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運動誘発性痛覚低下は、15秒の短時間運動でも起きる!


📖 文献情報 と 抄録和訳

90秒および15秒間の短時間の等速性サイクリング運動により、運動誘発性疼痛閾値低下が起こる

📕Tomschi, Fabian, et al. "Short all‐out isokinetic cycling exercises of 90 and 15 s unlock exercise‐induced hypoalgesia." European Journal of Pain (2024). https://doi.org/10.1002/ejp.2276
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[背景・目的] 激しい運動は運動誘発性痛覚低下(exercise-induced hypoalgesia, EIH)を引き起こす。しかし、非常に短時間で高強度の運動によってどの程度までEIHが誘発されるかは、ほとんどわかっていない。本研究では、2種類の異なる短時間の全力等速性運動セッションがEIHに及ぼす影響を調査することを目的としている。

[方法] 20人の若い男性被験者は、無作為化対照試験デザインで、個々に合わせた低強度のウォームアップの後、3つの異なる介入(それぞれ90秒間、15秒間の全力等速性サイクリング、および対照)を受けた。ウォームアップの前(pre)と後(post 1)、および介入直後(post 2)に、肘、膝、足首の関節、胸骨、額の圧痛閾値(PPT;単位はN)を用いて痛みの感度を測定した。パフォーマンスパラメータ(乳酸、主観的運動強度、心拍数など)を記録した。

[結果] PPT については、「時間」×「介入」×「身体部位」の交互作用効果(p < 0.001、η2 partial = 0.110)が観察された。等速性介入は、ウォームアップ効果を除外した後でも、すべての身体部位で EIH を生じた。効果は、15 秒間(最大増加量 19.3 ± 18.9 N)とコントロール(最大増加量 8.0 ± 6.1 N)と比較すると、90 秒間(最大増加量 25.7 ± 11.7 N)の方が大きかった。また、コントロールと比較すると、15秒間もEIH効果をもたらし、すべての部位で違いは観察されなかった。

この図は、90秒および15秒の短時間の等速性サイクリング運動が疼痛閾値(PPT, Pressure Pain Threshold)に与える影響を評価したものである。

この研究では、90秒間は15秒間およびコントロールと比較して、乳酸、主観的な疲労、心拍数レベルが高かった(p <0.001)。一方、15秒間もコントロールと比較して高い値が観察された。

[結論] これらの結果から、EIHは実際にこのような短時間のトレーニングによって誘発されることが実証され、15秒間のセッションよりも90秒間のセッションの方がより高い効果が観察された。これは、主観的および客観的な運動負荷がより高かったためである可能性が高い。これらの知見は、非常に短時間だが高強度の運動が痛みを軽減する可能性について洞察を提供しており、運動の推奨や疼痛管理戦略に影響を与えるものである。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

これまで、運動誘発性痛覚低下については、その神経メカニズムを追ってきた(関連note参照)。
だが、実際にEIHを引き起こすためにはどのような運動を、どの程度の時間行えば効果的なのかは不明であった。
今回の抄読研究は、その具体的な部分についての情報を与えてくれた。

結果として、全速力のサイクリング運動を15秒という短時間行うだけでも、EIHを引き起こす効果はあるようだった。
そして、その効果は運動量が大きくなるほどに、大きくなるという特徴があるようだった。
つまり、EIHを引き起こすなら、高強度、長時間(1-2分間)が効果的かもしれない。

だが、EIHには注意点がある。
それは、本研究でもそうなのだが、健常者の事前に疼痛が生じていない組織に当てはまること、という点。
事前に疼痛が生じている場合には、むしろ筋出力を低下させてしまうというリスクもある。

患者さんに当てはめる場合、EIHを引き起こす運動が、患部や疼痛箇所に負荷を加えにくい運動であることが条件であるように思える。
注意して、臨床応用していきたい。

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