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#NICETRIP
最終回 「NICE TRIP」
結局、僕の記憶のパズルは完成した。
全てのピースは揃わなかったけど、それでも鮮やかで、最高のパズルだ。
失くしたピースを何度も追いかけてみたし、今でも、そうしている。
それも含めて、完成なのだ。
救命救急センターでは、日々たくさんの人達が命と向き合っていて、助かる人もいれば助からない人もいた。
僕のドクターは、脳を眠らせる賭けに出た。
だから、あんなに綺麗な世界で旅をしていたんだと思う
第12話 「単純に凄い」
すぐに分かった。
お母さんだった。
その瞬間、張り詰めていた緊張の糸が切れて、心から安心して、僕は眠ったんだ。
長い間。
ようやく、自分の生命をリアルに感じとれた瞬間だった。
第11話 「ひと目で分かった」
あなたは、誰ですか?
僕がそう聞くと赤いワンピースの女性は、近くの椅子に座りながら答えた。
友達よ。
って。
どんな友達?
僕が、また書くと少し考えた様子でゆっくり答えてくれた。
小さい頃から、ずっと友達。
って。
しばらくして、喫茶店に連れてってくれた看護師の女性が部屋に入って来て、赤いワンピースの女性と何やら話した後に、僕を車椅子に乗せて検査室に連れて行った。
第10話「赤いワンピースの人」
もしかしたら、まだ旅をしていのかも知れないなと、窓に薄っすら入る朝陽をぼんやり見ながら考えてた。
このあまりにも白い壁や、ベッドのシーツ。
病院や喫茶店。まるでひとつの街が用意されてある豪華客船に乗っているのかなとか。
とにかくグルグルと、色んな可能性を頭の中で何度も予想してたんだ。
ふと、足を見ると、かなり足が細くなっている事に気づいたんだ。このままでは、どこにも行けないし、何かあっても
第9話 「止まない雨」
僕の夢のような旅の話は、とても画用紙に書いて説明するのは面倒くさいから、とにかくホットケーキがとても美味しいとだけ書いた。
先生は、外出許可を出すのを凄く悩んでいたけど、色々思い出すかも知れないからって言って喫茶店まではオッケーが出たのよ。
看護師の女性はそう言って、僕の方を見て笑っていた。
喫茶店を出て、車椅子を押されていると目の前に物凄く大きくて白い建物が見えた。
はい、着いたよ。
第8話 「ホットケーキ」
薄っすらと目を覚ますと、何かに乗ってた。
よく見ると、車椅子だった。
しかも、どこか知らない街並みをゆっくりと進んでたんだ。
誰かに後ろから押されてる。
どこかに連れて行かれてる。
ゆっくり、後ろを振り向くと優しそうな女性が居たんだ。
僕は、一瞬、立ち上がろうとしたけど、足が全く動かなかった。
まだよ。
その女性は、優しく僕に言った。
第7話 「無邪気なウィンク」
ベッドの上で、身体を縛られていた。
言葉も出ないし、自分が何者なのかも分からなくなっていた。
何をしているんだろう。
僕は、誰で、誰から何の理由で身体をベッドの上で縛られているんだろう。
不思議な気持ちと、不安が一気に襲って来て身体が震えてた。
第6話 「言葉を盗られた」
柵に右足をかけたんだ。
セーヌ川の向こう側も見てみたい一心だった。
こっちは、お洒落なカフェが並んで、人々は陽気に過ごしているんだけど、全然その景色に魅力を感じなかったんだ。
なんて言うか、知ってる世界って感じで。
でも、向こう側は、多分何も知らない世界が広がっていて、僕はそこに行くべきなんだと強く思った。
柵をもうすぐ乗り越えようとした時、向こう岸から、ひとりの老婆がこっちを見てた。
第5話 「セーヌ川」
どこかの港に漂着したんだ。
波止場って言うか。とにかく大きな船が何隻も連なってた。
貨物船の近くには、何個も何個もコンテナが積まれてあって、みんな忙しく働いてた。
ヘトヘトの身体で、その逞しい風景をぼーっと見てたら、声をかけられたんだ。
おい!お前、早く乗れ!
って。
振り向くと、スキンヘッドの強面の男の人達がこっちに迫って来たんだ。
一瞬、逃げようと思ったけど身体が全然動かなくて、
第5話 「反対側の水平線」
1度、寂しくなった気持ちは、なかなか忘れる事は出来なかったんだ。
今日は、玄米が美味しく炊けたね、とか。
廊下がいつもピカピカで、凄いね、とか。
みんなに、嬉しい言葉をかけてもらっても、なんだか満たされなかった。
ずっと万人の宿でシンプルな暮らしを続けるのも、悪くないなと思える日もあるんだけど、そうじゃない日もあって、そんな時は夜の星空を見ながら、寂しさを紛らわしてたんだ。
そんなある日
第4話 「それだけじゃダメ」
大きなお屋敷の大きな門がゆっくり開くと、広い庭が広がっていてね、整備されていると言うよりかは、丁寧に見守られているって感じの緑が広がっていたんだ。
大きな日本家屋のお屋敷の扉を開けた仙人は僕に入るように言ったんだ。
玄関は、とても広くてどこかの伝統ある旅館みたいだなぁと思ってると仙人が言ったんだ。
ここは、万人の宿である。
君も、しばらくここで働き、ここで暮らし、ここで夢を見るのじゃ。
第3話 「見えている景色」
グッドラック!の言葉を大切に胸にしまって、どんカヌーを漕いだんだ。
真っ青な空とオレンジの太陽。
水平線が無限に広がって、なんだか身体の奥の方から、物凄く元気が湧いて来た。
あまりにも元気が溢れてカヌーを漕いでいる時に、ふと思ったんだ。さっきのレニークラビッツ兄さんがくれたトロピカルジュースのおかげじゃないかって。
こんなに元気なのは。
そう言えば、とても美味しかったけど、どこか漢方のよ
第2話 「幸せの前兆」
そこは、何もない南の島だった。
なんて言うか、スタート地点って感じだった。
だからね。
カヌーを作ったんだ。
誰に言われたわけでもなく、自分の直感でね。
と言うか、誰も居なかった。
とにかく直感だった。
きっと、人生もそうだ。
自分の直感を信じるしか物事は多分、好転しないんだ。
いいも悪いもないんだ。