ルブリシン,イリシン。軟骨を保護し変形性関節症を防ぎます
📖 文献情報 と 抄録和訳
変形性関節症の予防と治療におけるルブリシン、イリシン、運動の役割について
[背景・目的] 変形性関節症は、加齢とともに悪化する慢性変性筋骨格系疾患であり、関節構成要素の病的変化により定義される。変形性関節症に対するすべての臨床治療勧告は運動を促進するが、正確な分子経路は不明である。本研究の目的は、ルブリシンとイリシンに関する研究を批判的に分析し、それらが健康な関節組織と病的な関節組織にどのように関連しているかを明らかにすることであった。
[レビュー概要] 本研究では、特に運動戦略に焦点を当て、将来起こりうる変形性関節症の治療計画に新たな視点を提供することを目的としている。ルブリシンとイリシンは最近発見されたばかりだが、軟骨のホメオスタシスに影響を与えていることが証明されている。
■ ルブリシンの役割
・軟骨の潤滑と完全性の重要な構成要素であるルブリシンは、滑膜関節から放出される表面活性のあるムチン性糖タンパク質である。
・健康な関節では、ルブリシン分子は軟骨表面を覆い、関節の境界を潤滑にし、タンパク質や細胞の付着を抑制している。
・軟骨保護に関する研究:その発現量は、関節の動きに応じて増加し、軟骨細胞の潤滑油の産生を高め、関節表面の潤滑性を向上させた(📕Musumeci, 2015 >>> doi.)。
・関節外傷、炎症性関節炎、遺伝的なルブリシン欠乏症の患者は、関節軟骨を保護するために十分なルブリシンが生成されず、関節症を発症する。
■ イリシンの役割
・イリシンは、「スポーツホルモン」とも呼ばれ、主に骨格筋から分泌されるマイオカイン。
・生理活性のあるタンパク質で、内分泌因子として循環に入ることができ、その合成と分泌は主に運動による筋収縮が引き金となっている。土屋らは、同一人物で異なる日に行った低強度の運動と比較して、高強度の運動は血清レベルを高めるのに適していることを示した(📕Tsuchiya, 2014 >>> doi.)
・運動にはOAの炎症状態を抑制する効果があり、炎症抵抗性とイリシンの発現には関連性がある(📕Park, 2021 >>> doi.)
・軟骨保護に関する研究:適切な強度の運動は滑液中のイリシン濃度を有意に上昇させ、軟骨細胞の炎症を抑制し、軟骨損傷を軽減することが示された(📕Packard, 2008 >>> doi.)
[結論] 検討した研究は、変形性関節症との闘いにおいて運動が果たす役割についての知識を深め、貴重な資料となり、変形性関節症の予防と治療の進歩を支援するものである。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
以前、Sports Medicine誌のレビュー論文を抄読した。
その結論は、以下のようなものだった。
その論文では、結果だけ示され、その仕組みは不明だった。
今回の論文では、その仕組みの1つ、しかも最新の機構について説明がなされており、興味深かった。
運動により産生されるルブリシン、イリシンが軟骨を保護するという。
運動によって、単純にミルキング作用による栄養促進がなされるだけではなく、産生されるタンパク、ホルモンが変わっていたのだ。
このあたりは、肉眼でいくら見てもわからない。
今回のようなミクロな機構を示した論文に多く触れ、理論負荷を妥当にしていきたい。
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