御相伴衆~Escorts 第一章 第四十話 桐藤礼賛②「彼女を庇うマント」
確か、1年の時だったか。あの本に書いてあるようなことがあった。劇の方はソフトになって、象徴的に描かれていたから、最初、気づかなかったけれども。
クラスの女子が、他校の男子に絡まれていたことがあって、柚葉と助けたことがある。かなり、酷い状態で、あと少し間に合わなかったら、彼女は、凌辱されていたかもしれなかった。最近は、俺は、一の姫様のことで、学校に行っても、週に一回ぐらいだから、彼女がどうしてるか、とか、・・・というか、彼女も、俺たちと接触するだけで、その時の嫌なことを思い出してしまうだろうことで、柚葉と示し合わせ、あまり、話さないようにしていた。その時の事は、勿論、内密のまま、ここまで来ている。柚葉も勿論、話さないでいてくれているようだ。
要は、皇華第二高校の奴らだった。つまりは、シギノ派の末端の軍族の不良たちだった。同様な手口で、女子が、車で連れ去られて、すんでの所で逃げ出した、という未遂事件が繰り返されていた頃で、警察も、犯人探しに躍起になっていた所だった。物騒なので、三の姫様には、ジュニアを休んで頂いていた記憶がある。あの事件の頃は、二の姫様はランサム滞在中だったので、当時は、俺と柚葉の二人で、通学していた。
学校の帰り、車で道を通りかかった時に、柚葉が、うちの学校の女子の制服の上着と、カバンが落ちているのに気づいた。ただ事じゃないと、すぐ、渦に車を停めてもらい、急いで、降りてみたら、泣き叫ぶ声がした。二人で、声の方へ行くと、三人の第二の制服の奴らが、女子を抑えて、携帯で写真を撮っている所だった。みれば、素足がばたついていたので、これはまずいと思い、急ぎ、柚葉と二人で、引き離しにかかった。まずは、俺が殴りかかり、柚葉がそれに続いた。二人を急ぎ、伸した後、柚葉は彼女に自分の上着をかけて、庇った。俺は、最後の一人を追い詰めた。
「携帯を、こちらに渡せ」
その最後の一人を殴りつけると、携帯を落としたので、その場で、靴で踏みつぶした。柚葉も倒れている二人から、携帯を奪い取り、同様にし、残骸を回収した。
桐藤「警察に連絡するのと、こちらの決裁を受けるのと、どっちがいいでしょうかね?」
学生1「・・・どういう意味だ?」
柚葉「上層部にご報告しましょうか・・・、はい、無様な君たちの顔、撮りましたから」
桐藤「ああ、同時に、お身内にも送られたらいいでしょうね」
柚葉「警察なら、君たちの処分だけで済みそうですが・・・写真をとった媒体は、これだけですか?ああ、カバンの中にも、余罪がありそうですね」
桐藤「念の為、それも潰して、回収だ」
俺は、他の携帯や、記録機能のある、一切の機器を取り出して、二つに折り、足で踏みつぶした。そして、着ていたマントを脱いで、柚葉に投げ渡した。
「柚葉、これで、彼女を頼む・・・これらは証拠として、回収しますから」
あの時、俺は、柚葉に、自分のマントを投げて渡した。
「これを纏ってください、お怪我は?大丈夫ですか?」
学生1「おい、こいつら、まさか・・・」
学生2「ああ、家には言わないでください・・・親に知られたら・・・」
桐藤「大丈夫、ご心配に及びませんよ。ご連絡するまでもありません。明日には、君たちの家はなくなってしまいますから」
柚葉「ああ、もう遅いです。恐らく、軍から、ご自宅に、連絡が行っていると思いますよ」
桐藤「この層には、外道の住む場所はございませんが故」
学生3「それだけは、許してくださいっ・・・」
俺は、主犯格と思われる一人の腹を蹴った。すると、察して、渦が連絡を入れてくれていたようで、亥虞流派の尉官たちがやってきた。
「あとは頼む」
「はい、わかりました。桐藤様」
「これ、証拠です。中身の確認はできないようになっていますが、動かぬ証拠ですから」
「大丈夫ですか?車に乗ってください。皇立病院へ参りましょう」
彼女は、震えながら、慌てて、周囲の衣服を、取り纏め始めた。
「お嫌でなかったら、お預かりします。この桐藤のマントなら、全身隠れますから」
「・・・ありがとう・・・ございます。助かりました。でも、・・・」
あまり、見ないようにしてはいたが、首筋に跡が見えた。怒りが込み上げてきた。
「最重罰を、と亥虞流殿に、お伝えください」
「わかりました」
「これは、第二皇妃様のご決定です」
男1「・・・こいつら、皇宮の『御相伴衆』か・・・」
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それから、その輩に、どのような罰が下されたかは、知りようもなかったが、地域を脅かす事件は、以来、なくなった。この手の女性を狙った犯罪は、以降、起こっていないという。警察から、表彰などと言われたが、俺も柚葉もこれ以上、話を大きくしないでほしいという主訴で、お断りした。というか、警察というのは、この地域では温い存在で、以降、軍による、セキュリティ強化を、俺は、亥虞流元帥に提案した。
帰り道、柚葉が切り出した。
「お手柄高校生、とか、笑えますね」
「自分たちの怠慢を棚に上げて、犯罪の抑止もできずに、もはや、要らぬ組織だな」
「・・・彼女、だいぶ、ショックだったみたいで・・・」
「考えただけで、虫唾の走る奴らだ。最低な」
「生まれて初めて、人を殴りましたよ、本気で」
「鍛錬しておいてよかったな、柚葉。無駄なことはないということだ」
「あの時、救急で入れて貰ったら、丁度、皇立病院に、維羅がカンファレンスで来ていたんで、彼女に診てもらうように頼みました」
「そうだな。彼女なら、色々と安心だ。複数の専門科を診れる医者だからな」
「身体の方は、多少の擦り傷のようなことで済んだけど、精神的に、かなり、ダメージがあったようで、しばらく、維羅のカウンセリングに、皇立に通うそうです」
「ったく、馬鹿な輩よね。彼女、女優志願だってことで、写真撮って脅して、その上に、レイプしようとしてたみたい。死んだ方がましね。ああいう奴らは、薬殺が一番だわ。じわじわと、苦しむタイプのね、キナは確実だけど、そっちじゃないやつがいいわね・・・」
「時々、発言が暴走する所があるが、今回ばかりは、俺も維羅に同意だ」
「怒らせたら、最後ですが、優秀な医師なので。維羅に任せれば、安心ですから」
「そうだな」
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つまりは、主人公のヒロインが、あの時の彼女で、数馬の演るのが、俺とか柚葉ってことなのかもしれないが。・・・あの時のことが、創作物として、昇華できる所まで、彼女の心は回復したと見た。
本当に、そうならば、よいのだが・・・。
~桐藤礼賛③につづく~
みとぎやのメンバーシップ特典 第四十話 桐藤礼賛②
「彼女を庇うマント」御相伴衆Escorts 第一章
お読み頂きまして、ありがとうございます。
珍しく、桐藤と柚葉の二人のパートです。約二年前の回想のようですね。
「御相伴衆」という役割が、対外的には、こんな風に発動していたこともあったんですね。二人とも、軍での訓練も受けていたようで、腕は立つということでしたね。ここに数馬がいたら、より強いユニットになっているかもしれませんが、数馬は、この頃はまだ、旅芸人で、スメラギに漂着していませんでした。
彼ら皇帝一族と、その御付、そして、軍族の家の子の学校は、上から二番目の第二層にあります。そもそも、軍族の住む地域ですね。この頃、スメラギ軍は、陸軍中心のイグル派と、空海軍中心のシギノ派というように、派閥が分かれていました。勢力の強い派閥のイグル派の子どもが、皇華高校に行き、反対派のシギノ派の子どもは、皇華第二高校に行くことになっていました。特に、施設などの待遇の差はありませんが、やはり、皇華高校の方が格上という認識となっていました。
ちなみに、この国では、上から第三層に住む者たちまでが、教育が施され、第四層の工業地帯、穀倉地帯、また、第五層のスラムと呼ばれる貧民街には、学校はありませんでした。慈朗は、スラムの出身ですが、皇帝一族の御付(といえば、体がいいですが・・・)になれたので、この度、教育を受けられることになりました。ラッキーなのか、アンラッキーなのか?
下層に暮らす人の様子は、こちらで解ります。
慈朗のお爺ちゃんのお話です。
スラムの灯は4話からなるお話です。よかったら、このマガジンから読んでください。慈朗の生まれが解ります。
次回、文化祭での出し物の話が続きます。数馬や慈朗、また、三の姫女美架も登場予定です。お楽しみになさってくださいね。
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