Ph.D. 博士号とは何か?
2022年3月23日。
ぼくは保健学博士(Doctor of Philosophy; Ph.D.)になった🌸。
博士になるまでの過程や、博士論文については、以下noteを参照されたい。
Ph.D.の肩書きを持つうえで、「Ph.D.とは?」について知見を持っておくことは必要だと思われた。
今回の年輪は、Ph.D.について、全般的なレビューを行い、今後の英気を養いたい。
▶︎Ph.D.の疫学
博士号取得者の数は、2000年以降、多くの国で大幅に増加しているが、ほとんどの国では、博士号取得者はまだ比較的少数で、OECD加盟国の成人の約1.1%である。(📕McCarthy, 2019 >>> pdf.)。
▶︎Ph.D. のメンタルヘルス:拷問のような真実
Ph.D. 取得者が少ない・・・。
それもそのはずで、Natureによる『博士号取得者:拷問のような真実』という過激なタイトルの調査(世界中の6,300人の大学院生を対象)によれば、約36%が博士課程に関連する不安やうつ病のために助けを求めたことがあることが明らかとなった(📕Woolston, 2019 >>> doi.)。
その現状を踏まえ、Nature同号の別論文において、以下のように述べている(📕Editorial, 2019 >>> doi.)。
Ph.D.の取得は、ある意味、拷問に近いものなのかもしれない。
それが人間を鍛える、という側面も大いにあるだろうが。程度問題だろう。
▶︎Ph.D.の歴史
▶︎Ph.D.の意義・心構え
以下、Jake Miner教授による「博士号を取得する目的は何ですか?」に対する答えから一部抜粋した。
▶︎Ph.D.の価値・利得
▶︎Ph.D.に対する批判
動機には給与の増加も含まれるかもしれないが、多くの場合、結果的にはそうなっていない。
英国ウォーリック大学のバーナード・H・ケーシーの研究によると、全科目において、博士号取得者は非認定校卒業者に比べて26%の収入プレミアムをもたらすが、修士号はすでに23%、学士号は14%のプレミアムをもたらしていると指摘されている(📕 Casey, 2009 >>> doi.)。
一部の研究では、過剰資格を持つ労働者は、しばしば仕事の満足度と 生産性が低くなると指摘している(🌍 Freeman, 2010 >>> site.)
また、米国では生命科学の博士課程の学生のうち20%しか教員の職に就けないこと、カナダでは博士研究員の80%が平均的な建設作業員(年収38,600ドル)以下の収入しか得ていないこと、などが含まれていた(🌍 Freeman, 2010 >>> site.)
▶︎Ph.D. (理学療法士)と収入
2023年の老舗Physical Therapy誌で発表された研究が参考になる(📕Garbin, 2023 >>> doi.)。
アメリカ🇺🇸における理学療法士の30年間の収入を調査(4種類のキャリアパス)。
臨床のみの理学療法士としての仕事と比較すると、4 年間の博士号取得トレーニングは 264,854 ドルの収入不足となり、さらに 2 年間の博士号取得トレーニング後には 357,065 ドルとなる。
しかし、これらの赤字は持続せず、結果的に博士号取得キャリアの方が長期的な収入が多くなる。
特に高度な研究トレーニングを積んだPh.D.教員理学療法士は長期的に大きな収入が得られる。
つまり、少なくともアメリカにおいては、Ph.D.を取ることは報酬面においては、時系列としての“先憂後楽”を生むらしい。
▶︎生産的なPh.D.の特徴
生産的なPh.D.には、環境上の特徴がある、という論文が発表された(📕Corsini et al., 2022 >>> doi.)。
この論文は、77,143人の学生を対象にして、指導教官や同期の特性が、学生の論文量、質、共著ネットワークの大きさとどのように関連しているかを調査している。
この研究の結果、以下のような環境特性を有する学生は生産性が高くなるらしい。
🔹指導教官:生産的で、ミドルキャリアで、メンター経験の浅い、女性
🔹同僚:少なく、業績が多く、若手で、最低1人は女性
これからPh.D.を志す者にとって、望ましい環境特性を選択することも重要かもしれない。
😊 Super Human's Voice
Ph.D.の歴史から近年の批判まで、レビューしてきた。
わかったことは、Ph.D. はまだまだ少数派で、教職やアカデミックキャリアでの成功を目指すうえでは非常に重要になるということ。
ただし、その他の点では、それ自体あまり重要ではない、むしろ弊害になる場合すらある。
じゃあ、Ph.D.を何に燃焼させたらいい?
意義・心構えを心の剣にしていく。
これが、直近の答えじゃないかと、そう思った。
Jake Miner教授の言葉は、僕の心の真と、確かに一致した。
「ここからは下り坂だ」・・・か。
転がるようにして、生きてやる。
2022年3月23日。
オンライン学位授与式を待ちつつ、自宅書斎より・・・🌸
○●━━━━━━━━━━━・・・‥ ‥ ‥ ‥
臨床研究のつくり方を考え・つくり手を育てる
『僕らの臨床研究の年輪』
こちらから♪
↓↓↓
‥ ‥ ‥ ‥・・・━━━━━━━━━━━●○