スクワット時の重心位置。10%後方移動で足底屈トルク30%↓ & 膝伸展トルク6%↑
📖 文献情報 と 抄録和訳
両脚スクワット時の膝・足首伸展モーメントに及ぼす圧力の中心位置の変化の影響
[背景・目的] 両脚スクワット時の前後圧中心(anterior-posterior center of pressure, AP-COP)位置の変化が下肢関節モーメントに及ぼす影響については、依然として不明である。本研究の目的は、AP-COPの位置変化が両脚スクワット時の股関節、膝関節、足関節の伸展モーメントに与える影響を明らかにすることである。
[方法] 男性16名(22.1±1.5歳)がCOP位置を視覚的にフィードバックしながら2条件(COP前方条件、COP後方条件)でダブルレッグスクワットを実施した。三次元動作解析システムとフォースプレートを用いて運動学的解析を行った。股関節、膝関節、足関節の屈曲角度と垂直方向地面反力ピーク時の伸筋モーメントは、ペアのt検定を用いて2つの条件間で比較した。
[結果] COP位置は,前方条件では踵を起点とした足長の53.5±2.4%,後方条件では44.4±2.1%となった(P<0.001).膝伸展モーメントはCOP前方で後方より有意に小さく(P = 0.003, 95% 信頼区間 (CI) -0.087 to -0.021 Nm/kg/m)、足首伸展モーメントはCOP前方で後方より有意に大きかった(P < 0.001, 95% CI 0.113 to 0.147 Nm/kg/m)。股関節伸展モーメントには有意差はなかった(P = 0.431)。足関節背屈角度はCOP後方よりも前方で有意に大きくなったが(P = 0.003, 95% CI 0.6~2.6°),体幹,股関節,膝関節屈曲角度に違いはなかった.
[結論] 本結果は、AP-COP位置の変化が両脚スクワット時の足関節および膝関節伸展モーメントに主に影響し、下肢関節および体幹屈曲角への影響は限定的であることを示すものである。AP-COP位置の視覚的フィードバックは、両脚スクワット時の足関節および膝関節の伸展モーメントの修正に有用である可能性が示唆された。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
荷重練習やスクワットの際に、「もう少し踵の方に重心がかかるように」「もう少しつま先の方に重心がかかるように」は使用頻度の高い口頭指示だと思う。
このCOPというアウトカムは、有用だ。
なぜなら、臨床上効果的とされるExternal Focusを促しやすいから。
External Focusとは運動時における履行者の注意の向け方を示す用語で、他にもInternal Focusがある。
そして、今回の研究によれば、踵に重心を偏位させることは総支持モーメントのうちで負荷を足関節から膝関節に移行させる効果がある。
さらに、今回の研究で感じたのは「リアルタイムフィードバックの威力」だ。
正直なところ、健常者&神経筋コントロール能力が並以上であれば、前後重心移動は口頭指示でも容易だろうと思う。
・「重心位置が(体性感覚で)分からない」という感覚障害を有する患者
・「動かし方がわからない」という神経筋コントロール能力の低い者
彼らにとっては、重心位置が分かりやすく視覚で与えられることは、大海原で羅針盤を得るに近いだろう。
多分、リアルタイムフィードバックは、適切な対象者と適切なフィードバック手段の組み合わせをしっかり検討する必要があって、それがバッチリ合ったときに大きな効果を見込めるのだろう。
対象者の特性 × フィードバック手段の二軸を自分の頭の中に描こう。
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