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2023.12.30 「わたしを離さないで」の装丁:DALL-E3でカセットテープを生成してみた

これは、AIによる画像生成で遊んでいたときに気づいたことを記したブログです。私の日常の一幕も綴っています。


カズオイシグロさんの小説「わたしを離さないで」小説の表紙。本の内容は、臓器提供やクローン、三角関係や友情、アイデンティティなどをテーマにしたお話。ここはざっくりと。

約10年前に読み始めたが、内容の複雑さに挫折した。それ以来、年末の本の整理で、何度も読もうとするものの、結局は閉じてしまう。それが私にとって年末ルーティン。

しかし、「わたしを離さないで」この表紙をデザインした方はどなたなんだろう。この装丁は芸術だ。カセットテープのモチーフが、小説のメッセージを強烈に伝えているよう。まっさらなカセットテープ。
10年間、売ることもせず手元に置いてきたのは、この美しい装丁のおかげかもしれない。この素材を作ってみたくなったので、DALL-E3で生成してみた。思い立ったが吉日。この手軽感もAI画像生成の魅力。

■AI画像生成でカセットテープを生成してみた。


1.「クリアなカセットテープの水彩画」と「クリアなカセットテープ」の生成

■クリアなカセットテープの水彩画

picture_pc_929b2e711ad2cc59819417971dc5e854クリアなカセットテープの水彩画
極めて白に近い
消えそうな

水彩画スタイルでは、優しくぼんやりとした透明感を表現。

■クリアなカセットテープ

クリアなカセットテープ
極めて白に近く、消えそうな水彩画

おお!画像が斜め向きになった。理由について検証してみた。

2.芸術と現実のコンテキストの理解


プロンプトでGPTに詳細なイメージを伝えれば、強力なプロンプトとなる。また最初に記述する内容や文脈も重要になってくる。

カセットテープの水彩画を生成する時に

●クリアなカセットケースの水彩画
●クリアなカセットケース

プロンプトの最初の一文を、2パターンで生成してみると

「クリアなカセットケースの水彩画」

は正面の水彩画として生成された。

平面の紙に描かれた水彩画

「クリアなカセットケース」

は斜めに、よりリアルに生成されている。

現実の物なので、立体感が強調される

3.GPTによる立体的な表現

1番目の結果。表現は水彩画。これは芸術的なスタイルや特徴が重要視され、GPTはそれを理解し、生成する。

2番目の結果。これは実際の物体に対するものとGPTが理解している。「斜めの角度で」などと指定していないにもかかわらず、物体の立体感やリアルな特徴が重要視されている。

「クリアなカセットケース」の画像が斜め向きに生成されたのは、この原則を反映している。

このように、異なるコンテキストに基づいて、AIは理解する。

4.詳細なプロンプトの重要性


このように短い文章からでも、AIは文脈やコンテキストを包括的に理解し、それに基づいて簡単に、芸術的なものを創造することができる。

しかし、逆に言えば、意図するスタイルや内容を詳細に提供しなければ、いつまで経っても望む結果を得ることは難しいと。生成したいイメージが頭の中で明確であれば、このような基本的なルールを無視することはできない。

詳細な説明が提供されるほど、AIはユーザーの要望に応える能力が高まる。サービスごとに結果に差はあるものの、どのAI画像生成ツールも基本的に、ユーザーが与えた単語や修飾語をその文脈に基づいて正しく理解している。

■芸術と現実のプロンプト例

1.芸術的な表現のためのプロンプト:

  • 「クリアなカセットケースを水彩画のスタイルで描いてください。画像は正面の角度で描かれ、ケースの透明感と中に収められたカセットテープの概略が感じられます。明るい色彩と大胆なブラシストロークを使用し、光の反射や影を印象的に表現してください。(GPTによる生成プロンプト)

詳細に伝えると輪郭もクッキリした

2.実物をリアルに表現するためのプロンプト:

  • 現代的なデザインの透明なカセットケースを写真リアリズムのスタイルで描いてください。画像は斜めの角度から撮影されており、ケースの透明感と中に収められたカセットテープの細部がはっきりと見えます。光の反射や影もリアルに表現され、物体の質感と立体感が強調されています。(GPTによる生成プロンプト)

「クリアなカセットテープ」に比べてかなりリアル

これらのプロンプトは、一つは芸術的なスタイルを、もう一つは実物のリアルな描写を重視する点で異なる。芸術的なプロンプトは全体の雰囲気や色調を、リアリズムのプロンプトは詳細な質感や立体感を強調している。

3.色々試したが、最初のプロンプトで生成されたものが好きだった

自分が求めるイメージをプロンプトとの対話で具体化できるのが、GPTの魅力

■まとめ


 ●生成したいスタイルによって同じ対象の表現が大きく変わる。

 ●目的に合わせたスタイル選択(アート、リアルもしくは両方)が重要。

 ●生成したいイメージの目的に合わせたコンテキストを理解し、効果的なプロンプトを書く。

 ●画像の立体感とリアリズムを高めるために、具体的に角度や視点など具体的な指示が必要。

 ●プロンプトの単語に対する修飾語に何を使うかも大事。
  例えば

   「クリアなカセットテープの水彩画 
       極めて白に近い 消えそうな」

 ➡【極めて白に近い】
 :カセットテープの色を修飾し、非常に明るい白色に近いことを示す。

 ➡【消えそうな】
 :カセットテープの見た目や感じを修飾し、ほとんど見えない、または薄くて透明感がある様子を表す。


■おわり


私は水彩画のスタイルが好きだ。水彩絵の具のグラデーションで色がはっきりしない、動きがある、主張しないスタイル、エモい。たまらない。

装丁が心を捉えて離さない。なんてことあるんだ、とはじめての感覚。デザインのことは一切わからないけど、それを見る創造力は大切。創造力が作品やメッセージを生んで、創造力が共感を生む。アート鑑賞はエンパシーが養われるのだろうか。美術館もいいけど、本の装丁もアート作品のひとつだ。と気づいた、という話。

単に「可愛い」「綺麗」「美しい」といった表面的な美しさだけでは物足りない。自分の視点、経験、信念を反映させたナラティブが反映された作品は深い意味を持ち、魅力的になる。そうした深みのあるAI画像生成の作品を見ることへの期待もある。インターネットのそこら中に転がっているプロンプトで遊ぶのはとても楽しい。しかし、自分のナラティブでプロンプトを作ることにも、この遊びの楽しさの本質を感じた本日。

この小説、全部読めばカセットテープのデザインの謎も解けるだろうか。来年こそチャレンジ。

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