ハワイ・ヤギ汁・青酎 ~村上春樹『ダンス・ダンス・ダンス』28~

この章は、インタールード(間奏)だ。

ユキと「僕」は、ハワイに行く。

そこでの束の間を楽しむ。

それだけだ。

私の顔は濃い。

あれほど日航機墜落のせいで怖がっていた国内線にはじめて乗って、沖縄に行ったのが大学2年生のとき。

現地では、お前は沖縄出身じゃないのか、と何度も聞かれるくらい。

写真アプリで、女性化しても、メキシコのビッグママみたいな顔になる、私。

ただ、私がわかってなかったのは、夏の沖縄の陽ざしであった。一緒に行った仲間たちは、公設市場で飯を食うとか言ってたが、私は自転車で南部にあるヤギ刺しの店を目指すことにした。

今は、おそらく、ノロウィルスとかの問題もあって規制されているかもしれないし、すでにその店はなくなっているようだが、1996年、私は初めて、沖縄に行った。

半袖を着ていた。

自転車で走っていると、タクシーの運転手に、「悪いことはいわないから長袖着た方がいいぞ」と言われた。私は、こんなに暑いのに何言ってんだ、と思ったが、あとでその意味を思い知ることになる。

当時、体力には自信のあった私は、那覇から南風原、ひめゆりの塔を回って、知念岬までいき、那覇に戻ってきた。

その途中で、ヤギ汁とヤギ刺しを食べた。

店の名前は忘れたが、専門店で、メニューは二つしかなかった。

どちらも、香りには癖があったが、美味しかった。

後年、妻と石垣島に行ったとき、ヤギ汁の店にいったが、妻はギブアップしていた。

個人的には羊よりもヤギの方が、香りの相性はいい。通常は逆だが。

「最初はゆっくりと焼くのよ」とユキはわけしり顔で僕に言った。「まず日陰で焼いて、少しひなたに出て焼いて、また日陰に戻るの。そうしないと火傷みたいになっちゃうからね。ひぶくれができるし、跡も残るわよ。すごく醜くなるんだから」

p.69

ハワイでくつろいでいるユキのセリフである。

私も、こうしたタクシーの運ちゃんの助言を素直に聞くべきだった。

そして、水ぶくれは出来、火傷のように肌がひりひりした。

一緒に行った後輩が、アロエを買って来てくれて、みんなで肌に塗りたくった。

その後、沖縄には二回行った。石垣島、竹富島にも二回行った。

いい印象しかない。

蒸留酒をやめている自分だけれども、泡盛はときどき飲みたくなる。

石垣島の請福がいい。

または、青ヶ島の青酎だ。これは昔、表参道にあった(今もまだやってる)八丈島料理の店で、アシタバの天ぷらみたいなのと一緒に飲んだら、大変美味しかった。

第28章の、「僕」とユキのハワイでの休暇のシーンは、夏の暑さと、緩やかさを思い出させ、私の懐かしい、沖縄と石垣滞在を思い出させた。



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