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孤独な冬の匂いを

2年半、経てば癒えると思った。 一緒に居た時間を思い出で埋めれば過去になると思った。 でも、清々しく凍てつくような空気は私をあの頃に引き戻す。いつも孤独な冬の匂いを身に纏った彼を思い出さずにはいられない。 . 山奥のペンションでただ黙々とステーキを頬張り微笑みあうあの時間、韓国ドラマの甘酸っぱい場面を見ながら上がった口角を手で押さえるあの時間、お昼に起きてお気に入りのパン屋にのらりくらりと向かうあの時間、深夜にラーメンを食べた後4DXを観にいくあの時間。 . 幸福以

    • 運命なんて浮かれた言葉で

      『今度転勤なるんだ。』 兄の赴任先はあの人が住む街だった。 あの人とは、部活が同じだったとか就職先の系列が同じだとか共通点が多かった。別れていなければ『運命』だなんて、浮かれた言葉でまとめていたのかもしれない。 . 両親は新しい赴任先に旅行に行こうと意気込んでいて、私もついて行った。あの人が選んだ道を直接見たくて。 ずっと前に教えてもらった、星の名前がついたアーケード街をひたすら歩いた。一緒に行きたいねって言って、叶うことがなかったあのアーケード。あの人の住む世界を知

      • 深夜に赤信号を待つ人生

        AM2:00ほろ酔いで散歩をする。田舎なので、人通りはなく車もほとんど来ない。そんな中だったら、信号が赤でも渡ってしまうという人が多い気がする。 でも、私は待ってしまう。いつも変に真面目なところがあるのだ。 ・新入職員へ向けたコメントを熟考しすぎて、40分間コメントを作る(22時に帰宅) ・有給に入る前に周囲に残しているメモ書きの口調が雑になっていないか気になって書き直す ・友達との約束の5分前には待ち合わせ場所に行くようにする など 真面目、というより気を遣いすぎる性

        • よくある愛みたいな話

          彼と離れて、2年が経った。  わたあめみたいな薄ピンク色の空の下、穏やかにさざめく海が2人で見た最後の景色だった。あの時、手を繋ぎながらみつめた彼の愛おしそうな眼は本当だったのだろうか。 . . 気持ちが、変わったらしかった。 . 私と彼の間に、そんなこと起こり得ないと本気で思っていた。これほど、失恋の歌も文学も溢れているのに、永遠に続くことをまっすぐに信じていたのだ。心が空っぽというより、心の一部が抉られたような喪失感。この感情もたしか誰かが歌っていたな。そういう、共