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え、生まれたの?

さかのぼること16年前。
私はとんでもない失態をしてしまった。
今振り返っても「やらかした!」としか思えない記憶。

失態というのは、「姉の出産に立ち会えなかったこと」。

当時、姉が初めての出産のため、実家に里帰りをしていた。
私はまだ結婚前だったので、実家で暮らしていた。

姉から、「出産のときはあんたも来るんだよ」と言われていたにもかかわらず、一緒に行けなかったのだ。

原因は、私にある。

姉の出産前日の夜、私は浜松で飲み歩いていた。

この日は、サッカーJ1リーグ ジュビロ磐田のホーム開幕戦を観戦した。
しかし、結果は6失点で負けた。あまりに派手な負け方だったので、ショックを受けた私と観戦仲間は浜松の街へ出て、名古屋行き新幹線の最終の時間まで飲み歩いた。

そんな状態だったから、家に帰ってからの記憶が全くない。気が付いたら自分のベッドではなく、リビングのソファで寝ていた。しかも、コンタクトレンズは入れたままで、メイクも落としていない状態。家を出た時のユニフォーム姿のままだった。そんな私は朝の10時ごろ、やっと目を覚ました。

「いたた…」

二日酔いからくる頭の激痛を感じながら周りを見渡すと、誰もいない。私以外の家族はみんな出かけていた。臨月の姉すらいない。おかしい。

すると、携帯電話にメールが入った。父からだった。

「〇〇(姉の名前)の赤ちゃん、生まれた。女の子。」

文面を見るや否や、私は青ざめた。

「え、生まれたの?」

その瞬間だけは、二日酔いを忘れて慌てた。
病院へ行ったほうがいいかと父に返信したが、返事はない。

気落ちした私は、その場にしゃがみこんだ。
そして、そのまま両親の帰りを待った。

まもなく帰ってきた両親に怒られながら、事情を訊いた。

私が帰って来たときは、みんな寝ていたもののまだ家にいたらしい。
姉が夜中に産気づいて家族みんなに声をかけた時、私がソファで寝ていることに気が付いたそうだ。みんなで起こそうとしたが、私は一向に目を覚まさなかった。病院に向かうタイミングになっても、私が全く起きないので、諦めて私を置いて出かけたとのこと。

私なりに、姪っ子の誕生を楽しみにしていたのに、自分の失態で出産の瞬間は立ち会えなかった。残念極まりない。何より、姉に申し訳ない。

罪滅ぼしと思い、姉と姪っ子が実家にいる間は、全力で姪っ子を世話したのは言うまでもない。

そして、外での痛飲は控えるようになった。

以来、外でのお酒の失敗はない。はず。

<あとがき>
この記事は、放課後ライティング倶楽部の企画「土曜書いて」で投稿した文章を、加筆・修正したものです。
お題は「情けない話。とほほ」。
お酒の失敗で一番大きなものを、恥を忍んで書きました。流石に今はやらないけど、若い頃は失敗だらけです。(まだあるの?)
どの口が言うかって思われちゃいますが、お酒の量には気をつけましょう。

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