THA後の不良な矢状面姿勢。骨盤の形状が関連していた
📖 文献情報 と 抄録和訳
人工股関節全置換術後の矢状脊柱変形の進行に関連する因子：傾向スコアマッチコホート研究
📕Matsuyama, Junya, et al. "Factors associated with the progression of sagittal spinal deformity after total hip arthroplasty: a propensity score-matched cohort study." International Orthopaedics (2024): 1-9. https://doi.org/10.1007/s00264-024-06174-9
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[背景・目的] 目的人工股関節全置換術（total hip arthroplasty, THA）を受ける患者における股関節と脊柱の機能的相互作用は、術後の転帰に影響を及ぼすため、臨床的に重要である。そこで本研究では、矢状脊柱変形の進行に関連する因子を同定し、患者報告アウトカムとの関連を評価することを目的とした。
[方法] この後方視的症例対照研究は、一次THAを受け、平均追跡期間42.2ヵ月（範囲：24.0～78.0ヵ月）を終了した200名の患者を対象とした。多変量ロジスティック回帰を用いて、THA後の矢状 垂直軸（SVA）≧50mmを予測する変数を同定した。年齢、性別、体格指数、追跡期間、股関節屈曲拘縮、発育形成不全、骨盤罹患率（PI）、SVAについて傾向スコアマッチさせたコホートを作成し、2群間で転帰を比較した。
✅ 脊柱-骨盤アライメントの評価
＜Sagittal vertical axis (SVA)＞
・仙骨上縁から引いた水平線と、第７頚椎から引いた垂線との距離
・SVAが大きくなると、体の重心が前方に移動し、姿勢の不均衡を示す。
＜T1骨盤角度＞
・T1から骨盤中心へ引いた線と骨盤の垂直軸との間の角度
・骨盤の前傾度合いを示す
＜Pelvic Incidence (PI)＞
・仙骨の上面と股関節中心を結ぶ線と、仙骨の上面に垂直な線との間の角度
・この角度は個人の骨盤形状に依存し、脊柱と骨盤の関係性を理解するための重要なパラメータ
・PIが大きいほど、骨盤は後方に傾きやすく、脊柱の矢状面バランスに影響を与える。
[結果]
■ THA後の不良な矢状面姿勢の予測因子
・PI（オッズ比1.39；95％信頼区間1.04-1.86、p＝0.033）はSVA≧50mmと関連していた。
→AUC: 0.821 (0.715–0.926)、Cut-off: 59度
・年齢も関連していたが、PIより予測精度は低かった
→AUC: 0.680 (0.535–0.825)、Cut-off: 74.7歳
SVA≧50mmの患者（n=50）とそうでない患者（n=50）のマッチングに成功した後、臨床的に重要な最小差はマッチングされた50組の間で有意差を示した（EuroQol-5Dでp=0.016、股関節障害および変形性関節症アウトカムスコア関節置換術でp=0.003、腰痛でp<0.001）。
[結論] PIはTHA後の脊柱矢状面不整の発生と関連している。この知見は、外科医が患者の期待を管理し、転帰を最適化するのに役立つ。THA後の脊柱変形の進行リスクを最小化するために、実行可能な戦略が保証される。
🌱 So What?：何が面白いと感じたか？
アライメント不良に対する介入は、理学療法においては主戦場の1つであろう。
今回の抄読研究は、THA後のアライメント不良の予測因子の1つを明らかにした重要なものだった。
その予測因子が、『骨盤の形状（骨盤傾斜角(PI)）』だった。
骨盤の形状ということは、正直なところ、これに対しては直接的な介入による変化は期待できない。
臨床応用への方向性としては、PIを測定し、THA後の不良姿勢を予測→高リスク者に対しては、姿勢アライメントの修正や姿勢制御の練習を多めに行う、などであろう。
特に、今回得られた『PIのカットオフ値：59度』は、事前より不良姿勢の発生を予測し、介入の焦点を絞ることに役立つだろう。
何事も、予防的に行っていきたいものだ。
事予めすれば則ち立ち、予めせざれば則ち廃す
中庸
⬇︎ 関連 note & 𝕏での投稿✨
📕THA後の不良な矢状面姿勢. 骨盤の形状が関連していた
— 理学療法士_海津陽一 Ph.D. (@copellist) September 1, 2024
・THA実施者200名🇯🇵
・不良な矢状面姿勢(SVA≧50mm)の予測因子を調査
🔹Pelvic Incidence (PI)：AUC 0.821, Cut-off 59度
🔹年齢：AUC 0.680 Cut-off 74.7度
骨盤傾斜(PI) 59度以上の場合, 姿勢への介入が重要となりそうです😲#人工股関節置換術 pic.twitter.com/8nP6YR4jVv
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