陸上競技用スパイクの違いがレースパフォーマンスに及ぼす影響
📖 文献情報 と 抄録和訳
エリート長距離ランナーが最新技術のスパイクを履くことで、走行速度がパフォーマンスの向上に影響を与える?
[背景・目的] 2020年に陸上競技用の先進的なフットウェア技術(AFT)が導入されて以来、エリート長距離走者のレースタイムが向上している。このパフォーマンスの向上は、AFTスパイクを履くことで足の剛性に影響を与えるミッドソールのコンプライアンスが変化したことによるものと考えられる。足の剛性の増加は、6 m/sを超えるランニング速度と関連しているため、AFTスパイクを履くエリート長距離走者のレースタイムの向上は、より速いランニング速度では減少する可能性がある。
[方法] AFTスパイクの使用、走行速度、レースパフォーマンスの関係を調査するため、2001年から2023年の800mから10,000mのレースにおける男女エリートランナー上位100名のレースタイムの統計分析を行った。レースパフォーマンスの向上(RPI)は、AFTスパイク導入前(2001年~2019年)の回帰方程式で予測されたトップ100選手のレース平均タイムと、2021年、2022年、2023年のトップ100選手の実際のレース平均タイムの差のパーセンテージとして算出した。
[結果] 全体として、AFTスパイク導入後のRPIは0.89±0.58%(範囲:0.22~2.03%、P < 0.001)となり、回帰方程式で予測されたよりも1キロメートルあたり約1.2秒速かった。さらに、レースの距離が短くなるほど平均走行速度は速くなり、10,000mから800mまでの走行速度とRPIには負の相関があることが分かった(P < 0.001)。
[結論] 過去のレースタイムの傾向を考慮した上で、800mから10,000mの種目に出場したエリートアスリート男女上位100名の平均レースタイムは、先進的なフットウェア技術を採用したスパイクの導入以来、改善されていた。しかし、平均的なランニング速度が速い場合、パフォーマンスの向上率はより小さくなっていた。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
いま、ニューイヤー駅伝、箱根駅伝が熱い季節である。
どうしても、足元に目がいってしまう。
「ふむふむ、やはりメタパリ(METASPEED PARIS SERIES, ASICS)、人気ですね」
「おお、Onですか、おしゃれですね」
「ADIDAS、多くないですか・・・」
シューフィッターの勉強会に参加し、またインソールの勉強を進めるにつれ、靴の重要性を感じないわけにはいかない。
そんな中で、今回の抄読研究は、マラソンほどの長距離ではなく、中距離における陸上競技用スパイクの目覚ましい進化が、実際パフォーマンスにどのような影響を与えているのかを明らかにしてくれた。
その結果としては、先進型スパイク導入後、0.89±0.58%パフォーマンスが改善し、1kmあたりでは約1.2秒速かった。
1km1.2秒というのが、実感としてどの程度の改善なのかは、最高峰の陸上競技者にしか分からない感覚だろうと思う。
だが、何にせよ、先進型スパイクの使用が方向性としては、パフォーマンス向上に向かっていることは確かだ。
進歩は止まらない、日進月歩である、絶え間ない漸進である。
それを臨床応用する僕たちの知識も、常にアップデートされなければならない。
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