ツルゲーネフの『はつ恋』を真面目に読む 4

どうも、トイレに行って下を向いたら、眼鏡が外れて、便器に落ちたパッパルデッレです。そんなとき、みなさんなら、どうしますか、何を呪いますか?私はとりあえず、鴉を呪います。

ロシアにおける父性の問題。あ、つまらないことを話し始めそうになりました。問題でもなんでもねーよ、ということで、どうもペトローヴィチは、父親との関係に、若干の複雑さを感じています。それが、物語をあらぬ方向に向けていきます。

辻仁成の元妻の元アイドルが亡くなりました。別にファンでもなんでもなかったですが、それでも、1985年の教室の中では、毎度おさわがせします、が大流行していました。私は硬派だったので、そんなふしだらなドラマは見ない!とがんばっていました。実際見たことがないので、ふしだらかどうかはわかりません。おそらくはふしだらだったんでしょう。

ただ、それでもなお、そうか、そんな時代なのか、と思わざるを得ません。感傷です。別にファンでも何でもありませんでした。私は早見優の方が好きでした。荻野目洋子の方が好きでした。本田美奈子も好きでしたが、この人も早くに亡くなってしまいました。ツルゲーネフとは何の関係もありません。すみません。

「8」
さて、ここからなぜか父親がクローズアップされてきます。ペトローヴィチは、ジナイーダに恋しちゃって、勉強どころじゃない。ああ、俺も、一浪のときはそうだった。彼女がいたからじゃなくて、彼女が欲しくて勉強が手につかなかったんです。いいですね。『カラマーゾフの兄弟』が好きになれたのは、こうした情欲の問題が、わりと人生の大問題として取り上げられているからなんです。大人になれば、ささいなことだったと思い返せますが、あの当時は、それだけが人生でした。ツルゲーネフなんて、ホントどうでもよかったものです。知らなかったしね。

ま、それで、母親は、勉強しなさいよ!というくらいだったのに、父親はちょっと、ペトローヴィチに寄りそう感じでした。ペトローヴィチも、父親のことを尊敬していて、同一化したい、たぶんそう思ってる。でも、なぜか父親の方は、それを拒否するような厳しさがあり、でも時々やさしさもあり、そんなこんなでジナイーダのことを、ペトローヴィチ、お父さんにぜんぶしゃべっちゃいます。すると、父、隣に出かけます。

おっと、これは、なにか。父が隣りで何をしたのか、ということをペトローヴィチは問いません。なぜか?なぜだろうか?

その奇妙な行動については何も考えずに、隣家にペトローヴィチがいくと、請願書の作成を公爵夫人から頼まれる。お安い御用!と受けます。そのとき、ジナイーダがちょっと顔を出す。

隣の部屋のドアがほんのちょっと開いて、その隙間に、ジナイーダの顔が現れた。─蒼ざめた、もの思わしげな顔つきをして、髪は無造作に後ろへはね返してある。大きな冷ややかな両眼で、わたしをじっと見ると、またそっとドアを閉めた。

おいおいペトローヴィチ。熱病にうかされてないで、さすがに、この時のジナイーダをちょっとくらいは観察してやれよ。

「9」

ええと、この章、なんなんでしょうか。ジナイーダのオタサーの姫ぶりがいかんなく発揮された章。

とはいえ、何もわたしだけが、彼女に恋していたわけではなかった。彼女の家にやってくる男という男は、みんな彼女にのぼせあがっていたし、彼女の方では、それをみんな鎖につないで、自分の足もとに飼っていたわけなのだ。そうした男たちの胸に、あるいは希望を、あるいは不安を呼び起こしたり、こっちの気の向きよう一つで、彼らをきりきり舞いさせたりするのが(それを彼女は、人間のぶつけ合い、と呼んでいた)、彼女には面白くてまらなかったのである。

これさ、どこにでも転がっている話だよね。俺が、知ってるサークルも、これで崩壊した。崩壊っていうか、もう、一人の女をめぐって、男たちがいがみあって、まるで『東京島』のようだったよ。これはまだ、みんなが節度をもっているからいいけど、誰が悪いの?俺?

でさ、ジナイーダは、サディストでもあるんだよ。

「あ、いいことがある!さ、手を出しなさい。ピンを突っ刺してあげるから。するとあなたは、この坊ちゃんの手前恥ずかしいでしょうし、それに痛くもあるでしょう。でもね、あなたは笑って見せてちょうだい。いいこと、君子さん」

これ、ヤバくね?いじめだよ。みんながよってたかってやらせてるわけじゃないから、まあ、アレだけど、ピン刺されても笑ってろって、常軌逸してますな。

ルーシンは赤くなって、顔をそむけ、唇をかみしめたが、結局その手を差出した。彼女がピンを突っ刺すと、まさしく彼は笑い出した。……彼女も声を立てて笑いながら、そのピンをかなり深く刺しこんで、むなしくあちこち外らそうとする彼の眼を、じっと覗き込むのだった。……

おい、西郷、いい加減にしろ!と木戸ならいうかもしれない。ジナイーダ、いい加減にしろ。

そして、ツンデレなんだよ。ツンデレが1833年にすでに存在していたことにおどろくよ。いや、太古から存在していたのかもしれぬ。どうでもいいことだが。

ところがジナイーダは、猫が鼠をおもちゃにするように、相変わらずわたしを弄んでいた。急にじゃれついてきて、わたしを興奮させたり、うっとりさせたかと思うと、こんどは手の裏を返すように、わたしを突っぱなして、彼女に近寄ることも、その顔を眺めることも、できないような羽目に落としてしまう。

ところが、そんなツンデレが真に恋をしたのかもしれない、と取り巻きの5人のうちの1人詩人のマイダーノフをみて、思ったのである!

ほんとエクスクラメーションマーク多いな、露文。

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