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理想のマーケティング組織とは?
1.はじめに
webマーケティング担当者として、事業会社で働く日々の中で、「理想のマーケティング組織」とはどんなものなのか?気になっていました。
自分が考える「理想のマーケティング組織」とは顧客へのバリューを最大化させ、事業の売上トップラインを最大限引き上げる組織です。
この問いに適切に答える為には、考慮すべき観点が複数あるように感じています。
考慮すべき観点を具体的に言うと、事業フェーズ(創業期・成長期・安定期・拡大期)、
ビジネスモデル(B to B、B to C、B to B to C等)、製品普及率の状況、そして市場特性などでしょうか。
今回はマーケティング組織作りに必要な要素を洗い出しつつ、「理想のマーケティング組織」について考えていきたいと思います。
2.機能別起点のマーケティング組織
まずは機能別起点でマーケティング組織を
整理してみたいと思います。
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マーケティング4Pのようなフレームワークをベースに考えると、プロダクトもマーケティング組織に含まれるように思います。
機能別組織のメリット・デメリット
識学の記事にメリット・デメリットがまとまっていました。
私が現在働いている組織は機能別組織である為、個人的な印象としても専門的なスキルを培いやすいと思っています。
加えてデメリットとして記載されている「問題が生じた時に責任の所在を突き止めにくい」はその通りだと思いました。
実際の体験としても、ブランド・プロダクト全体視点で問題を整理する人がいない為に、
複数の機能部署をまたぐプロジェクトは責任所在が曖昧になりやすい。
また、どこの機能部署が拾うのか不明瞭なタスクが発生したとき、担当者アサインに時間を要してしまう等の懸念もありました。
リサーチや分析機能
上記図解に入れていませんが、悩ましいと感じたのはリサーチや分析機能をどこの組織がもつのか?という点です。
例えば、安定期・拡大期にある事業の場合、
マーケティングリサーチのチームが設置される場合があると思います。
3.機能と顧客認識の変化
続いて、マーケティング組織がもつ機能と
顧客認識の変化が、どのように関係しているか?まとめてみました。
「顧客認識の変化」とはAIDMAのような購買ファネル上の顧客の態度変容の流れを指しています。
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私が所属する獲得広告チームは新規顧客獲得がメインミッションですが、上記図解を使って俯瞰すると、「顧客の満足」と「再購入」が顧客生涯価値を高める上で重要なポイントであることが理解できます。
4.ブランド起点のマーケティング組織
組織が機能軸のみでは、ブランド主語での
マーケティング戦略を描くことができません。
そのため、縦軸にブランド軸を追加し、
ブランドディレクター・マネージャーが入り、
プロジェクトリーダーとしてガバナンスを
効かせていく必要があります。
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ブランドディレクターとブランドマネージャーが連携し、人材のアサイン、市場調査や競合分析、ブランドのコンセプトワーク、戦略の立案を進めていきます。
各機能軸の担当者はブランドマネージャーと協業し、専門領域の施策を推進していく動きになるのではないでしょうか。
1ブランドに最低1名のブランドマネージャーがアサインされる
元P&G音部 大輔さんが書かれた本をベースに考えると、1つのブランドを最低1人のブランドマネージャーが担当するのが妥当です。
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個人的な感覚としても、1人のブランドマネージャーが2つ以上のブランドを担当するのは認知負荷が高すぎるように感じます。
また、ブランドがグロースする時期であれば、
ブランドマネージャー1名ではリソース足りず、2名以上がアサインされるケースもありえそうです。
ブランドマネージャーはいわゆるプロジェクトリーダーである為、事業状況に合わせて必要な人的資源投下が検討されるべきです。
5.ブランド起点のマーケティング組織 [B to B to Cの場合]
私が働いている会社がB to B to Cビジネスを運営している為、考えてみたいと思います。
私が考える理想の組織体制
B to B to Cの場合、ブランド軸起点の組織体制は下記のような形になるのではないのでしょうか。
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ブランドが1つであっても、2つの方向性(to B・to C)に対して施策立案と実施が必要になる為、1名のブランドマネージャーだけでは
認知負荷が高く、担当を切り分けたほうが良いと想定しています。
事業が創業期・成長期である場合、担当兼務領域が複数あっても致し方ないと思うものの、安定期・拡大期に突入する場合は、プロジェクト数も爆増するので、対顧客視点でブランドマネージャーを分けるほうが良いと考えています。
自分の経験を踏まえても、1人のブランドマネージャーがto B⇆to C、ブランド別の問題を複数抱えるのは、認知負荷がかなり高いと思います。
恐らく問題が適切に整理できない、プロジェクトが進まない(あるいは遅延する)などの懸念が多発します。
6.【事例】P&G 1ブランド1カンパニーの考え方
P&Gのブランド経営
前提として、P&Gでは1つのブランドを
1つの会社のようなものとして捉えているとの事。
Mission 01 ブランド経営(Brand Management)
P&Gでは、1つのブランドを1つの企業体、
つまり会社のようなものとして捉えています。
そして、それぞれのCEOがマーケティングです。
必要であれば、投資会社であるP&Gに投資を求めにいき、ビジネスをのばしていきます。
ブランド経営の考え方をベースに
ブランドの下に各機能が配置された
組織チャートイメージになっている。
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P&Gの職種紹介ページも見てみました。
ブランドマネージャーの裁量が大きく、
自らイニシアティブと戦略的思考を持って
動くことが求められるようです。
ブランドマネージャーはプロジェクトリーダーとして、「ブランド経営」の仕事をしていきます。
ブランドの売り上げ・利益に責任を持って戦略を立案し、そして他部署のチームメンバーと協働しリーダーシップをとりながら確実に実行する仕事です。
そしてプロジェクトを進めるにあたってクリアな
戦略を作る必要があります。そのためには戦略的思考を持つことは非常に重要です。
また、P&Gのマーケティングはトップダウンのカルチャーではないので、ブランドの売上・利益を伸ばすために必要であれば、ブランドマネージャーが自らプロジェクトを作成するということもあります。
7.【事例】リクルート 機能軸と事業軸を兼ね備えたハイブリッド組織
マーケティング組織の役割
同社のnoteを参照すると、マーケティング業務の役割定義は「戦略」、「集客」、「接客」、「顧客育成」で切り分けられていることが分かります。
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機能軸と事業軸を兼ね備えたハイブリッド組織
さらに過去の2018年マーケジン記事を参照すると、同社は事業特性を踏まえて「機能軸」と「事業軸」のいわゆるマトリクス型組織を採用しているようです。
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2018年記事なので、さすがに組織形態も変化しており参考情報としては弱いですね。。
ただ、事業の歴史理解には役立つ記事だと思いました。
8.最後に
複数の企業事例を踏まえて、
機能別×ブランド(プロダクト・サービス)別でマトリクス的に組織を形作っていくことが、1つのお作法としてあることが分かりました。
また、各企業の記事から多くのマーケティング責任者が悩んでいる様子もなんとなく伺えました。
企業事例に記載はしていませんが、Smart HR マーケティング組織 ver2021のnoteは実際の組織課題が記載されており、成長企業の悩みが分かります。
引き続き勉強を続けて、最適なマーケティング組織の形を考えていきたいと思います。