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10年しゃっくり (1分小説)
ボクは、ハタチの頃から10年間、しゃっくりが止まらない。
友人たちは、全国の名医を紹介してくれた。民間療法を教えてくれたり、不意打ちにおどかす奴もいた。
だが、すべて不発に終わった。
そんなしゃっくり人生に、突然、終止符が打たれる日がやってきた。
勤務先近くの、工事現場の前を歩いていた時のことだった。
頭上から、鉄柱が落ちてきたのだ。
寸でのところでかわしたが、爆音は鳴り響き、ボクの横隔膜は一瞬固まり、しゃっくりは完全に止まった。
ボクは、このハプニングに深く感謝した。
週末、友人たちが全快パーティーを開いてくれた。
「奇跡が起きた」「よかったね」「おめでとう」
「ありがとう」
グラスの氷が溶け出し、中の気泡から、キュッと、しゃっくりのような音が漏れ聞こえた。
「これを飲んだら、また、ぶり返すかな?」
ボクの渾身のギャグに場は沸いた。
だが、妻だけは違った。
「あら、ぶり返しても大丈夫よ。次は、ギリギリのところに落ちるかは分からないけど」