御相伴衆~Escorts 第一章 第八十三話 暗澹たる日々⑬「謎めいた魅惑の情報ツウ」
なんだよ。維羅・・・、
・・・あの夜はさ、それはさ、そうだったから、嬉しかったんだけどさ。
昨日だよ。
昨日の晩こそ、一緒にいてほしかったのにさ。
なんでかな。
「ちょっと、疲れたので、寝とくね。いつ、急患があるか、判らないしね。お休み、数馬」
キスしてくれただけだった。気まぐれなんだ、維羅は。
今日もまだ、こっちに来ないな。
あれから、包帯も湿布も外れて、違和感があるけど、皇宮のこの奥殿の回廊なら、歩いていいことになったからね。
あ、ここって、確か、診察室の一つだよな。維羅、いるのかな?
「あ・・・」
あれって、・・・女美架・・・じゃなくて、三の姫様だ。
維羅が送り出してる。
・・・昨晩は、王子と・・・だったんだよな。
あの綺麗なライトの部屋の、あのベッドで王子と・・・。
まあ、もういいんだ。
俺だって、もう、維羅と好い感じなんだからな。
・・・そういうわけじゃないけど、なんか、想像するのも、ぼんやりで、面倒臭くなってるから、丁度いいや。
一応、診察するのかな?
それとも、具合が悪かったのかな、また、熱出したとか。
「愉しいデートでよかったですね。姫」
「女美架、身体、おかしくなかったですか?」
「うん、大丈夫みたいよ。熱は出てないですか?」
「はい、大丈夫です」
「・・・わかりました。もし、数日中に出たら、教えてくださいね。ああ、じゃなくても、体調がおかしかったら、いつでもね」
「はい、わかりました」
「女美架姫様、可愛いだけじゃなくて、綺麗になられましたね。それとね」
維羅は、三の姫に耳打ちする。
「sexyになられたわ」
びっくりした顔つきの三の姫。
「わあ、維羅、発音いい」
「ああ、そこ?一応、皇宮における、ランサム語のネイティブといわれているのよ。隠されたね」
「ああ、じゃあ、今度、教えて。ランサム語」
「えー、王子がいらっしゃるのに?」
「維羅も、そう言うの?やっぱり、もう、皆に言われた。柚葉にも、桐藤にも・・・」
「当たり前じゃないですか・・・クスクス」
「うーん・・・」
「そういう、お口を尖らせたりするのは、変わらないのですねえ・・・」「だめかな?」
「全然だめ・・・じゃないですよ、むしろ、王子は好きじゃないですか?そんな姫のこと」
「・・・んー、子どもっぽいからなあ。維羅は、王子と知り合いなの?」
「いいえ。全く。私が一方的に。テレビに出てるのを見て、知ってるぐらいの他国民ですよ」
「・・・そうだよね、普通は・・・」
🏹
なんか、喋ってんな。長話、好きだからな、女って。見送り長いな。
今、あそこに行ったら、ダメだよな。
きっと、今日、姫を診察したことも、知らばっくれるんだろうな。
あ、振り向いた。
「数馬、何してんのー?」
「散歩」
あ、走ってきた。姫はもう、本殿に渡って、見えなくなってるから、大丈夫なんだな。
「見てたね?」
「うん、まあ」
「仕事だからね、これも」
「うん、解ってるから」
「ああ、姫がね、あの部屋のライト、皇帝陛下とご覧になった以来だったから、懐かしかったって、言ってたよ」
「ふーん、ライトの交換してやって、良かったじゃん・・・」
「何?昨夜、想像して、悶々としてたの?眠れなかった?」
「・・・昨日の夜は、一緒にいてくれると思ってたから」
「そうなのお、まあ、寂しかったんだ、可哀想に、数馬くん」
「また、揶揄うから、維羅は」
「弄られに来てるのは、君の方だ、と思うんだけど」
「・・・今夜、居てよ」
「うーん、やることの流れ次第かな・・・鋭意、努力します」
「なんだよ、それ」
「維羅先生はね、優秀だから、沢山のお仕事、任されてるの。まあ、数馬付きっていうのも、一つの極秘任務だけどね」
「はいはい、わかった」
「ちょっと、待って、・・・・ん・・っ、これで、今は我慢」
「・・・って、こんなとこで、誰かに見られたら、どうすんだよ」
「見てても、第二皇妃様ぐらいかな・・・」
「それって」
「皇妃様のご命令だから、大丈夫だよ」
「なんかなあ・・・」
「皇妃様がいい?」
「あ・・・?・・・なんで?」
「いいんだよ、意向、伝えとこうか?御悦びになると思いますが」
「違うよ」
「問題発言」
「維羅―」
「だって、数馬、面白いんだもん」
一頻り、俺を弄ると、また、駆けて行っちゃった。足速いよな。維羅。二の姫様に負けてないんじゃないかな?
⁂
✿🏹
「はい、ただいま」
「あー、維羅・・・うーん」
「夜ご飯食べた?」
「もう、いいよ、病人扱いのお膳は」
維羅が、大荷物で帰ってきた。大袋を抱えて。
あれ、なんだっけ?
よく、東国の、パチンコ屋の景品抱えてくる、あのイメージだ。
「まあ、そうねえ。ほら、御菓子、持ってきたよ。バナナも」
「俺、エレメンタル(小学生)じゃないんだぜ、馬鹿にしてるな」
「いらないなら、いいのよ。私のお夜食になるだけだから。えっと、ちょっと待ってね。・・・メールのチェックして、・・・はいはい。大丈夫みたいね。これで、今日のお仕事、お終い」
「あのさ」
「何?」
「お風呂、まだ、なんだけど」
「なんで?」
「えー」
「だって、もう、治ったから、いつでも、入れるじゃん。もう介助、要らないでしょ・・・ああ、これ、私も、貰ってもいい?」
「何?」
「甘い揚げ物みたいの」
「かりんとう、じゃん、これ」
「ああ、そういうの?東国では?」
「あああ、暁だね、これ」
暁・・・、涙目になるよ。なんか、一人奥殿に追いやられたきり、同胞の面会もなく、暁ぐらいだよ。俺のこと、認知しててくれてるの。
「ああ、数馬、彼女に、随分前に、リクエストしてたみたいね。これ」
「わあ、覚えててくれたんだ。暁。なんて、優しいんだ、誰かと違って」
「ふーん、誰かって?・・・暁がいいの?ああ、でも、暁は、ダメかもなあ・・・」
「えーっ、ちょっと、待って、暁、いるんだ、ああ、いても、おかしくないよね?美人だし、料理が上手くて、働き者で、あの女美架のお守りが上手いぐらいだから・・・」
「・・・三の姫様ね、数馬」
「あ、はい、ごめんなさい・・・。って、まじ、暁?」
ここへ来て、暁に、浮いた話とか?
ん、まあ、アリだよな。だって、暁だもんね。
「うーん、多分、暁はね、まだ、気づいてないみたいよ」
「へえ?何?どういうこと?」
「さあ・・・」
「暁のこと、好きな男がいるんだ?!」
「ふふふ・・・」
「何、維羅、すげえ、情報ツウじゃん」
「まあねえ、お楽しみに。動向を見守るって感じね」
「暁、気づいてないのかな?そいつ、告白しないかな?どんなやつなの?」
「想像を絶すると思うよ」
「えー、思いつかない・・・あ、やっぱり、給仕係の・・・」
「あははは、数馬、そこにしかいかないね、発想狭っ。それ、あたしの時と同じじゃんか」
「そうかあ、でも、皇宮のこと、俺、奥殿のことも、今回、初めてわかったし、まだ、俺の知らない、あちこちに、職員の人、いるからな」
「まあ、お楽しみにしてね、はい、食べる?その、なんだっけ?かりん・・・」
「かりんとう」
「どうぞ」
「頂きます。懐かしい、うん、美味いっ♡」
「故郷の味?」
「工場があって、そこで、販売してるやつだと、こんな揚げたてなのが、試食であるんだよ。興業の時に、店出してもらって、お客に売ったこともあって」
「へえ、そんなこともするんだ。うん、甘さがいいね。クッキーとかと、また違って」
「いいでしょ?東国の緑茶と合うよ」
「・・・と思いまして、ジャーン」
維羅が、水筒を取り出した。なんか、何でも持ってくるなあ。
「ああ、気が利く、暁、流石だ・・・」
「・・・ちょっと、お茶は、私、なんだけど?」
「ああ、維羅様、ありがとうございます・・・うう、美味い・・・」
「懐かしくて、泪、出るよねえ、東国出身者の数馬君としては・・・」
暁がさ、かりんとうとか、っていうのもね。まあ、解る気もして。多分、今日、姫と一緒に、あの西のお城から帰ってきて、からのこれだよね。
暁・・・全く、誰なんだ?本当に、いい女だ・・・じゃなくて、いい人だから、無碍にしたら、俺が許さない。
「なんか、鼻息荒く、考え事してるように、見えるんだけど」
「いやあ、暁は、すごい気が利くっていうかさ、だから、本当にいい人と結ばれてほしい、と思っただけなんだよね」
「ふーん・・・ねぇえ、お風呂入ろっか?」
「あ、え・・・ああ、うん」
「何、さっき、甘えてた癖に」
「うん、入るよ・・・うん♡」
✿🏹
「ここのベッドね。パイプベッドから、普通のに、変えて貰おうかな、と思ってて。本格的に、ここ、君の部屋にしたら、どうかな?はい」
「あ、俺の荷物、全部っぽくない?これ」
「戻れると思ってたんだねえ・・・可哀想に」
「まじかー、本殿には、戻れない、ってことかあ」
この部屋、狭いんだけど、東国の一般の家なら、充分な広さでさ。病室だから、コンパクトなんだ、とは、思ってたんだけどね。嫌いじゃないんだ。この狭さ。
「ということで、数馬君。君のお仕事、一時的に、維羅先生の助手、ということになりました。嬉しい?四六時中、維羅先生とご一緒で?」
「へえ、そんな感じなんだ。俺、でも、医療行為はできないでしょ?」
「というか、こないだみたいな備品交換とか、ちょっとした下働きでいいからさ。君、皇語の読み書きも、完璧になったみたいだしね。二桁の掛け算も暗唱できるようになってるでしょ?」
「その辺りか・・・まあ、はい、わかりました。うん、まあ、また、全然、違うとこに行かされるよりいい。・・・まじ、嬉しい。維羅の仕事だったら、手伝いたいし」
「可愛いこと言うじゃん」
「うん、・・・純粋に、嬉しい・・・」
「でもねえ、ひょっとすると、今までの感じの、皇妃様のお相手とか、あああ、後は、高官接待が入るかもしれないね」
「高官って、素国の?」
「そお。数馬だけだよね、四人の中で、経験ないの」
「うん・・・あああ、ダメなやつじゃん、それ。柚葉は、必須だよね?」
「まあ、そうなるかな・・・」
「ああ、あのさ、あれ、男同士の?」
「・・・ないの?君は」
「なくはない・・・ないけど、やだ」
「それはそう、皆、そうね」
「そうじゃない奴も、たまにいるらしいけど・・・」
「柚葉ね」
「・・・?!・・・知ってんの?」
「まあね。一応、御殿医だからね。その辺りは、微妙に、身体のことも関係するからね。まあ、高官接待の意味としては、ある程度、経験と素質がないとお役に出られないのは、解ってるからね」
「はあ・・・そっかあ・・・そうだな、四人とも、嗜好はとにかくとして、経験ありか・・・」
・・・そうか。まあ、そうだよな・・・。
「まあね、なんとなく、判ったと思うけど。維羅様の所にいれば、大概の情報が集まってくるから、数馬を信頼して頼むけど、私の下で働くからには、守秘義務をよろしくね」
「オッケー。それは大丈夫だ。俺、拷問されても、口割らないから」
「自信あるの?」
「ある」
「ふーん、そう。まあ、一応、維羅先生の助手っていうのも、極秘任務ね」
「そうなんだね」
「ああ、そう、プライベートも含めてね。慈朗とかにも言ったら、ダメだから」
「解った。万が一、会うようなことがあっても、言わないから」
「よし、では、本日付けで、数馬君には、維羅先生の助手を命じます」
「はい、わかりました」
そういうと、ニコリとして、維羅は、俺の頭をクシャクシャと撫でた。
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それにしても・・・
維羅って、色々、凄すぎる。スペック多くて。医者で、運転手で、機械いじり得意で、足早くて、あと、やっぱり、大人なんだよなぁ・・・色々と、上手い、んだと思う。
・・・うーん。そうだ、俺ってラッキーなんだ、恵まれてるんだ。なんか、馬鹿みたいだけど、そう思っとくことにする。
ついつい、甘えてしまう、んだよなあ。慈朗のお妃様に対する気持に近いのかもしれない。
でも、なんか、見えてない部分があることが、少し、解ってきた気がする。色んな意味で、上手いこと、人を動かせる感じがするしなぁ。人が良くて、色んな人と繋がっていて、情報ツウで、きっと、皆からも慕われているから、そうなのかもしれない。・・・でも、なんか、後ろ半分が見えない感じ・・・、ちょっと、謎めいてるんだ、維羅って。結局、どこの国の人だかも、判らないしな。だって、四大大国の言葉、全部、ヒアリングは勿論、できるんだもんね。皇語、藍語、素語は、ネイティブに近いみたいだね。素語が上手いっていうのも、本人が自慢していたからね。やっぱり、スメラギ出身なんだろうな。東国語は、一番苦手かな。でも、ヒアリングはできるって。
「今度、数馬、内緒のことは、東国語で言ってよ『かりんとう』とか『たこ焼き』とかね」
なんか、それって、俺の国、やっぱり、属国扱いで、馬鹿にされてるかも。
~暗澹たる日々⑭に続く
みとぎやのメンバーシップ特典 第八十三話 暗澹たる日々⑬
「謎めいた魅惑の情報ツウ」 御相伴衆~Escorts 第一章
一方の、その翌朝の数馬くんの様子からでしたが・・・。
数馬が、とても可愛いです。
維羅も、そんな数馬が、可愛いのだと思います。
次回は、ちょっと、おまけの回になります。
柚葉が出てきます。
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