漫画みたいな毎日。「夏休みが、早く終わればいいのに。」
昨日は一日中雨で動物園行きを中止した。
北海道でも、大雨の影響が出ている地域もある。日本各地でも、大雨による被害が起きている。どうか日常が戻りますようにと願うばかりである。
今日は朝から快晴。「動物園行く?」と子どもたち。お盆のピークは過ぎただろうか・・・と、混んでいる可能性も頭を過るが、子どもたちは久々の動物園を楽しみにしているのだから、行ってみよう。
家にある物でお弁当にしようと、海苔巻きを作る。
海苔巻きはおむすびと並ぶ我が家の定番お弁当である。出掛け先でも、車の中でも、とにかく食べ易い。そして、お腹も満たされる。
今日は、納豆巻とおかかチーズと、梅しそ胡瓜の三種類。末娘の好きなタコさんウインナーも作ろう。あとはデザートにご近所さんからいただいた西瓜。暑さ対策に保冷剤をたっぷりと入れた保冷バッグは、肩に食い込むほど重い。荷物の中で幅をきかせるのは、いつだって食べ物である。「食べるものさえあれば、安心。」と前世で餓死したらしい私は無意識に食べ物を山ほど準備してしまう。
動物園までは、夫が仕事の合間に送迎してくれるというのでお願いする。
動物園は、車であれば約15分の距離だ。しかし、バスや地下鉄を乗り継ぎ、駅から歩くとなると1時間半はかかる。時にはそうしてまで行きたいという子どもたちの希望によって動物園に向かうこともあるが、それなりの時間と交通費がかかる。今日は楽々コースだ。
毎朝、仕事に向かう夫と子どもたちとの「いってらっしゃい」「行ってきます」「何時に帰ってくるの?!」「早く帰って来てね!」のやり取りが儀式のように執り行われるのだが、今日は、私たちが、「いってらっしゃい。」と夫に見送られる。
入園パスポートの期限を確認したところ、5月で切れていたので、年間パスポートを再度購入する。動物園は市の施設なので、中学生以下は無料である。大人も一年間で3回以上訪れれば、パスポートの方がお得なのだ。前回のパスポートは、感染症拡大で休園になったことが2回あり、その度に期限を延ばしてもらったものだったことを思い出しながら、新しいパスポートに記名をした。
正門から入り、子どもたちはざっと周りを見回し開口一番、「混んでる・・・。」と呟く。確かに、混んでいる。我が家は〈毎日が夏休み〉の状態なので、基本的には、平日の空ている時にしか動物園に来ない。それに比べれば、混んでいるということになるだろう。
まだお盆休みの家庭もあるのだろう。家族との時間を動物園で楽しむ為にきているのだろうかと様々な家族の姿を眺めながら歩く。
ベビーカーを押しながら、小さな赤ちゃんを抱っこしながら、走り回る子どもたちを追いかけながら。私にもああいう時があったな、つい最近なのに、ずっと昔みたいな気持ちになる。
懐かしいような、でも、それなりに大変だったよなぁ、と大きくなった我が家の子どもたちに視線を送る。急に居なくなることもなかったし、迷子になることもなかった。それでも、どこかで気を張っていたよな、と思い出す。
どんなことも、いつか懐かしくなるから。
わちゃわちゃ、ぐちゃぐちゃも、味わって。
見知らぬたくさんの家族に心の中で勝手にエールを送る。
しかし、人が多い。
象を観ているのか、人を観ているのか。
シロクマもアザラシも展示場に居ない。獣舎に入っているのだろうか。
ペンギンも暑さのせいか、ピクリとも動かない。
そんな日もあるよね、と動物たちを眺めていると、「13時半から飼育員によるカバの動物園ガイドが始まります。」と園内アナウンスがかかる。
カバ。
母は野生のカバと子どもたちに認定されており、我が家ではすっかり身近な存在であるカバ。そういえば、いままで、カバの動物園ガイドは聞いたことがなかった。
時間に合わせてカバの獣舎の前に行くと、既に人だかりである。
しかし、親切な初老の女性が「ここなら見えるわよ」と末娘を柵の一番前に入れてくださった。ちょうど飼育員さんが、カバに餌をあげながら、口腔内を説明している場面だった。飼育員さんはマイクを使って話をしてくれていたが、私たちの居る場所は飼育員さんの背中側だったので、よく聞こえない。
「全然、聞こえないね。ま、カバをじっくり観てよう。」と長男と二男。
カバは大きな口を開け、人参やキャベツや林檎を口いっぱい入れてもらうと、ゆっくり口を閉じて咀嚼する。
ポリポリ・・・・
ゴリゴリ・・・・
ムシャムシャ・・・
カバが野菜を食べる音だけが、私たちの耳に届く。
「食べてる音がする!」と喜ぶ末娘。「ずっと口開けっ放しで、顎関節がおかしくなんないのかな。」と心配する長男。「あぁ、歯医者さんとかで辛くなるもんねぇ。」と他人事とは思えない私。
飼育員さんが、次から次に野菜を口に入れるので、カバが咀嚼すると、口の脇からこぼれていく。「あぁ、林檎が!!!!美味しいところ!!!!」と二男。わかる。きっと餌の中でも甘く美味しいところだから、是非とも食べてもらいたい気がする。「餌の組み合わせが野菜ジュースだね。」と長男。なるほど、人参とキャベツと林檎の野菜ジュースか。やはり、味わい的に、口から溢れた林檎をなんとかするべきだと思えた。
大量の人参とキャベツ、そして、少しの林檎がカバのお腹に収まったところで、動物園ガイドは終了した。
しかし、カバはまだ餌をもらえると思って、口を開けていた。飼育員さんが、「おしまいだよ。」と手で合図をするが、目を閉じて餌を食べていたカバには見えていない。開けていても、入るのは空気ばかりなり。しかし、そんな様子も憎めない。
やっと終わりに気がついて、カバは飼育員さんと共に獣舎の中に戻っていった。「後ろ姿が、可愛い。」と子どもたち。うん、まるっとしていて、なんだか、可愛いね。でも、お母さんはスッキリした後ろ姿を目指したいのだよ。
この後、は虫類・両生類館を訪れるが、決して広くない館内は人で溢れかえっていた。カナヘビの水槽の前も渋滞していた。
「もう、出ようよ。また来よう。」と子どもたち。人垣で、殆ど観ることができないので、早々に諦めたようだった。
あっという間に夫が迎えに来てくれる時間となり、来た時と同じ正門に向かう。
「今日は、動物を観た記憶がない・・・。なんか人間ばっかり観てたきがする・・・。」と二男。
うん、確かに。そんな日もある。
人間も動物なので、〈動物園で人間という動物をたくさん観た。〉そんな感じで、手を打ってもらえませんか。
今日一日、動物園で楽しみ、明日からまた頑張ろう!って思う人たちがきっといるのだから。
お互い、ぼちぼち行きましょう。
「夏休みが終わったら、また来たいなぁ。早く夏休み、終わらないかな~。」と呟く子どもたち。
〈早く夏休みが、終わらないかな。〉
我が家の子どもたちは、〈みんなの夏休み〉が終わるのが、待ち遠しいらしい。
あなた達は、〈毎日が夏休み〉だからね。