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紡ぐ

8
自分の書いた、少し長めの文章
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2020年12月の記事一覧

「あなたからなら何を貰っても嬉しいよ」なんて絶対に言わないと思っていた。

「あなたからなら何を貰っても嬉しいよ」なんて絶対に言わないと思っていた。

束になった広告に、白い封筒が挟まっていた。

80円切手が一枚と、2円の切手が二枚。

それを見て、今は84円だったかと思い出す。

手紙や葉書を出すことが少なくなった今日では、新しく変わった郵送料金に中々慣れないもので。手紙を書く度にいくらだったかと首をかしげている。

届いた封筒は真ん中が少し膨らんでいた。
そこに小さな生き物が入っているかのように、私はそれをそっと抱えてテーブルに置いた。

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人生で初めて泣かされた本。

人生で初めて泣かされた本。

人生で初めて泣かされた本を覚えているだろうか。

「泣く」と言っても、ほろりと涙が零れるような綺麗なものではない。

抑えることもできずに顔から色んな液体が溢れ出す、いわゆる「号泣」だ。

そこがどこであっても、いつであろうとお構い無しに泣かせてきた本を覚えているだろうか。

その本は、その著者にしては珍しい終わり方をする。
落ち着いて考えれば「いつもと少し違う感じがするな」と思うようになるのだが

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