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膝OA者の罹病期間と運動療法による改善効果


📖 文献情報 と 抄録和訳

変形性膝関節症の症状が短い期間の人々は、症状が長い期間の人々よりも運動療法からより多くの恩恵を受ける:OAトライアルバンクからの個々の参加者データを用いたメタアナリシス

📕van Middelkoop, M., et al. "People with short symptom duration of knee osteoarthritis benefit more from exercise therapy than people with longer symptom duration: An individual participant data meta-analysis from the OA trial bank." Osteoarthritis and cartilage 32.12 (2024): 1620-1627. https://doi.org/10.1016/j.joca.2024.07.007
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[背景・目的] 目的変形性膝関節症(osteoarthritis, OA)患者の疼痛および身体機能に対する非運動療法と比較した運動療法の効果の大きさに、膝の症状の期間が影響するかどうかを調査すること。

[方法] 変形性膝関節症患者を対象に運動療法と非運動療法を比較した無作為化対照試験(RCT)からOA Trial Bankに保存されたIPD(個別参加者データ)を利用して、個別参加者データ(IPD)メタアナリシスを実施した。RCTのIPDを分析し、多層回帰モデルにおいて研究レベルおよび個人レベルの共変量を考慮することで治療効果を決定した。自己申告の疼痛または身体機能(0~100のスケールに標準化)に対する交互作用効果(すなわち、治療×症状期間(二分))を推定するために、一段階多層回帰モデルを適用した。

✅ 変形性膝関節症の罹病期間 (症状を有した期間) の定義
この研究における変形性膝関節症の罹病期間は、
患者が膝関節症状を経験していた期間を指している。
具体的には、以下の3つのカテゴリーに分けられた:
・≤1年(症状が1年以内の患者)
・1〜2年(症状が1年以上2年以内の患者)
・>2年(症状が2年以上の患者)

[結果] 10件のRCTから、変形性膝関節症患者1767人のIPDを組み入れた。研究群と症状の期間(1年以下 vs 1年超、2年以下 vs 2年超)との間に有意な交互作用効果が認められたのは、短期の痛み(MD -3.57、95%CI -6.76~-0.38)長期の痛み(MD - 8.33、95%CI −12.51~−4.15)、および長期の身体機能(MD −5.46、95%CI −9.22~−1.70)であった。

[結論] このIPDメタ分析により、症状の期間が比較的短い人の方が、症状の期間が長い人よりも治療的運動からより大きな恩恵を受けることが示された。したがって、変形性膝関節症の治療に運動療法を適用する好機があると思われる。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

症状の罹病期間。
これで、まず思い出すのが『脊柱管狭窄症』や『頚椎症性脊髄症』などの脊髄への圧迫によって症状や器質的損傷を呈する疾患である。
これらの疾患は、脊髄への圧迫期間が長ければ長いほど、たとえばオペをした際の症状改善の予後が明らかに変わる。
だからこそ、症状の罹病期間の問診が、治療効果の見込みや予後予測にとって重要になるわけだ。

変形性膝関節症については、そこまで重要という認識は持っていなかったが、今回の抄読研究の結果、『いや、大切です』ということを教えられた。
膝OA者にとって重要なアウトカムである疼痛と身体機能に対して、特に長期的なアウトカムに罹病期間が関連していた。
今後は、膝OA者においても、より重要な項目として『症状の罹病期間』を聴取していきたいと思う。

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