軽負荷筋トレの是非
📖 文献情報 と 抄録和訳
中高年成人における無脂肪量、筋力、パワー、情動反応に対する従来の筋力トレーニングと軽い負荷の筋力トレーニングの比較
[背景・目的] 筋力トレーニングは、筋力、筋量、パワーを向上させるために広く推奨されている。しかし、中高年成人において、ワークアウトに近い軽い負荷を用いた筋力トレーニングがこれらのアウトカムに及ぼす実現可能性と潜在的な有効性については不明な点が多い。
[方法] 23名の地域在住成人を2群に無作為に割り付けた: 従来の筋力トレーニング(strength training, ST)(8~12回)群と、より軽い負荷でより高い反復回数(lighter load, higher repetitions, LLHR)(20~24回)群である。参加者は、8つのエクササイズを7~8(0~10のスケール)の知覚的労力で行う全身ワークアウト(週2回)を10週間行った。事後テストは、グループ分けを盲検化した評価者によって行われた。ベースライン値を共変量として、共分散分析(ANCOVA)を用いて群間差を検討した。
[結果] 平均年齢は59歳で、うち61%が女性であった。LLHR群は92%(9.5%)という高い出席率を示し、レッグプレス運動の知覚的労力は7.1(0.53)、セッションフィーリングスケールは2.0(1.7)であった。除脂肪体重(fat free mass , FFM)には、LLHR対STで些細な差があった[0.27 kg 95 % CI (-0.87, 1.42)]。ST群は、レッグプレス1反復最大(1RM)筋力[-14kg(-23、-5)]の優れた増加を示したが、LLHR群は、より大きな筋持久力増加(65%1RM)[8反復(2、14)]を示した。
レッグプレスパワー[41 W(-42, 124)]と運動効果[-3.8(-21.2, 13.5)]は、群間差はわずかであった。
[結論] 中高年の筋力適応を促進するためには、より軽い負荷をワークアウトに近いところまでかけて行う実用的な全身筋力トレーニングプログラムが実行可能な選択肢であると思われる。これらの結果は探索的なものであり、確認のためにはより大規模な試験が必要である。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
最近、よく臨床において感じるのは「高齢者に対しての筋力トレーニングにおいて、過負荷の原則はどこまで当てはまるか?」ということ。
今の自分の最大筋力に対して、ある程度のハードル(負荷量)の高さがなければ、効果が出にくいという考え方。
これって、高齢者にどこまで当てはまるのか?
最近、高齢者の骨格筋反応は老化しており、同化抵抗性(骨格筋が外的刺激に対して同化されにくい)を認めることを知った。
その高齢者に対して、若年者と同じように高負荷をかけたら、問題が生じるのではないか、と感じていた。
臨床感覚としても、負荷量をギリギリまで上げた症例において、筋肉痛や最大筋力、筋持久力の一時的な低下を認めているような感覚がある。
今回の研究は、年齢としては59歳なので、中年でやや若年よりの被験者においてだが、軽負荷筋トレの是非を検証している。
その結果、どちらとも効果は出るのだが、従来型は最大筋力アップに強みがあり、軽負荷は筋持久力アップに強みがあった。
これが高齢者や超高齢者においてどうなるのか、気になるところだ。
もしかしたら、後負荷では同化が遅れ、有害事象が現れたり、それによりパフォーマンスへの影響があるかもしれない。
そうだとしたら、筋トレデザイン選択の天秤は、軽負荷筋トレに傾くのかもしれない。
重要なトピックスの1つ。
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