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よくある愛みたいな話

彼と離れて、2年が経った。 

わたあめみたいな薄ピンク色の空の下、穏やかにさざめく海が2人で見た最後の景色だった。あの時、手を繋ぎながらみつめた彼の愛おしそうな眼は本当だったのだろうか。
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気持ちが、変わったらしかった。
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私と彼の間に、そんなこと起こり得ないと本気で思っていた。これほど、失恋の歌も文学も溢れているのに、永遠に続くことをまっすぐに信じていたのだ。心が空っぽというより、心の一部が抉られたような喪失感。この感情もたしか誰かが歌っていたな。そういう、共感する表現物を見つけるたびに、愛は誰にでもある感情で、特別ではない、よくある話なのだと突きつけられているように感じた。

でもね、『父』『母』や『可愛らしい』という言葉で伝える聡明さや、お店の人に必ず『ありがとうございます』と伝える優しさや、好きなジブリは『風立ちぬ』と答える感受性の豊かさや、大量の那須でのお土産を嬉しそうに説明する可愛らしさが、確かに全部愛だった。私にとっては特別な、愛だった。

あの時、最後に見た彼の眼も本当だったのだろう。あの一瞬は、きっと。

私が愛したあの人が、他の誰かからも同じように愛されるように私は想う。
それが私の、特別への向き合い方。
あの人もいつか、愛の特別さに気付けますように。ありがとう、ずっと無事でね。
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