
認知症の重症度と褥瘡処置, 治癒
📖 文献情報 と 抄録和訳
認知症の重症度と高度な褥瘡処置および予後:日本全国調査
📕Nakagami, Gojiro, et al. "Dementia severity and advanced pressure injury procedures and prognosis: A nationwide study in Japan." Geriatrics & Gerontology International (2024). https://doi.org/10.1111/ggi.15005
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar 🌲MORE⤴ >>> Connected Papers
※ Connected Papersとは? >>> note.
[背景・目的] 目的高齢者では褥瘡(PI)が一般的であり、PIケアの進歩にもかかわらず、標準化された治療法が利用できない認知症患者では合併症の増加と関連している。本研究では、退院時のPIのケアの実践パターンと治癒結果に対する認知症状態の影響を調査することを目的とした。
[方法] この後方視的コホート研究では、2014年から2015年の診断群分類データベースおよび医療施設機能年次報告書のデータを使用し、65歳以上の患者を対象とした。 膿瘍の重症度を判定するためにDESIGN-R(深達度、滲出液、大きさ、炎症/感染、肉芽形成、壊死、評価)分類システムを使用し、認知症の状態を評価するために認知症尺度を使用した。測定された結果には、高度なPIケアと退院時の治癒が含まれた。 病院関連のクラスタリングを考慮した多変量ロジスティック回帰分析を用いて、認知症とこれらの結果との関連性を調査した。
[結果] 分析対象となった1198の病院の20,386人の患者のうち、32.5%、20.1%、47.3%がそれぞれ認知症なし、軽度、重度であった。患者および病院の特性を調整したところ、認知症のない患者と比較して、重度の認知症患者は皮膚移植術(調整オッズ比[aOR]、0.62 [95% 信頼区間[CI]、0.40–0.97]; P=0.034)や皮弁手術( (調整オッズ比[aOR]、0.57 [95% CI、0.42–0.77]; P < 0.001)を受けにくかった。また、退院時のPI治癒の可能性が低下していた(aOR、0.80 [95% CI、0.72–0.90]; P < 0.001)。

[結論] 重度認知症はPI治癒不良と関連しており、潜在的な治療格差を示唆している。したがって、PI治療は認知症の重症度に応じて行うべきである。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
入院中のリハビリテーションに従事していると、褥瘡の大変さがよく分かる。
重度な褥瘡ともなれば、骨まで見えてしまうような状態になることもあるし、普段圧が加わりやすいところが褥瘡になるわけなので、そこの圧分散をすることは容易ではない。
さらに、その治療の難しさに拍車をかけるのが「認知機能低下」である。
『そこに褥瘡がある。だから圧をかけてはいけない』という認識、それが得にくい場合には、治療は難航しやすい。
今回の抄読研究においては、日本の高齢者データから、認知症の重症度と褥瘡処置、治癒の現状を明らかにしてくれた。
個人的に新知見だったのは、重度認知症者に対して高度な褥瘡処置が与えられにくい、ということ。
その理由について、論文の考察では以下のようなところが述べられていた。
✅ 重度の認知症患者が高度な褥瘡処置(皮膚移植や皮弁手術など)を受けにくい理由
1. 手術後の管理が困難
・高度な褥瘡処置(特に皮膚移植や皮弁手術)では、術後の安静や適切な創部管理が必要だが、重度認知症患者ではそれが難しい。
・認知症の進行により、安静を保つことが困難になったり、創部を無意識に触る、拘縮(関節のこわばり)による姿勢維持の困難さなどがある。
・そのため、医療者側が手術適応を慎重に判断し、非手術的な管理を優先する傾向がある。
2. 医療費や治療の選択に関する問題
・認知症患者に対しては、家族や医療チームが治療方針を決定することが多い。
・費用対効果の観点から、積極的な外科的治療が避けられる可能性がある。
・例えば、重度認知症の患者では積極的な治療が行われず、保存的治療(軟膏やドレッシングなど)が選ばれることがある。
3. 施設や病院の体制の影響
・重度認知症患者は、認知症ケアに特化した病院や介護施設にいることが多く、そこでは高度な外科的治療を提供できない場合がある。
・また、研究によると、皮膚科や形成外科の病棟がある病院では、皮膚移植や皮弁手術の実施率が高いが、重度認知症患者はそのような病院に入院する機会が少ない可能性が示唆されている。
4. 認知症による全身状態の悪化
・認知症が進行すると、栄養状態の低下や免疫力の低下がみられ、外科的治療を行っても創傷治癒が遅れるリスクが高い。
・そのため、医療チームが手術のメリットよりもリスクが大きいと判断し、保存的治療を選択することがある。
認知症を合併している褥瘡者の褥瘡治癒に向けた取り組みには、より高度な工夫が必要そうだ。
考えていきたい。
⬇︎ 関連 note & 𝕏での投稿✨
📕認知症の重症度と褥瘡処置, 治癒
— 理学療法士_海津陽一 Ph.D. (@copellist) February 20, 2025
・1198病院の高齢者20,386人🇯🇵
🔹認知症なし32.5%, 軽度20.1%, 重度47.3%
重度認知症者は,
🔹高度な褥瘡処置(皮膚移植術, 皮弁手術)を受けにくかった
🔹退院時の褥瘡治癒の可能性が低下していた
認知症者の褥瘡ケアは, とても難しいですよね😲#認知症 #褥瘡 pic.twitter.com/xy4uF7mYsr
○●━━━━━━━━━━━・・・‥ ‥ ‥ ‥
良質なリハ医学関連・英論文抄読『アリ:ARI』
こちらから♪
↓↓↓

‥ ‥ ‥ ‥・・・━━━━━━━━━━━●
#️⃣ #理学療法 #臨床研究 #研究 #リハビリテーション #英論文 #文献抄読 #英文抄読 #エビデンス #サイエンス #毎日更新 #最近の学び