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個別音楽鑑賞の威力。認知症者の行動・心理症状を緩和
📖 文献情報 と 抄録和訳
認知症の行動・心理症状に対する個別音楽聴取の即効性
📕Hillebrand, Mareike C., Lisette Weise, and Gabriele Wilz. "Immediate effects of individualized music listening on behavioral and psychological symptoms of dementia: A randomized controlled trial." International Journal of Geriatric Psychiatry 38.3 (2023): e5893. https://doi.org/10.1002/gps.5893
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[背景・目的] 個別音楽鑑賞(individualized music listening, IML)は、認知症の行動・心理症状(behavioral and psychological symptoms of dementia, BPSD)を効果的に軽減できることが示唆されている。しかし、これまでの研究では、主に代理人が記入したBPSDの質問票による測定が行われてきた。そこで、我々は、IMLのBPSDに対する効果を系統的な観察に基づいて調査する。検証済みの測定器、時間ベースのサンプリング、縦断的な分析方法を用いることで、これまでの観察研究の方法論的な限界に対処している。
✅ 個別音楽鑑賞(IML)とは?
・IML介入では、PwDは自分の好みや経験に基づいた音楽プレイリストを聴く。
・特に個別音楽鑑賞(IML)は、BPSDを軽減するための効果的で実現可能性の高い非薬物学的介入として浮上している。
[方法] 無作為化比較試験(DRKS00013793; ISRCTN59052178)において、IML介入群(IG; n = 44)と対照群(CG; n = 46)の認知症の老人ホーム入居者のBPSDを比較した。訓練された評価者が、IMLセッションの前、中、後に4分間隔15回で18人のBPSDを観察した。セッション前後におけるIGとCGのBPSDの比較にはt検定を、1時間にわたるBPSDの軌跡の比較には区分的潜在曲線モデリングを使用した。
[結果] IGでは、セッション中、CGよりもBPSDの発生頻度が低かったが、セッションの前後には見られなかった。同様に、CGではBPSDが安定した軌跡を描くのに対し、IGではセッション前の安定、セッション中の減少、セッション後の増加を特徴とするU字型の軌跡を描くことがわかった。ベースラインのBPSDとセッション前後の傾きには、有意な個人差があった。
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[結論] 今回の結果は、IMLがBPSDを効果的に減少させることを示す新たな証拠となったが、その効果は短時間であった。IMLは副作用がほとんどなく、非常に受け入れられやすく、簡単に実施できるため、IMLは認知症患者の日常のケアルーチンに組み入れるべきである。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
まず、以下の動画を見ていただきたい(1分30秒程度)。
映画、リメンバーミーを見た方は落涙していることだろう。
見ていない方は、人生の2/3を損しているので、急いでみることをお勧めする。
この場面は、映画のラストに近い部分で、認知症高齢者であるママココが、幼少期にたくさん聞いた思い出の曲を聞くことで、一時的に記憶の扉が開かれる、という感動的なシーンだ。
こういう瞬間が、臨床上にもある。
昔の音楽、好きな音楽を聴くと、重い重い、記憶の扉が少しだけ開く瞬間が。
今回の研究は、それは実験ベースで明らかにした重要な論文だと思う。
さらに、偶然にも親しみのある音楽を聴いた際の脳波の変化についての研究論文に今日、出会ったのでそちらも紹介しよう。
■ 親しみのある音楽を聴いた際の脳波の変化
・本研究では、10秒間の親しい音楽を聴いたときの動的な時間-スペクトル効果を、親しくない音楽と比較して区別している。
・この研究では、聞き慣れた音楽を聴くと、アルファと低ベータの帯域で連続的な抑制が起こることを明らかにした。
※アルファ抑制は、親しみやすい音楽を聴くことによる注意の高まりや覚醒・関与を反映していること、低ベータ抑制は親しみやすさの効果を示していることを示す。
音楽は呪文だ。
しかも、個人特異的な。
その呪文は、はるか昔に立てられた、メロディフラッグなのだろう。
僕も、Dragon Ashの音楽を聴くと、中学校の野球部の超早朝練を思い出す。
あなたにとっての呪文となる音楽は、何ですか?
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