#128着物から見る女性の一生-女性の着物の展示を見て
先日、八尾市立歴史民俗資料館の特別展「女の装い」を見てきました。著者も一応河内木綿の研究などもしているため、着物には一定の関心があるので観覧してきました。
今回の特別展は、女性の装いをテーマに、誕生からその後の成長の過程を追って女性の着物を展示しています。展示内容としては、誕生や婚礼という、いわば「ハレ」に関わる衣装がいくつも展示してあり、非常に華やかな展覧会でした。
館内の写真が取れないので、なかなか伝わりにくいかもしれませんが、展示内容いついてご紹介したいと思います。
女性の装いをテーマとしているため、今回の展示は館の所在する中河内だけでなく、北河内、南河内と各所から関係する資料を借用してきて、旧河内国の範囲で網羅的に展示しています。 展示は、まずは生まれてすぐに着る産着から展示が始まっています。産着については、白ないし生成り、あるいは淡い色のものという、著者の少ない子育ての経験では思い込んでいましたが、赤を中心としたものが用いられていることに驚きました。解説によると、赤は邪気を払う色とされており、子どもの健康のために赤い産着を着せることが常態となっていたとのことでした。関連するサイトのURLを下記に記します。
小さい子供は成長が著しく早いため、現在でも買い替えの愛来るが非常に速いです。近世では着物は非常に高価な代物であり、質屋の質入れ品を記載した帳面などを見ると、質入れ品のほとんどが着物になっています。そのように着物が高価な時代には、子どものための着物には長く着るための工夫が施されています。例えば肩上げや裾上げです。現在でも購入したズボンで丈が合わなかった際には裾上げをして長さを調整することがありますが、子どもの着物の場合、裾の長さを織り上げて縫製して裾の長さを調整するだけではなく、身幅(肩幅)についても内側に織り込んで縫製して長さを調整し、成長に合わせて肩幅が広くなった際には織り込んだ部分を元に戻して対応出来るようになっていました。裾上げは現代の洋服でもありますが、肩上げについては初めて知ったので、非常に興味深かったです。
また、子ども用の一幅の着物の場合、背中の中央に縫い目が出来ません。そのため、背中の中央にわざと縫い目を付けるという着物も展示されていました。これは、背中の中央に縫い目を作ることによって、先程の赤い布を使用することと同様に、背中から邪気が入って来ないようするという効果が信じられていたことによります。これは三重県志摩地方の海女の衣装に五芒星や九字紋、いわゆるドーマンセーマンの文様を衣装や持ち物などに縫い付けることで、魔除けの効果があり、海での安全を祈願する民俗として知られているものと近いものだと思われます。
成長してからでは、大きな人生儀礼としては婚姻があります。現在も結婚式で和装の場合は新婦が振袖を着て登場します。今回の特別展でも、いくつかの振袖が展示されていました。振袖は婚礼の衣装として非常に華やかなものですが、めでたい人生儀礼であるので、着物の柄にも一定のパターンがあります。鶴や亀、松・竹・梅、宝尽くしなどが多く登場します。
振袖は、未婚の女性が着る着物ですので、結婚後には袖を切って留袖でとして、そのまま活用し続けます。留袖の袖も、そのまま切ったもの、つまり袖の下側の角が九〇度となっているものは著者もよく見ていましたが、下側の角が丸く切られた「元禄袖」と呼ばれるものを不勉強で知りませんでいた。元禄袖は、元禄時代の小袖のの袖を模したもので、日清・日露戦後のころに流行し、元禄復古の流れの中で元禄袖と名付けられたものだそうです。この点は近代の着物の流行として勉強になりました。
今回の展示では、一人の女性から寄贈いただいた着物を、着用した年齢順に並べてあるコーナーがありました。一人の人物の衣装を追うということがなかかなないため、一人の女性の成長をあらわした展示として、こちらも非常に興味深かったです。
この特別展は、二〇二三年一〇月二三日(月)まで開催されておりますので、もしご興味がありました観覧いただければと思います。館のURLも下記に記しておきますのでご参照ください。