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すみれ
2024年5月22日 19:38
遥か彼方、天使たちの内緒話。 「こないだ、神さまがね…」 「ぼく、おはなをかいたんだよ!」 「…ぼくも!ぼくも、とどけたい!」 柔らかい風が背中に触れて、ふと空を見上げた。そのとき、ぐーっと私のお腹を押す、君の元気な印。愛おしさいっぱいでお腹に手をやると、「あっ、たんぽぽ」。下を向くことは悲観的なイメージがあったけれど。君と一緒に下を向いたときはいつだって、つま先で春の訪れを感じたり、
2024年5月20日 17:34
なんとなく寄った本屋さんで、なんとなく見つめた棚の隅っこ。一冊だけ妙に古びた藍色の背表紙。なんだか懐かしくて。記憶を探ってみるけど何とも結びつかなくて困った。でも、絶対に買わなきゃって想いだけはあって。愛しさで溢れた想いと一緒に、静かに手を伸ばしてみた。 帰り道、待ちきれず。たんぽぽ揺れる公園のベンチ。テイクアウトしたカフェインレスのコーヒーとそっと撫でる背表紙。 その本は、絵本のようで。
2024年2月12日 16:52
「クッキーを焼こう」 ふと思い立ったのは、午後8時。 トコトコと台所に向かい、手をきちんと洗う。洗いたてのふんわりとしたタオルで手を拭いて、小さく「よし」と呟く。 薄力粉が120g欲しい。シンク下の棚をごそごそと漁る。これでもない、あれでもないと、しなくてはいけないのは、恋人が色んな小麦粉をコレクションしているからだ。恋人は、ラーメンやパスタを麺から作る。加水率が何%だの、ひとりで楽しそ
2024年1月20日 12:46
「おじゃまします」 「すう、いらっしゃい〜」 今日は、編み物をするために紬さんのお家に。 「どうする?何を編む?」 そう尋ねられ、 「まんまるのコースターがいいです」 と答えることができ安堵。 私はよく声が詰まる。初めて、二度目まして問わず、緊張を感じると苦しくなる。でも、紬さんと話すときは不思議と大丈夫。喉が渇いて苦しくなることもないし、自分の声がちゃんと届いてる感じがする。きっ
2023年11月15日 16:58
ピンポーン。 無機質な音が来客を告げて、涙目で覗いたドアアイ。小さな窓の外、抱き締めてほしい黒髪が揺れた。 開いたドアからひょこっと顔を出して、私を見つめて。 「百合、焼きそば食べよ」 ニカっと笑う彼ー健斗ーを見て、涙がボロボロと溢れる。「大丈夫、大丈夫」って私の頭を撫でる健斗。ゆっくりと安堵が胸の奥底に着地して、やっと言えた。 「なんで…焼きそば?」 キッチンに立って、健斗は焼