生きた腱板筋を見よ。拡散テンソルで生体内構造調査
📖 文献情報 と 抄録和訳
ヒト腱板筋の生体内3次元構造とモーメントアーム:個人間、筋間、筋内変動
[背景・目的] ヒトの腱板は4つの筋肉から構成されており、それぞれが複雑な多門構造を有している。機能的、臨床的に重要であるにもかかわらず、ヒトの腱板の構造は、ヒトのin vivoではまだ明確に説明されていない。本研究の目的は、ヒトの腱板の構造とモーメントアームにおける筋内、筋間、および個人差を調べることである。
[方法] 若年成人20名の右肩のmDixonスキャンと拡散テンソルイメージング(DTI)スキャンから、腱板全4筋の筋容積、筋束長、生理的断面積(PCSA)、羽状角、モーメントアームを測定した。
[結果]
■ 腱板筋の筋束長, 生理学的断面積
・現在までに得られている最も詳細な解剖によると、すべての腱板筋において筋束長(変動係数:CVsは26%から40%)と羽状角(CVsは56%から62%)にかなりの筋内変動が認められた。
■ 腱板筋の3D筋束構造
・棘上筋 (supraspinatus): 上視(superior view)からの図で、筋束は比較的一様な長さと角度で走行している。
・肩甲下筋 (subscapularis): 前視(anterior view)からの図で、筋束の長さと羽状角に大きな変動が見られる。
・棘下筋 (infraspinatus): 後視(posterior view)からの図で、筋束の長さと羽状角が多様である。
・小円筋 (teres minor): 後視(posterior view)からの図で、他の筋肉に比べて筋束が短く、羽状角も比較的大きい。
■ 腱板筋のモーメントアーム
・棘上筋(Supraspinatus): 24.2 ± 1.6 mm
・肩甲下筋(Subscapularis): 23.3 ± 1.6 mm
・棘下筋(Infraspinatus): 24.2 ± 2.0 mm
・小円筋(Teres minor): 22.9 ± 1.4 mm
[結論] これらのデータを総合すると、腱板構造の個人間および筋間のばらつきは限定的であり、筋骨格系モデルのスケーリングルーチンを簡略化できる可能性がある。しかし、構造における筋肉内のかなりのばらつきは、これまで報告されてきた腱板機能を適切に表現する平均構造パラメータの妥当性に疑問を投げかけるものである。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
前の文献抄読で、「生きた肩甲下筋を見よ!」というものがあった。
今回の研究は、その続編(著者も同じ)である。
考察は、前回の考察を思い出しがてら、丸々引用してみる。
例えば、ジューシーなステーキとビーフジャーキー。
例えば、もぎたてのフルーツとドライフルーツ。
例えば、釣りたての鮮魚と干物。
「こんなにサイズ感が違うかね!?」
というくらいに、違いを感じる。
この例を人体に当てはめることは不謹慎である、が近しいものがあると思っている。
生体内の骨格筋には、みずみずしい血液が流れ、そのミクロな構造を稼働させる、電気的な刺激も加わり続けている。
解剖体を用いた研究においては、生体の構造を見ることはできるかもしれない。
だが、そこに「生」を見ることはできない。
そこには、明らかな限界がある。
今回の抄読研究では、その限界に風穴を開ける拡散テンソルという手法を用いて、生体内の肩甲下筋構造を明らかにした。
その結果、やはりボリュームやそれが関わりそうな羽状角という点では、過去に報告された解剖体研究とは違いを認めた。
さらに、忘れてはいけないのは、解剖体は「高齢者が多い」ということ、それはもちろんそうだろうと思う。
これから、解剖的な研究も、その目的と手法の適応が整備されていくのかもしれないと感じた。
「生きる」を見ること、関わること、促すこと、これはどこまでも柱だ。
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