ぜんぶホルモンのせいだ

私がPMSでパートナーから笑顔をうばってしまったお話

自分にPMS(月経前症候群)の症状があることに、気がついていない人って、けっこういるんじゃないかなって思う。

日本では、生理っていうテーマはあんまりオープンに話されないし、学校の授業でだって、男女別にやっていたり、PMSにいたっては授業では触れらていた記憶すらない。生理や生理にまつわる体調の変化について、生きた知識を得る機会がなんかあんまりなかったなと思う。

勉強する機会がなかったから、っていうだけじゃなくて、私は本当に自分の生理について不勉強で無頓着だった。子どもを欲しいと思っていないこともあって、基礎体温をつけたこともなくて、自分の生理周期を記録しはじめたのもここ数年だ。そんなだから、自分にPMSの症状が出てるってことに気がついたのもかなり遅かった。ホントひどいもんだ。

私の症状はPMSのなかでもPMDD(月経前不快気分障害)に分類されるもので、生理前になると胸の張りや、下腹の痛みなんかにくわえて

・うつ、メンタルの落ち込み、不安感
・凶暴性が出て攻撃的になる
・不眠
・ほてり
・呼吸が浅くなって息が吸えない感覚

だいたいこんな症状がでる。

生理の周期にあてはめてみれば、すぐに気づけたはずなんだけど、自分の生理周期さえちゃんと把握していなかった私はずっと自分がこういう性質をもともと持ってる人間なんだと思ってた。
ここ1、2年で制御できないくらい症状がひどくなって、私が生理前になるとおかしくなることに一緒に住む夫が先に気がついて、指摘してくれて、それからやっと調べてPMDDっていう症状に自分があてはまることに気がついた。

書いていると本当にひどいなぁと思うけど、私は生理が、ホルモンが、こんなに自分の身体を支配してるってことを知らなかった。

今は、痛感してる。
ホルモンのパワー、半端ない。

だけど、ネットで拾った情報によると、PMS、PMDDで要治療の潜在的な患者数は200万人いるとも言われていて、そのうち治療を受けてるのは6.5%ほどしかいないというんだから、やっぱり私のように軽く考えてる人って、多いんだと思う。

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具体的に、どんな感じだったのかというと、生理1、2週間前になると、びっくりするほど小さなことに傷ついたり、イライラが止まらなくなって、特に拒絶に対して敏感になる感じだった。
自分は攻撃的なくせに、相手からの拒絶にはいつもの数倍傷つくっていう衝撃的にめんどくさい状態。
とにかく被害妄想的な思考になるんだけど、まあそれら全部が、パートナーである夫に矛先が向いてたわけで……。

例えば、夫が洗い物をしてくれて、洗ったものを食器棚にしまってくれていて、そのまま棚を開けっ放しにしていることがよくあるんだけど、家事のほとんどを平等に分担している私たちにとって、どちらかが洗い物をしてくれていたら、それは感謝すべきことで、いつもなら、
「あ、洗ってくれてる!ありがとう!」
と思って、「ありがとう!」って口に出して言うんだけど、
PMSに該当する時期は

「あ、また開けっ放しにしてる。
なんのために戸棚に扉がついてると思ってんだよ、埃が入るからだろうが、なんでそんなこともわからんのだ、たわけが」

とか、洗ってくれたことより、棚を開けっ放しにしたなんてめちゃくちゃ些細なことにフォーカスしてしまって、平常時にあらためて考えると怖すぎるんだけど、その時は自分の思考回路がおかしいことにさえ気が付けない。

他にも、SNSで、夫が私の写真をオープンにアップしないことに急に腹が立ってきて、「見せたくない女がいるからだ」とか、訳の分からないことを考え出して、本当にそのことで頭がいっぱいになって、めっちゃ泣けてきて、最終的に「フェアにしよう」と、自分がインスタにあげていた夫が写っている写真を全部消したこともある。

いや、夫はもとからそんなオープンな人間じゃないし、今さらすぎるし、もう怖すぎるんだけど、なんというか、私が体感しているPMDDの症状っていうのは、もともと持ってる性質(私の場合は神経質で心配性)を、いびつにデフォルメしてそんでもって増幅させるような感じで、その時期の私は私であるようでいて私でないというか、もう自分でもどういう経緯でそんな考え方にいきついたのか説明ができない。


怖い話はまだまだあるけれど、一番怖かったのは、それらが積み重なって、夫が、キレた、と言うか、傷つきすぎて疲れて、私に愛想をつかせてしまったことだ。

私たち夫婦は結婚して約5年、喧嘩なんてほとんどしないで平和に過ごしてきていたのが、ここ最近私の生理前になると決まって不穏なムードになっていて、プチ喧嘩を繰り返していた。それは私の不機嫌や不調がPMS、PMDDによるものだって分かっただけでは解決しなかった。

そして、ある日気がついたら、夫は私の話をもうちゃんと聞いてくれなくなっていた。
顔を見合わせた時にもいつもの笑顔を返してくれなくなっていた。
2、3回PMDDでの大大暴れが続いた後くらいだと思う。

あとから話し合って、夫がその時点ですでに我慢に我慢を重ねていて、臨界点を突破してしまっていて、そして繰り返し、とても傷ついていたことを初めて知った。
聞くまで、気が付けなかった。
私がどれだけ沈んで死んだような顔をしていても、いつも通りの笑顔で、明るい態度で接するのはかなりのスタミナと忍耐を要することだった。

だけど、私が求めていたのはいつも通りの笑顔や明るい態度じゃなくて、「辛いね」「大変だね」っていういたわりで、「元気出して」的な態度でいつも通りを要求されるのが辛かった。いつも通りなんてとうてい無理だったから、できれば一人にしておいて欲しいと思ってた。

真剣に考えて欲しいのは、そういう時期に自分がどれだけ常軌を逸しているか、正常じゃないかを自分では気づきにくいっていうことで、毎月毎月パートナーを振り回して疲弊させておきながら、辛いのは私っていう意識を持っていた。まあそのくせ病院には足が向かなかったのだから、夫の立場になって考えたら、ひどい話だ。

いつも穏やかで優しい夫がプチーンとキレてくれたおかげで、「あーこれはもう、行動で誠意見せなきゃ」と思ってやっと産婦人科を受診した私だったけど、なんとそこで左の卵巣に3,5cmの腫瘍があるのを見つけてもらった。

子宮ガン検診は1年おきに受けていたけど、それでは発見されなかった。
今のところ腫瘍マーカーでは卵巣ガンの数値は出ていないので、これからは3ヶ月に一度くらいエコー検査をうけつつ経過観察だ。

PMDD改善のためには漢方を出してもらって、朝、夕食後、寝る前の1日3回、当帰芍薬散という薬を飲んでいる。
他にもいろいろ調べて、鉄分不足が症状を重くすることが分かったので、肝臓が心配であんまりバカスカとはサプリを飲みたくない私は鉄玉子っていう南部鉄でできた玉子を入れて沸かしたお湯で黒豆茶を淹れて毎日飲むようにしている。

こんなの↓
鉄玉子

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私は挑戦していないけど、PMSの症状緩和に効果があるといわれるハーブ(チェストベリーとか)なんかもある。

あと、精製された砂糖を多く摂ることも症状を重くする。

これは本当にてきめんに月毎にシケ具合を悪化させてくることを体感しているので、特に白砂糖はなるべく控えて、糖分ははちみつや黒糖などで摂るようにしてる。


それらの甲斐あって、ここ数ヶ月、症状は少し落ち着いてきている。

だけど、夫と私のPMSをめぐる問題はまだ完全解決していなくて、今は冷静に話し合えるまでになったけど、「これは難しい問題だから、とりあえず長い目で解決策を模索していきましょう」ってことでペンディングになっている。

PMSについて、軽く考えている人がいたら、私の怖い話を読んでじっくり考えてみてほしい。本人も、何日も眠れなくて無気力で、イライラしたり、好きな人の好きなはずの横顔がいきなり憎らしくなったりして本当に辛いし、そしてその人の近くにいる人間も、めちゃくちゃ大変。
それが原因で人間関係が破綻してしまうことだってあるだろう。

PMSは周りの人、特に距離の近いひとの理解なしには乗り越えられない。自分の心と身体が暴れ馬みたいになって、乗りこなせない状態なんだから。

女子にだけ生理の話を学ばせるような教育をしていたんじゃ、ぜんぜんいいかんですよ。女子も男子もどんな性の人も、将来大切な人が生理の前になるとサイヤ人の大猿みたいになって驚愕する日がくるかもしれない。
そんな時に、「これはPMSっていう症状で、治療が必要で、彼女はホルモンの影響で今とっても大変」って理解することができれば、ふたりともにとって、とっても心強いことだから。

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