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紡ぐ

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自分の書いた、少し長めの文章
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#やさしさにふれて

「あなたからなら何を貰っても嬉しいよ」なんて絶対に言わないと思っていた。

「あなたからなら何を貰っても嬉しいよ」なんて絶対に言わないと思っていた。

束になった広告に、白い封筒が挟まっていた。

80円切手が一枚と、2円の切手が二枚。

それを見て、今は84円だったかと思い出す。

手紙や葉書を出すことが少なくなった今日では、新しく変わった郵送料金に中々慣れないもので。手紙を書く度にいくらだったかと首をかしげている。

届いた封筒は真ん中が少し膨らんでいた。
そこに小さな生き物が入っているかのように、私はそれをそっと抱えてテーブルに置いた。

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舌打ちから「想像力」を学んだ話

舌打ちから「想像力」を学んだ話

「チッ」

舌打ちが聞こえる。
それは明らかに私に向けられたものだった。
普段なら気にしながらも「ままあることよ」と流せるのだが、そのときばかりはできなかった。なんたって原因が分かっているから。
罪悪感に潰されそうになりながら、私は電車に乗り込んだ。

電車は苦手だ。
特に朝なんて悪意が飛び交うように見える。
大勢が詰まった箱の中で多くの思惑が絡み合う感じがする。
絡まってもつれて、解こうと強引に

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