、絡み始めそうだ。
 俺は、天井を見上げた。
 その時、慈朗が、何かを思いついたように言った。

「ねえ、大抜擢なんだけど、桐藤キリト、呼んだら?」
「は・・・、なんでまた?」
「だってさ、柚葉や僕よりも、少なくとも、立場が近いじゃん。柚葉も本当はそうだけど、二の姫様は今いらっしゃらないし、まあ、ね」
「来るかな?」

 どうだろうか?・・・桐藤が、こんな、ぶっちゃけた話に加わるかな?

「桐藤も、今は、手が空いてるよね、一の姫様も診察中だし」
「呼ぶ?いいよ、俺が呼ぼうか?で、来る間に、俺と慈朗は、俺の部屋に移動っと」
「えーっ?」
「何?」
「数馬が、相談しに来てるのに、行っちゃうの?柚葉」
「・・・数馬大好き慈朗だな」
「違うよお、困ってるから来たのに、出ていくのは違うと思ったから」

 慈朗、優しいんだよなあ・・・
 確かに、今は、居てくれた方が助かるんだけど・・・💦

 すると、柚葉が、携帯をかけ始めた。

「まあ、いっか、・・・桐藤、今、時間ありますか?まあ、数馬と慈朗の部屋に、数馬が君に、相談したいことがあるそうで・・・。あ、あれ、持って来られるかな?うん、俺たちじゃなくて、数馬にいいと思って、あとその、レクチャー的なの、そう、よろしく・・・来るって。・・・なんか、察してたみたい。心配してたようなね」
「ほらあ、桐藤、察してたんだよー、良いとこあるじゃないか。数馬の気持ち、わかってるんだ」

 柚葉が、携帯電話をかけると、7、8分すると、桐藤が、本を抱えて、部屋にやって来た。

 ・・・っていうか、桐藤と柚葉、俺と三の姫様のこと気にしてくれてたんだな。

「俺だ。入るぞ」

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 ・・・バスタオル腰巻の裸の柚葉に、バスローブの慈朗、しっかり、黒い服を着こんだ桐藤、そして、普段着の俺・・・なんなんだろう。オフ感満載の「御相伴衆」が集まった。

「悪いですね。桐藤」
「いや、なんか、すごい恰好だな、柚葉、お前は・・・まあ、いい・・・たまには話したいと思っていた所だ。大切な話も、そろそろしたい所だし・・・これ、柚葉の言っていたものだが、勘違いでなければ・・・」
「解ると思うけど、俺たちには不要だから、要るのは、数馬ね」
「あ、ああ、なんか、桐藤、忙しいのにすまない」
「忙しさは、多分、お前と同じだ、数馬」

 今、さりげなく、すごいこと言ったぞ。大真面目で。桐藤。
 また、柚葉が笑いを堪えてるんだけど・・・。

「へえ、イラスト集かな、これ、東国の本?絵が古い感じ、ああ、これ、ちょっと、見せ・・・、こんなスゴ・・・、デフォルメしすぎ・・・、ちょっと、僕は好きじゃない・・・げえ、でかく、描きすぎ・・・」

 慈朗が、比較的大きな、東国の浮世絵の画集を見ているようだが・・・

「クスクス、でも、リアルだな・・・漫画だろ、これ?ああ、あるよ、禿かむろ、これ、俺たちのことだぜ、向こうの・・・あはは、ギャグだな、これ・・・、美形に描くべきだ。特に、このページは大事だからな・・・」
「うーん、だけど、柚葉には似合わない。ランサムの博物館の写真集の方がいい」
「え?そう、だよな・・・嬉しいよお、慈朗」
「だって、そうだもんね」

 あああ、抱き着くなよー。なんなんだ。
 あれ?・・・桐藤、全然、動じないんだけど・・・
 ここにある資料より、なんか、すごい図だぞ。

 すると、やっぱり、我関せずで、いつもの真面目さで、桐藤が話し始めた。

「ああ、東国のやつは、『春画』と呼ばれている。いわゆる、浮世絵だ。お前、見たことないか?数馬」
「いやあ、ない。存在は知ってるけど、本でもないや。これ、古いやつだと思う。今から、何百年も前のものだし」
「もう一つのやつは、北方民族の言語のものだが、ランサム語で翻訳されている。いわずもがなの性の指南書だ。交接の方法のパターンが、図で出ている」
「どれ?ああ、数馬、これが使えるんじゃないの?」
「うーん、すごいな、この辺になると、アクロバティックで、何やってんだか」
「いずれにしても、滑稽だな。こういうのは」

「人の目はどうでもいい。二人だけのことだから」

 来たあ。桐藤。俺も、同じ意見だが・・・。

 こういうものを見ても、普段のまつりごとの書類とか見るのと同じ冷静さで見てる。

 なんか、想像できない。桐藤が、あの慎ましやかな一の姫に、どう接するのか?まあ、・・・それこそ、人のことだから、あれなんだけど。

 「こっち、専用ページあるぞ。ちょっと、見る」
 
 スッと、本に手を出した柚葉。
 まあ、なんというか、素国って、フランクというか、そんな感じなのかな、とか・・・うーん。

「おい、柚葉、数馬じゃないのか?それが、必要なのは?」
「そうだよー、柚葉、後で借りればいいじゃないか」
「・・・すまない、数馬、ごめん、ついつい・・・」

 ニヤニヤしてるなあ、また、柚葉は・・・まあ、いいんだけど。

「いやあ、その、なんていうか、そういうことなんだけど、こういうことでもなくて・・・」
「うん、わかった。まずは、気持ちを聞いてほしいんだよね。数馬は」
「いつもながら、慈朗は、察しがいいから、助かるんだけど」

 俺たち四人は、ソファ回りで、それらの本を囲んで、見ながら、話をしている。不思議な空間だ。人払いされてるから、アカツキたちが、お茶を持ってくるとかもなく。

「そういえば、桐藤、一の姫様、お加減悪いのか?」
「定期検診の予定も近いので、まあ、婦人科も併せてという話らしい。三の姫様が受けると聞いたら、慌てて、ご一緒したいとのことだ」
「女の子って、そんなに検査しないとダメなの?」
「うーん、三の姫様の方は、熱が出たからね。多分、すぐだから、婦人科は込みみたいなこと、暁が言ってた」
すぐだから・・・」
「あああ、いちいち、引っかからないでほしいんだけど、柚葉」
「その話をしにきたのは、お前だろ?」
「いや、だから、その」
「柚葉、お口チャックだよ。数馬に話させてあげてよ」

 桐藤が、俺の顔を見ている。

「つまらない、個人的な話をするから、柚葉と慈朗は聞く気がないなら、出ていってもいいぞ」

「えーっ、そんなこと・・・」
「聞かれたくないなら」

「まあ、こんなこと、人に話したことがないので、よく解らないのだが、数馬が話しやすくなるなら、今の、一の姫様の話をしようと思う」
「わあ・・・聞く、聞くよ。おとなしくするから、桐藤、話してよ」
「・・・」

 柚葉が、笑いを堪えている。ちょっと、今日は、柚葉がこれ以上、桐藤を揶揄からかうようなことを言ったり、失礼な振る舞いをしたら、俺は怒ることにしようと決めた。

 慈朗は、優しいんだな。でも、少し、興味本位なのも解った。まあ、いいか。桐藤がいいなら、後で、皆に、緘口かんこう令を、俺が敷く。まあ、別に皆、そんな、下らないことはしないだろうけど。

「今日、一の姫様はあることを期待して、診察を受けに行っている」
「・・・はあん、なる、ね」
「・・・王族には、ピンと来る話だろうから」

 訳知り顔で頷く柚葉、慈朗は逆のリアクションをした。

「何?ご病気の回復、でしょ?違うの?」

 あ、そうか・・・。一の姫様・・・。

 俺にも察しがついた。

「え?・・・それって、桐藤?つまりは・・・」
「一の姫様は、いち早く、子どもを望んでいるんだ」
「・・・え、もう・・・そうなんだ」
「まあ、『奥許し』の段階で、それは、想定に入っているので、そうなれば、皇帝陛下も、第二皇妃もお喜びになる。皇子なら、尚のことだ」

 緩んでいた感じの柚葉の顔つきが、ガラリと変わった。

「そうすれば、桐藤の次期皇帝の立場も、盤石になる、と言う」
「まあ、そういうことなんだが・・・、俺は、その実、ピンと来てなかった。これは、姫というか、女性独特の感性なのだと思った。一の姫様は、俺が姫付きになった時から、このことを考えていたそうなんだ」
「わーーっ、一の姫様・・・♡」
「えっと・・・それって、桐藤の為に、ってこと?」
「決まってるじゃん。愛してる人の一番の希望を、自分が叶えられるんだよ。すごい、一の姫様、あの感じで、この感じって、すごい、素敵なお姫様だ。・・・見る目が変わったあ。尊敬する。ますます、気高い、尊いお方だ・・・」

 慈朗の瞳が潤んでいる。なんか、やっぱり、見た目だけじゃなくて、女の子っぽいのかな、慈朗は。それに、なんか、最近、慈朗は、桐藤の肩を持つようになったんだよな。それが、きっと、桐藤が優しくなるのに、追い風になってる感じがする・・・。

「・・・恥ずかしい話をしてしまったが、慈朗に、そのような評価をしてもらえるのは、嬉しい。一の姫様は、スメラギの良き質を持つ、正統な姫である。その容色だけでなく、心栄えとご性格、そして・・・」
「そっか、そんなに、恋愛に熱くなる奴だと、思わなかったな。お前が」
「・・・何の事だ?そんな、軽い考え方のことではない・・・」

 桐藤が赤くなった。ちょっと、面白い感じだな。
 俺と話しているだけだったら、多分、ここまでならないだろうな。
 まあ、付き合いが長いから、こんな所を、柚葉に初めて見せたという点で、恥ずかしくなったのかもしれないな。それと、柚葉の言い方がね。本当に煽るから・・・。

「褒める、褒める。スメラギを褒めるのと同じぐらい、一の姫様を褒める♡」
「いや・・・一の姫様は、俺にとって、スメラギそのものだから・・・」
「・・・♡」

 今度は、慈朗が真っ赤になって、顔を隠した。なんか、面白いぞ。
 皆、どうした?・・・って、俺が、一番冷静か?
 ・・・っつうか、桐藤、本当に、一の姫様が大切なんだな。

「いや、お堅いお前だから、なんかな、」
「俺は、とても、桐藤らしいと思う」
「・・・」
「すごい、理想的だと思う。スメラギの次期皇帝ご夫妻が、仲が良いのは何よりだ」

 桐藤が驚く顔で、俺を見ている。

「数馬の王道論、出たな」
「うん、僕もそう思う。とても、素敵なことだと思う。一の姫様も何か、一生懸命な感じ、とても、素敵なお姫様だよ。桐藤、幸せにしてあげて」

 桐藤は、少し、照れくさそうに答えた。

「それは勿論だが・・・なんだか、大袈裟な感じに取られてしまったな、・・・俺も、昔は馬鹿なことをしたと思う。今は、一の姫様に相応しい、皇帝を任される人間になりたいと思っている・・・ああ、もう、俺のことは終わりだ。数馬、何を、気にしてる?」
「いやあ、桐藤の話、聞いてたら、俺の気掛かりなんて、馬鹿みたいな話だ」
「俺としては、心情なら、今の話。具体的なことなら、この資料と、対策をしてきたのだが」


「行動の素早さと具体性が、桐藤のすごいとこだな」
「静観し、人に委ねる、という選択も一つだろう?・・・柚葉」
「・・・ふっ、それ、嫌味か?」
「いや、お前は、いつも余裕があって、羨ましい。人がお前の為に動いている所がある」
「さあね、どうだかなあ?だとしたら、思うようにはなってないのかも・・・」

 あれ・・・、柚葉と桐藤、牽制しあってるみたい。
 お互いを、そんな風に見てたっていうことかな。

「ねえ、数馬、桐藤みたいに話せば、いいんじゃないの?」
「いやあ、もう、終わってるかも、桐藤が来る前に」
「要は、気持ちの問題だろ?気持ちがあれば、相手の望むことに応えたくなる筈だから」
「うん」
「その同意、とても嬉しいよ、慈朗」
「いい話の流れだから、やめてよ、柚葉」

 桐藤は、皆の様子を見まわしてから、更に話を続けた。

「前に話したことでわかると思うが・・・、第二皇妃のオーダーが、俺や柚葉には、敢えて出す必要のないオーダーだ、ということだろうと思う。お前にはきついことだろうとは思うが・・・。幼い三の姫様が、その時に、困らないように、できる限り、寝所でのお相手の要求に応えられるように、ということだろう。ご本人が、行った先で、いきなり、何も知らずに、驚いて、このことを怖いことだと捉えたら、お世継ぎどころの話じゃなくなってしまう。一生を不幸にする可能性がある」

 柚葉が、納得したように頷いた。

「・・・うーん、そこをいい加減にして、泣いてる親族の姫を見たことはあるよ。そうなると、悲惨だ。男というものを受け入れらなくなって、結局は、離縁された。それからは、気の病で臥せったままなんだ・・・」
「えーっ、そんな、可哀想なことが・・・」
「だから『ご指南役』が必要なんだ。求められるのは、お世継ぎを産むことができるかで、処女性じゃない。三の姫様の幸せの為に、数馬、お前の役目がある」

 桐藤、よくわかったよ。こないだの話と併せて。

「だからこそ、ひょっとしたら、今の三の姫様と数馬は、形とかじゃなくて、お互いに良い経験の記憶を遺すことじゃないかと思うんだけど。その中ですれば、自然にそうなれると思うけどな」

 あ、柚葉、いいこと言った。今日、何か、最低だったから、取り返したな。

「うん、なんか、大丈夫そうな気がするよ。無理しないで、時間をかけたら、いいと思うし・・・」
「解った・・・、皆、ありがとう」

トントン

 ドアのノックの音に、柚葉が慌てて、バスローブを羽織った。

「失礼致します。姫様たち、戻って来られましたよ・・・あ・・・、一の姫様・・・」

 暁の言葉に、桐藤がすかさず、部屋を出た。
 なんか、本当に、無駄がないな。完璧な動きなんだよな・・・。

 三の姫様は?ああ、いた。
 ニッコリして、傍に来たので、俺も廊下に出る。

「数馬、ただいま。お熱下がったよ、なんでもなかったって」
「ああ、良かった。風邪とか引いたのではなかったんだね」
「うん・・・でも、お姉様がね、暁・・・」
「それは、桐藤様にお任せしましょう。大丈夫です」

⚔📚・🔑🎨・🏹🍓

 部屋の中から、柚葉と慈朗が、廊下の様子を見ている。
 一の姫は泣いていた。桐藤の胸に縋っている。桐藤は、優しく、言い諭している様子だ。

 柚葉と慈朗は、その様子を見ていた。

「妊娠してなかったのは、自分の病気の所為だ、って、責めてるみたいだね」
「そんな・・・それって、タイミングだから、すぐできるか、解んないのに、それで泣くなんて、お姫様って、そんな厳しいの?」
「まあ、この場合は違うよ。一の姫様の真面目なご性格と、やはり、ご自身のご病気もあっての心配なんだろうって。周りは、まだ、そんなに求めていない。婚約も前なのにな、潔癖過ぎるんだよ。逆に」
「そっくりなんだね。桐藤と一の姫様って」
「使命感がすごくて・・・まぁ、俺は、さっき嫌味言われた通りだから」
「え?」
「まあ、いいや・・・」

「皮肉なものね・・・逆だったら、良かったのにね・・・」

 御殿医の維羅イラは、二人の姫の診察の結果を眺めていた。

「まあ、まだ、確定とも言えないのだけれどもね・・・」

                            ~つづく~


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       第五十八話 更なる「御指南」へ~数馬の思案
              数馬と三の姫編16 御相伴衆Escorts 第一章

 前回のお話で、三の姫の診察の間に、数馬が、私室に戻って、他の御相伴衆のメンバーと、どんな話をしていたか、という部分の物語です。

 この後に、元の三の姫との件に戻ります。
 次回で数馬と三の姫の件が終了し、話は、全体的な流れに入っていきます。お楽しみになさってください。

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