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一人旅の良さを3000文字で語らせてくれ
「旅に出てよかったことってなに?」
「旅に出てなにか変わったことある?」
旅から帰った後、友人に聞かれることで多い質問だ。
僕自身、世界一周旅行を2回して(細かく言うと3回)、トータルで約2年間、40カ国200都市を一人でふらふらと放浪した。
きちんとした目的なんてなくて、ただ「いろんなところで暮らしてみたかった」それだけ。そんなふわっとした動機でも、旅に出てよかったのだろうかと振り返る。
答えはいつもひとつ。「本当に良かった」。
むしろこの言葉しかでてこない。
むりやりデメリットをあげるならば、20代で旅の資金としてトータル500万近くを使ったので、30代になったいま、「資産運用にまわせる額がたりねぇ...」といった愚痴が出るくらいである。まぁ、「今から頑張って稼げよ」というツッコミ一つで解決する問題ではあるけれど。
あとは、旅の途中でアゴを粉砕骨折したので、口が半分くらいしか空かない微妙な後遺症が残ったとか、それくらいかな。
旅に出て良かったことって本当にたくさんあるんだけど、今日は3つだけ、書き留めておきたいと思う。
1.幸せの感度が上がり、幸せを感じる基準が下がった
2.何歳からでも旅人になれると知った
3.自分だけの時間がたっぷりあった
以下、分解していこうと思う。
1.幸せの感度が上がり、幸せを感じる基準が下がった
最後の旅から帰ってきて、もう3年が経つ。それでも今も、旅の効用は続いている。おそらくこの効用は衰えることなく、死ぬまで続きそうだ。
今のぼくの状況を描写するとこんな感じ。
東京にある家に暮らしている。机と椅子があって、横には陽がさす窓がある。暗くなったらスイッチひとつでライトが付く。パソコンとモニターをつないで、キーボードで文字を打っている。ベッドには温かい毛布があり、冷蔵庫には冷えたビールが常備されている。今は電気ポットで温めた白湯を飲みながら、noteを書いている。
この状況、100点。
もうありきたりで聞き飽きたことかもしれないけれど、日本での暮らしやすさが半端ではないことに、旅に出ると気づく。人は慣れると日常になるから「日常生活に慣れる」という言葉は変かもしれないけれど、日常生活がスタンダードになると、幸せの基準は「日常生活よりもちょっと上」になる。いつのまにか当たり前のことは当たり前として消費されてしまう。
海外に出ると、ほとんどの国で不便を味わう。(当時貧乏旅をしていたからという前提は大いにあるけれど)
定刻通りにやってこない電車
ダニだらけの不潔なベッド
一向にお湯が出てこないシャワー(水圧もスーパー弱い)
不衛生な食事情
治安の悪さ
あらゆるサービス業の接客の悪さ (......笑)
いや、「日本でもそういう所あるよ!」「海外でも暮らしやすいところあるよ!」「お前がチョイスした宿が微妙なんだよ!」とつっこみどころはおおいのは分かる。
でももし旅に出なければ、こういう世界があることを肌で感じられなかった。百聞は一見にしかず。人から聞いただけでは何も学べない。
不便を楽しむマインドや、足るを知るマインドを持っていないと旅は楽しめない。この経験をしていると、あらゆることに対して幸せを噛みしめられるようになった。
「生きてるだけで丸儲け」なんて楽観的な言葉はいささか乱暴かもしれないけれど、「自分が快適だと思える環境で、ただ生きている」というだけで、毎日充足感がある。
そして充足感に溢れているのに慣れてしまうと、それはそれで成長が止まってしまうから、少しばかりの不足や渇望も大事にしなきゃと思えるようになった。
ないものを求めてさまよったりすることなく、いまあるものを見つめて暮らすようになった。幸せは築くのではなく、気づくものなのだと旅に出てようやく腹に落ちた。
2.何歳からでも旅人になれると知った
最初の世界一周旅行は、大学卒業をしてすぐの22歳のころだった。当時はまだ新卒一括採用時代。(あれ、いまはちがうよね?)新卒のカードを捨てるなんてありえないと多くの友人に言われた。旅に出たかったからアルバイトでお金を稼いだ。就職活動なんて一回もしなかった。リクルートスーツも買わなかったし、ESが何かを知らずに卒業した。
当時のぼくは、「こういう長旅に出る経験は、早いほうがいい。年取ったら出来なくなっちゃうんだから」と思っていた。その思考がすでに凝り固まっていたんだと気づいたのは、旅に出てからだ。
ゲストハウスや観光地、食堂やバス、飛行機など、旅人との出会いは無数にある。その中で心底びっくりしたのは「あれ、ぼくより年上の方達ばっかりじゃないか!」と。
大学生で休学して世界一周旅行してます!みたいな人たちばかりだと思っていた。むしろぼくは大学を卒業してから行ったから、「どうせ現役大学生ばっかりだろ」と思っていた。でも違った。20代後半や30代、そして40代以降の旅人にもたくさん出会った。
アタリマエのことだけど、「あぁ、そうか旅はいつでも出れるんだ」と思った。何を急いでいたんだろう。いつでも出れるじゃないか。
新卒のカードを捨てるとかかっこいいことをいいながら、年齢のことを何よりも気にしていたじゃないか。
スペインで巡礼をしていたとき、60代の男性に出会った。その男性は「いま、娘が世界一周をしていて、写真を見ていたら、私も旅をしたくなってね」と言った。
そうだよな、いつでもでれるんだよな...と思った。(余談だけどよく聞くとその娘さんはタイで会っていた。)
旅に限らず、ほとんどのことは年齢制限がない。自分が勝手に決めているだけだ。
もう年だし...
今からやっても遅いし...
どうせ周りは若い人ばっかりだし恥ずかしい...
なんて思う必要はない。誰もが最初は初心者で、今この瞬間が人生で一番若い日なんだ。
3.自分だけの時間がたっぷりあった
ひとり旅は暇だ。退屈な時間も多い。なぜなら、ずっと一人だから。でも一人の時間を愛せるようになってから、本当の旅がはじまる。
24時間、365日全てが、自分の時間。こんな幸せなことはない。日本に帰って仕事をするようになると、一人旅のゴールデンタイムが本当に愛おしく感じる。あんなに贅沢に暇を満喫できたのは、とても良かった。
自分の過去を振り返り、今を生き、未来を想う。こんなにも自分の人生を見つめた期間ははじめてだった。これが「人生の棚卸し」ってやつだろうか。
ぼくはどんなことが好きで、なにが許せなくて、どんな生き方をしたいのか。ひたすらノートに書いて思い描いた。移動中のバスで、ふらっと入ったカフェで、ゲストハウスのベッドの上で、異国の知らない風を浴びながら歩く道で。
帰国後は、しゃかりきに働いた。人間はなぜかバランスを取ろうとする。働きすぎると人は自由を求めるし、自由になりすぎると、働きたくなってくる。
ある人は「自由を求めて旅立って、不自由を発見して帰ってくるのだ」と言った。
そのとおりでしかない。
結論:旅はいい。
旅の良さはきっと、人によって違う。
その土地に立って、現地の風を浴びたとき、何を感じ、何を思うか。
旅って本当にいい。そして何度でも言いたい。
何歳からでも旅人になれる。
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