少年サッカーでは、体力の高い選手ほど怪我しやすい
📖 文献情報 と 抄録和訳
少年サッカーでは、体力の高い選手ほど怪我のリスクが高い
[背景・目的] 本研究の目的は、ユースサッカーにおける体力、サッカー特有のスキル、およびそれらの傷害リスクとの関連性を調査することであった。
[方法] 9~14歳(中央値12歳)の男女計447名の選手がパフォーマンステストと前向きフォローアップに参加した。体力テストは、5回跳び距離テスト、30mスプリント、サッカー特有の8の字跳びアジリティ、カウンタームーブメントジャンプ、Yo-Yo間欠的持久力テスト(レベル1)であった。また、サッカーに特化したスキルテストとして、ドリブルテストとパステストを実施した。20週間のフォローアップ期間中に、傷害と曝露が登録された。危険因子の候補は、体力テストの総合得点で測定した体力の低/高レベル、ドリブルテストとパステストの総合得点で測定したサッカー固有のスキルの低/高レベルであった。次に、個々のテストの成績と傷害リスクとの関連について調査した。
[結果] 追跡期間中、選手は565件の傷害を報告した(264件の急性傷害と301件の過剰使用による傷害)。体力が高いことは,すべての傷害の発生率の増加と関連していた(年齢,性別,平均チーム曝露調整後IRR:1.28,95%CI:1.04-1.58).サッカーに特化したスキルのレベルは、全損傷率に影響を与えなかった。オーバーユース傷害の負担は、急性傷害ではなく、基準群の選手と比較して、高レベルの体力の選手で有意に高かった(IRR: 2.09, 95% CI: 1.04-4.24 )。
[結論] 最も体力のあるプレーヤーは、ユース競技サッカーにおいて怪我を負うリスクがより高かった。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
スポーツの世界において、パフォーマンスと傷害リスクのパラドックスがある。
すなわち、パフォーマンスの高い選手の方が怪我をしやすい、ということだ。
例えば、ゆっくり走っている自転車と、最大速力で走っている自転車、転んだ時に怪我をしやすいのはどちらだろう?
間違いなく、最大速力だ。
それは、自らの速力が大きいことで、外部と衝突したときの力が大きくなるから。
また、軽い球と重い球、投げたときに肩を壊しそうなのはどちらだろう?
重い球、なぜなら自らが加える力の反作用が、そのまま肩関節や肘関節の負荷になるから。
実際、投球障害を引き起こす肩・肘ストレスの要因の最大のものは『球速』である。
この外部からの衝撃力、自らの力の増大による反作用の増大によって、パフォーマンスの高い選手の方が怪我をしやすい、ということがある。
これを「パフォーマンス・傷害パラドックス」と呼ぼう。
そして、今回の研究によれば、少年サッカー選手においても、明らかにその現象が観察された。
サッカーの場合には、外部からの衝撃力の増大、がその仕組みとしてありそうだ。
走力が高い選手の方が、転んだ時に衝撃力が大きいだろうし、一歩一歩の衝撃力だって、大きいだろう。
だから、急性損傷、Overuseともに高くなる。
そして、ここにジレンマがある。
パフォーマンスを高めつつ、傷害リスクの高まりは最小限に抑える。
そういうことが、したいわけだ。
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