黒潮の流れを感じ海を臨む山/外房・烏場山_毎日新聞
毎日新聞朝刊に隔月連載している「わくわく山歩き」(2019年1月~)は、日本の山のなかから毎回1座選び、紹介するエッセイです。その山にまつわる私個人の思い出や、登ったときの印象も織り込んであります。
noteでは、各回の編集後記のようなもの、本編の紹介を記していきます。
2019年2月、2回目の「わくわく山歩き」(毎日新聞朝刊)に掲載したのは、房総にある烏場山でした。照葉樹林が広がる山で、とくにマテバシイの純林が美しいです。
私が烏場山に通ったのは、20年近く前のこと。明け方の御宿で波乗りをして、2ラウンド目に入らない日は、和田浦まで南下して烏場山を走っていました。トレイルランニングという言葉は、いまほど馴染みはなかったかもしれない時代です。
海と山がとても近いことが房総の山の特徴だと思います。海で遊んで、山でも遊べる、楽しい世界です。
だから、記事の書きだしも烏場山のそびえる海岸流れる黒潮の話です。こと外房は外洋の力強さと、広がりがある、大好きな海です。
一方で、この10年ほど日本海も近しい存在になりました。日本海は、房総の海とはまったく異なります。色がちがう、魚がちがう、空気感がちがう。
この新聞記事を書いた当時、白馬・小谷・富山で過ごしていました。早朝、朝ご飯をほおばりながら、日本海を眺めて車を走らせ、山やスキー場へ向かい、登っては滑っていました。雪の遊びを終えると、ふたたび日本海を眺める。朝の色、夜の色、春っぽい柔らかい色、冬のどんよりした色。房総とは異なる海であっても、海を眺める日々はいとおしいです。
ところで同県に生まれ育った同世代に、世界的に名を残したクライマー、山野井泰史さんがいます。最近、泰史さんの半生を描いた映画「人生クライマー」が上映されたので、山に登らない方もご存知かもしれません。私もいちど、舞台挨拶に伺いました。
彼のことも数行書きました。
親しくなるのは30半ばからですが、高校生時代に、千葉市のど真ん中にある石垣や橋脚の跡を泰史さんも登っていた話は、当時から聞いていました。私たち千葉女子高山岳部も、その隣の親しい友人達がいた千葉高山岳部も同じようなところを登っていたからです。けれど、石垣をトラバースするのが私たちだったら、泰史さんはどんどん傾斜を増しながら上へ上へと登っていたというから、まったく……。こんなのは彼の高校時代の逸話のほんのひとつです。
日本は島国ゆえ、海が望める山があちこちにあります。そんな山を、これからも歩いたり、攀じ登ったり、滑ったりしたいです。
新聞記事(本編)「烏場山 黒潮の眺望楽しむ」は、コチラで読んでいただけます。
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