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シューズの摩耗とランニングへの影響


📖 文献情報 と 抄録和訳

ランニング時の着地衝撃における摩耗した靴と足部の内反が踵の内部バイオメカニクスに及ぼす影響:被験者固有の有限要素解析

📕Song, Yang, et al. "The influence of simulated worn shoe and foot inversion on heel internal biomechanics during running impact: A subject-specific finite element analysis." Journal of Biomechanics (2025): 112517. https://doi.org/10.1016/j.jbiomech.2025.112517
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[背景・目的] この研究では、ランニングシューズの劣化と足部回内による系統的な変化が、踵圧力および踵骨ストレスの分布とピーク値、および踵骨内の総ストレス集中曝露(TSCE)にどのような影響を与えるかを調査した。

[方法] 足部とシューズの有限要素モデルが採用され、3つのシューズ摩耗状態(新品(CON)、中程度の摩耗(MWSC)、過剰な摩耗(EWSC))と3つの足部内反角度(0°、10°、20°)がさらに調整された。シミュレーションはランニング中の衝撃ピーク時に実施された。

[結果]
■ ランニング時の足底圧
・CON0と比較すると、ニュートラルランディング時の足底圧は内側へ移動し、シューズの摩耗が進むにつれて増加し、EWSC0でピークに達した
・この変化により、高圧エリアが1.333 cm2拡大し、ピーク圧力が24.42%上昇した。
足部内反着地では、逆の傾向が見られた。
・すなわち、靴の摩耗が進むと圧力分布がバランスし、荷重が中央に集中し、EWSC10では高圧エリアが解消され、ピーク圧力がCON10よりも11.36%低下した。

■ ランニング時の踵骨応力
・ニュートラル着地時の踵骨のストレスは、当初は内側踵骨表面と下後結節に集中したが、摩耗により強まり、EWSC0では高ストレス領域が5.276 cm2に拡大し、ピークストレスが22.79%増加した。
・足部が内反すると、高応力領域は踵骨下結節へと移動し、摩耗によりピーク応力は10.41%減少、EWSC10ではCON10と比較して高応力領域が解消された。

[結論] 摩耗した靴はかかとの内部バイオメカニクスを悪化させるが、足部が内反することで、おそらくは足の外側と地面との接触面積が比較的平坦で大きくなることで、これらの影響が緩和される可能性がある。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

「ああ、これはだいぶ使い込んでますねぇ」
患者さん「靴って、どのくらいで変えた方がいいんですかね?」
「このくらい摩耗が進んでしまっていると、変えた方がいいでしょうね」

こんなやりとりを、複数回したことがある。
この回答は、今回の抄読研究の結果を受けて、一面正解であり、一面不正解であった。

足部アライメントがニュートラル接地をする人にとっては正解だ。
摩耗が進めば進むほど、足底圧や踵骨応力が高まってしまう。
この場合、速やかにシューズの変更を検討した方がいいだろう。

足部アライメントが内反接地する人にとっては不正解かもしれない。
なんと、この場合摩耗が進むと、足底圧や踵骨応力が「減少する」のだ。
仕組みとしては、摩耗と内反が中和して、結果的に地面にフィットするようになる、という。
この場合、シューズの変更は一面、負荷量の増大をもたらすことになるかもしれない。

ただし、この研究で着眼されていない重要な部分として、そもそもアウトソール・ミッドソール(靴の底の構造)が削れていることによってシューズの機能が減少している、ということがある。
これによって反発性の減少、地面を捉える摩擦力の減少、ドロップ(踵-つま先の高さの差)変化によるランニングサポートの変化、など多岐にわたる影響が及ぶと思われる。
そのため、おそらくだが、シューズは変えた方が良いのだろう。
だが、足部アライメントが内反している人には、インソールによるシューフィット向上を図るなど、オプショナルな操作が必要になるのかもしれない。

やっぱり、あることが絶対に悪い、あることが絶対に良い、ということはないのだ。
その人にとって、「なぜ」悪いのか、「なぜ」良いのか。
それをいちいち考えて、評価して、介入してまた確かめて、いくしかない。
ステレオタイプな治療者にだけは、なってはいけない、そう感じさせてくれた論文だった。

良いは悪い、悪いは良い。
マクベス

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