すみれ
誰かと誰かの大切な日々を。紡いでいます。登場人物たちのモデルは皆、私の大切な人たちです。それぞれが紡ぐ日々に触れていただけたら嬉しいです。
「貴方と。日々を綴る、書き手でいたい。」 そう思ったのは、いつだっただろうか。“貴方”が作ってくれたチーズいっぱいのホットサンドを、ふたり頬張った日だったかもしれない。“貴方”と、思わせぶりに振り回されるMVに、ふたりため息をついたあの夜だったかも。「すみれがしたいことをしなさい」と“貴方”が背中を押してくれたあの日かもしれない。大好きな“貴方”と創り上げた物語が、“貴方”の目に留まったときかも。それとも…。 初めて、小説を書いたのは中学生の時。数学の時間、ぼーっと窓
去年の夏頃から、息をするのが難しくなって、なぜか夢中で息を止めようとしていました。眠ることも、食べることも。今まで当たり前にできていたことができなくなって、私はうつ病と診断されました。 病院に行って、お医者さんとお話をして、薬をもらって。それが日常に取り入れられたとき、初めは戸惑って余計に自分を傷つけてしまったけれど。今では慣れたもので、かわいいお薬手帳を相棒にドライブ感覚で通院できるようになりました。飲まなきゃいけなかった薬も、飲まなくても大丈夫に変わってきました。た
遥か彼方、天使たちの内緒話。 「こないだ、神さまがね…」 「ぼく、おはなをかいたんだよ!」 「…ぼくも!ぼくも、とどけたい!」 柔らかい風が背中に触れて、ふと空を見上げた。そのとき、ぐーっと私のお腹を押す、君の元気な印。愛おしさいっぱいでお腹に手をやると、「あっ、たんぽぽ」。下を向くことは悲観的なイメージがあったけれど。君と一緒に下を向いたときはいつだって、つま先で春の訪れを感じたり、水溜りのなかの夕暮れに気づいたりして。ふふって笑ってしまうことばかり。君と過ごす
なんとなく寄った本屋さんで、なんとなく見つめた棚の隅っこ。一冊だけ妙に古びた藍色の背表紙。なんだか懐かしくて。記憶を探ってみるけど何とも結びつかなくて困った。でも、絶対に買わなきゃって想いだけはあって。愛しさで溢れた想いと一緒に、静かに手を伸ばしてみた。 帰り道、待ちきれず。たんぽぽ揺れる公園のベンチ。テイクアウトしたカフェインレスのコーヒーとそっと撫でる背表紙。 その本は、絵本のようで。表紙には小さな翼のイラストが二つ描かれていた。やっぱり、どこか恋しくて。愛おしい
「クッキーを焼こう」 ふと思い立ったのは、午後8時。 トコトコと台所に向かい、手をきちんと洗う。洗いたてのふんわりとしたタオルで手を拭いて、小さく「よし」と呟く。 薄力粉が120g欲しい。シンク下の棚をごそごそと漁る。これでもない、あれでもないと、しなくてはいけないのは、恋人が色んな小麦粉をコレクションしているからだ。恋人は、ラーメンやパスタを麺から作る。加水率が何%だの、ひとりで楽しそうに何時間もかけて作る。ラーメンのときは、鍋に色んな材料を放り込んでコトコトと煮
「おじゃまします」 「すう、いらっしゃい〜」 今日は、編み物をするために紬さんのお家に。 「どうする?何を編む?」 そう尋ねられ、 「まんまるのコースターがいいです」 と答えることができ安堵。 私はよく声が詰まる。初めて、二度目まして問わず、緊張を感じると苦しくなる。でも、紬さんと話すときは不思議と大丈夫。喉が渇いて苦しくなることもないし、自分の声がちゃんと届いてる感じがする。きっとそれは、紬さんが私の目をしっかりと見つめて、微かな声でさえひとつひとつ丁寧に拾
ピンポーン。 無機質な音が来客を告げて、涙目で覗いたドアアイ。小さな窓の外、抱き締めてほしい黒髪が揺れた。 開いたドアからひょこっと顔を出して、私を見つめて。 「百合、焼きそば食べよ」 ニカっと笑う彼ー健斗ーを見て、涙がボロボロと溢れる。「大丈夫、大丈夫」って私の頭を撫でる健斗。ゆっくりと安堵が胸の奥底に着地して、やっと言えた。 「なんで…焼きそば?」 キッチンに立って、健斗は焼きそばを作り始めた。 キャベツを千切りにしていく。トントントンって音が心地よく
あのね、今日あなたがいない間に落花生を茹でたの。隣のおばさんがね、落花生が採れたからってボウルいっぱいにくれたの。最初ね、小さいザルを持っていったら「そんな小さいのじゃ入らないよ、もっと大きいのにしておいで」って笑われちゃった。だから今度はさっきよりも大きめなボウルを用意してね。そしたら、おばさんが「山盛りにしちゃうね」っていっぱいくれてね!ボウルから落ちちゃうくらいだったのよ。 茹でて食べるってことだけ知ってたの。でもよくわからないから「Hey,Siri 落花生の茹で方
金木犀の匂いをすーっと抱き締めたとき、小学校の校庭がぼんやりと。思えば、学校は大嫌いで、教師なんかもっと大嫌いで。なのに私は学校の先生になった。きっかけになった先生の背中を思い出して、くすり。理科室に吹き抜ける朝の風とニカッとする先生を思い出す。そういえば、あの人も理科の先生だ…先生との共通点を見つけて金木犀がまたゆらり。 金木犀の匂いを身体いっぱいに取り込んだ私は、ぼーっと空を眺める。南のほうを見ていたくて、方位磁針で南を探してみたりする。なぜ南?今度ははっきりと、ぎ
午前九時。雨音が窓の外から聞こえてきて、傘がないことに気づいた。それを「ま、いっか」のひとことで片付け、瞼に蜜柑色のアイシャドウを纏わせる。少しの間、街で暮らすことになった。はじめての街暮らし。人の多さや聳えるビルに、毎日ドキドキさせられる。少しでも見たことのある街並みにしたくて、今私は、冒険に出かける支度をしている。 午前十時。アスファルトには、ほんのりと湿り気が残っている。もう雨はどこかへ行ったようで、「傘はいらないよ」と囁かれた気がした。 耳元の“花占い”が、私
“戯れ”。 国語のことを勉強だと思うことなく。言葉たちとの“戯れ”だと、ずっとそう思って歩いて来れたのは紛れもなく母のおかげだと感じる私を、湿度80%の風が追い抜いて行きました。肌に張り付くじめっとした質感も、言葉にしてしまえば、案外カラッとするもので。紙の上では、再現度も、載せる想いの量も…全て私に託されているのだと改めて感じます。託されているかと言っても、なんでも思い通りになるわけではないのが、書くことの面白さで。言葉たちに試されているように感じることが多いのが現状で
大好きなみんなへ。 「なんだがお日さんぼやっとして来たな」と宮沢賢治の声が聞こえてきそうな十六時半。洗濯物をクローゼットにしまおうとしたその刹那。視線は、大切にしているみんなからの手紙の方へ。遠く離れていても、書き記された言の葉たちはみんなの声をそれはそれは丁寧に届けてくれます。この瞬間が私はとても好きで、だからこそ言葉と戯れ続ける道を歩いているのだと思います。…みんなへの想いが溢れて仕方ないので今日は、のんびりとみんなへの想いを綴っていきます。 私はとても元気に楽しく