教科書の世界から、働いてみて気づくこと。一人の精神保健福祉士の体験から。」
こんにちは、すまです。
いつもご覧いただきありがとうございます。
今日は「教科書の世界から、働いてみて気づくこと」と題して少しシェアします。
精神保健福祉士を取得する際、精神保健福祉の分野に関する知識は学校でまず勉強します。適切な表現ではないかもしれませんが医療、福祉、心理学などを広く浅く学びます。
実体験として精神保健福祉士として働くために役立つ知識や技術は、現場に出て初めて分かることが殆どです。
社会人としてこの精神保健福祉の分野に従事した当初は、学校で勉強したことなんて本当役に立たないと思っていました。(学校の先生、そんなワーカーに関わられた皆さんごめんなさい)
表面的な例えですが、以前社会資源で紹介した「自立支援医療」一つとってもみてもそうです。
地域によってその受給者証の様式は異なっていたりします。
患者さんに紹介する際に、受給者証がどのような形状をしているか説明することがあります。
教科書には実物は載っていません。
実際に現場で目にしてみると県や市によっても様式が違ったりします。全国共通の機能ではあるのですが..。
つまり、患者さんにどのようなものかをイメージしていただく際には、お住まいの地域に合わせた案内の仕方が必要になってきたりします。
患者さんは必ずしも、所属機関のある地域にお住まいとは限りません。近隣の市や都道府県からも来院されることがあります。
制度の申請窓口となるのは市区町村ですが、その窓口の課の名前も地域によって異なります。
ですから、紹介相手への配慮をするのであれば、お住まいの地域に合わせた説明をしなければなりません。
こうした情報は現地で蓄積していくしかないわけです。
同じ様式に統一してもらいたいですけどね..。何で違うんだろう?苦笑(心の声)
そんなふうに
「全然勉強してきたこと関係ないじゃないか...」
と新人すまは思ってました。
しかしながら、1年、また1年と経験を積んでいくうち、少しずつ。
ようやく学生時代に学んでいたことはこの仕事をしていく上での価値や倫理、理論だったことを感じ始めます。
当時と今、それぞれ点だったものが、何かの拍子に時々線に見える瞬間があるのです。
そして、それらは先人達の実践から生み出され言語化されたものであると同時に、現在進行形で発展途上。それが今後も最適解であるとは限らないということにも気づき始めました。
改めてそれらを吟味しながら都度選択やアップデートが必要です。
すま自身が働く中で理解し始めたことの一つに精神疾患のメカニズムに関する捉え方についてがあります。
専門職の方にとっては当たり前かもしれませんが、きっとそうでない方にとっては案外盲点だったりすると思うのですよね。
精神科の疾患として認定されているものは複数あります。
※現在の医学において、殆どの疾患が前提として疾患の原因は複数の要素に伴って発症すると考えられていますが、はっきり分かってはいません。
発症の原因はさておき、例えば精神疾患の代表格として紹介されることの多い統合失調症の症状がどのようなメカニズムで起きるのか。
説明する際によく言われるのが「ドーパミン仮説」と呼ばれるものです。
人は脳から様々な神経伝達物質が分泌され、生命活動をしています。
その神経伝達物質の一つにドーパミンという物質があります。
統合失調症の症状は、何らかの原因でドーパミンが過剰に分泌され過ぎてしまうことで現れていると言われています。
あるいは、うつ病。
こちらは「セロトニン・ノルアドレナリン仮説」と呼ばれるもので説明されています。この仮説の中では何らかの理由でセロトニンやノルアドレナリンと言った神経伝達物質がうまく分泌されずに症状が現れると言われています。
学生時代も「ドーパミン仮説」などを単語としては知っていましたしシナプスとドーパミン、そしてお薬がどう作用するのかという絵を教科書で目にすることもありました。
ですが正直”仮説”ということの意味がよく分かっていませんでした。
何で、仮説なんだろうと思っていたのです。
仮説なんだから、そのままだろうって話なんですが。。
賢くなかったすまは、「仮説」という単語意味は知ってるのですが今一掴めていませんでした。
この仕事について何年かして初めて、精神科の疾患の多くがまだまだ医学的に不明なことも多く、現在の治療法に関してもそうした中で"仮説"をもとに治療法が謳われている。
自分が患者さんやご家族に説明をさせていただく機会を通じて、自分自身が伝える立場であるために勉強していく中で知っていきました。
すまの中で"治療が仮説に基づいて行われてるものだ"世界がなかったんです。
真実の元に治療は確立されていると考えていたことに気づきました。
なので、家族教室や患者さんのプログラムで疾病に関しての教育的プログラムを行い説明する際は、断定ではなく、あくまで仮説として説明をします。
精神疾患が5大疾病に認定され、メディアでメンタルヘルスに触れる社会的なニュースがある度に相談窓口や受診の勧めがあります。
しかしながら、実際のところ精神科の疾患の症状のメカニズムは未知数なことも多いわけです。
もっといえば精神科に限らずに、真実に基づいて定められている他の疾患への治療だって、どれだけ真実と見えたとしても、本当のことなんて誰にも分からないんだよな、と考えるようになりました。
よく医療ドラマなんかでも「症例通りの患者さんなんていない」なんていうセリフを聞きますが本当そうです。
そうした中では今考えられている疾患のメカニズムや、それに対する治療法やついて自分なりに理解を深めた上で、治療に参加していくことは大切だと感じました。
しかしながら、それが簡単ではないことも感じるようになりました。
病院にいる時は、もちろん医師を中心とした治療計画があるわけですが、その中でソーシャルワーカーとして自分なりの見立てを持っていることも大事だと思うようになってきました。
精神保健福祉士法上で精神保健福祉士は
「医師の指示を受けなければならない」
ではなく
「医師の指導を受けなければならない」
と定められています。
このことも現場にいて初めてそのジレンマを感じるようになり、自分毎になりました。
働き始めたばかりの皆さんへ伝えたいのは、勉強したことはすぐに役立つと感じないこともあります。ですが、続けていくとそのうち思考を深めるヒントをくれるようにもなっていきます。
これは、患者さんを見ていても感じることです。
例えば病棟で疾病教育を行ったとします。
「ふむふむ」と頷く人もいれば、そうならない人もいます。
数年後、精神科デイケアで同じような機会がありました。すごい腑に落ちる人がいます。
そして思い出します。
「あれ、こんな話を入院中も聞いたぞ。あれは意味がないと思っていたけど大事な話だったんだな。今なら分かる。あの時に腑に落ちていればな..」
これは実際にすまがデイケアにいた頃に患者さんからシェアしてもらったことです。
今、すま自身もそのことに多く気づけるフェーズになってきてるのだと思っています。
そんなことを考えながら、日々業務を通して世界を見るようになってきました。そしてまだまだ見えてないこともある。そんなことを頭の中でぐるぐるさせている、一人の精神保健福祉士であるすまの話でした。
今日もお読みいただきありがとうございます。