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ジェネレーティブAIによって人事の仕事がガラッと変わるかもしれない話
はじめに
ジェネレーティブAIの進化によってAIの存在が身近になり、仕事でも頼もしい存在になってきています。非常に便利で、生産性を高めていく使い方ができそうでワクワクします。
その一方で、従来の「人事の仕事」をガラッと変えてしまう存在になるようにも感じます。
人事といっても多様な前提がありますので、ここでは特に日系の大企業を主に想定しています。概観の整理と、そのあとでざっくりカテゴリーごとに整理してみました。
なお、自身の経験に基づくものなので偏りなどもあろうかと思います。そしてChatGPTに支援してもらって書いています。
減っていく人事の仕事
まずは概観について。
人事の業務カテゴリーを問わずに俯瞰したときに、現時点で時間を取られがちなのは以下のような種類のものがあります。
・従業員とのやりとり (制度に関する質問や人事関連の手続きなど)
・従業員への説明 (新たな制度、評価プロセス説明、採用活動への参加など)
・社内数字の収集、レポートの取りまとめ(採用関連、人的資本関連など)
・社外からのアンケート調査への回答
・人事企画に関連するドキュメント作り(膨大なパワーポイント資料)
周囲から求められる部分はありますし、そこにリソースを最適化してきている現状があります。
人事としても社員に寄り添っていると感じられる、あるいは人事企画として頭をフル回転させていると感じられる業務でもあります。
ただ、ここのあたりはジェネレーティブAIによって景色が変りそうです。
タイムリーさ
情報の正確性、網羅性
話しかけやすさ(AIなので知った相手かどうか不問ですし、相手の状況を気にしなくていいですし、対話のテンションも安定している)
上記の3点において人事(人間)が対応するよりも、従業員目線でいえばAIの方がアクセスしやすい存在になります。
人事としても、社内の情報を集めたり、企画を考える上での優秀なアシスタントになります。AIとの協同ワークはあたりまえになりそうです。
そうなったときに、このあたりにつかっていた時間は一気に浮いてくる可能性があります。そうなると、人事社員を減らすか、新たな価値を創出するかの2つにひとつ。
人が減る部分については、5年も先の話ではなく2~3年以内に変化が起きてくるのではないかと勝手に思っています。
すると大変なのは実はベテラン層です。
例えば定年が見えてくるラインまでくると、これまでの経験値でこなせる仕事の割合がどうしても多くなってきます。ただ、それらの仕事がこの数年でAIにとって代わられるとなった時にどうなるのか…。
プロパー人材が多い組織の場合、40代後半~50代になってくると社内での経験値の蓄積、社内知識の量をそのまま仕事のパフォーマンスと捉えるケースがあるかもしれません。ただそうしたノウハウがAIに置き換わるとしたら…。
仕事のできる/できないの評価軸が一気に変わることを想定しておく必要があるのかもしれません。
そんな概観を置いたうえで、人事業務のカテゴリーごとにどんなことが起こりえるのかを少し書いていってみます。
カテゴリー1.人事戦略
業務の内容
人事戦略の策定、人材マネジメントの計画、目標設定、戦略実行、など
AIにより効率化・減らせること
データ分析、ベストプラクティスの抽出、トレンド予測など。
今は市場分析や他社調査に人、時間、金などのリソースをかけています。コンサルなどに委託する場合もあります。
この領域はたたき台レベルであればジェネレーティブAIによって時間やコストを圧縮できます。
かけていたリソースは別タスクに割り当てることができるかもしれません。
人が注力していくこと
戦略を実行するためにエンパシーやクリエイティビティを生かした文化などの無形資産の価値創造の重要性が高まりそうです。
人の感情と理性に響くように設計し、実際の行動につながげるところにリソースを注げるようにしていくべきではないでしょうか。
つまり、次の2の領域の重要性が高まります。
カテゴリー2.企業文化の醸成・コミュニケーション
業務の内容
企業文化の定義、行動規範の策定、エンゲージメント向上、コミュニケーション戦略の策定、従業員とのコミュニケーション、など
AIにより効率化・減らせること
コミュニケーションのサポートとして定型的な情報の提供、社内情報の提供、問い合わせの対応など。
自動分類による問い合わせの分析、回答精度の向上、自動応答によって、人力対応の負荷軽減ができます。
率直なフィードバックも価値になるかもしれません。AIとのコミュニケーションの中でフィードバックを受けることで、分析改善につなげていくことができます。
ネガティブな意見については人間が受け止めるには過度なストレスになる場合もあります。そのケアを必要とせずに率直なフィードバックを回収できることは組織運営においても有益になっていきそうです。
人が注力していくこと
企業文化の設計、コンテクストに沿った言語化など。
実際の組織と整合していくためには直接的な人と人とのコミュニケーションが必要です。
ここに人事が注力できれば、より戦略実行するうえでの適切な組織づくりが可能になります。
従ってジェネレーティブAIの登場により、新たに人事としてリソースをかける価値が高い領域です。
カテゴリー3.人材獲得・採用
業務の内容
従業員の募集、スクリーニング、面接官トレーニング、オファー、オリエンテーションやオンボーディング、など
AIにより効率化・減らせること
採用プロセスの自動化、マッチング、インタビューなどが考えられます。
自動的に応募者との基本的な連絡や質問対応をタイムリーにできます。休日や遅い時間であってもです。
スキルマッチングはAIが得意とするところです。
基本的なインタビューの実施も可能になるかもしれません。確認したい項目が明確になっていれば、適切に会話形式でコミュニケーションできます。
人が注力していくこと
動機を生み出す場面はAIには難しいと思います。なぜ、その会社で働きたいのか。熱意や共感などを通じて候補者との間に育んでいくことは人がやる価値のあることです。
採用プロセスを伴走し、オンボーディングでどのような体験価値を提供するのか。ここは人が介在することで大きく価値が高まります。
上記の観点でエンプロイヤーブランディングも重要性が高まりそうです。動機を産む種になるからです。
エンプロイヤーブランドを高めるためには実際の企業文化が表裏一体で存在します。よって上記2の企業文化の醸成、進化は人材獲得においても大きな影響を与えるのではないでしょうか。
カテゴリー4.労務
業務の内容
労働契約書の作成、社会保険の手続き、給与計算、人事評価制度の運用、労務トラブルの解決、リスクマネジメント、など
AIにより効率化・減らせること
標準的な手続き、適切なQA対応、勤怠管理や健康管理、法令順守、給与や福利厚生の管理など。
定型的な業務はAIに置き換わりやすい領域でもあります。またよくある質問など従業員サポートに多くの時間を割いているケースがありますが大きく改善が期待できるところです。
企業ごとの就業規則、各種規程についてもほどなくジェネレーティブAIによって対応可能になっていくのではないでしょうか。
データをもとにアラートをあげるなど、リスク管理面でも効率的な対応ができそうです。
人が注力していくこと
労働法や規制の順守については変化していくものなので、最新の情報を確認して適用していくことは求められると思います。
人が介在することで、より効果的であり続けるのは健康管理やメンタルヘルスに関するケア領域。
発生してしまった労務トラブルの対処についても人が出ていかなければならない場面は引き続き残るでしょう。このあたりは心情的なところと大きく関わりそうです。あえて人の介在を残しておきたいところでもあります。
カテゴリー5.トレーニング・開発
業務の内容
トレーニング設計、ニーズアセスメント、コンテンツの開発、研修の実施、成果の評価、マネジメント開発、など
AIにより効率化・減らせること
コンテンツ開発やパーソナライズされた提供、AIによるティーチングやコーチングの実施、キャリア開発支援などが考えられます。
特定の業務やスキルなどについてはすでにジェネレーティブAIを通じて学習することができます。
企業ごとに異なる分野、職人芸とよばれるところは難しいかもしれませんが、一般的な分野だけでも相当の領域が取って代わられるかもしれません。
社内の人材情報、一般的なキャリアの情報、外部に公開されている募集要項などを基に、適切なキャリア上のアドバイスを得られるかもしれません。
人が注力していくこと
企業固有の技術、職人芸と呼ばれる領域、物理的や身体的なスキルはまだAIによる学習効率化からは遠いかもしれません。
ただそうした領域についても、将来に向けて学習コンテンツに落とし込むことは重要です。企業の技術喪失に対するリスクヘッジになることも期待できます。よってAIを育てるのも重要な役割になるかもしれません。
現場での実践的なトレーニングやOJTも同様にAIだけでは難しいでしょう。
個人で完結するようなリフレクションや、すでにコーチャブルな状態にある個人へのコーチングはAIでも可能になっていきそうです。
一方でそう状態ではない個人への関与や、チームへの関与はAIでは難しく、人の関与する重要性は高まりそうです。ファシリテーションやシステムコーチング、チーミングなどの領域です。
リーダーシップトレーニングやチームマネジメントについても同様にAIだけでは完結しません。ハイブリッド化していきそうです。
プレゼンテーション、スピーチ、コーチングコミュニケーションなど、人と人とを結びつけて、成果につなげるためのコミュニケーションスキルの習得についても人との対話なくして向上を望めません。
カテゴリー6.評価と報酬
業務の内容
評価システムの設計と実施、報酬制度の設計と実施、パフォーマンスフィードバック、など
AIにより効率化・減らせること
職務分析、職務評価、賞与や昇進基準の設計、改善プロセスなど。
職務に対して適切な報酬設定をするためのデータ分析や設計プロセスはAIが得意とするところです。
職務の特性や難易度を鑑みた評価基準もより適切に素早く設計していくことができるかもしれません。
人が注力していくこと
実際のパフォーマンス評価やフィードバックは人が行うことで従業員の成長を促すことが期待できます。一方で、ソフトスキルが低ければAIのほうがましということにもなりかねません。
報酬戦略や給与交渉(労働組合関連)は会社の置かれている状況、戦略上の意思決定が関わるので引き続き人の介在が求められそうです。
評価や報酬は従業員のモチベーションに直結する部分ですので、この場面の体験価値を高めることはエンゲージメントにつながります。
カテゴリー7.健康と福利厚生
業務の内容
健康保険、社会保険、労災保険、厚生年金の管理、福利厚生制度の策定、従業員の健康管理、保健施設の運営、など
AIにより効率化・減らせること
社員への適切な情報提供や、関連する問い合わせへの対応はAIによってカバーできる部分です。
福利厚生の改善提案についても、利用状況をモニタリングしたり、率直なフィードバックを通じて最適化していくことができます。
ヘルスチェックは仕組みさえ整ってしまえば、それをもとにしたパーソナライズされた従業員コミュニケーションや、管理者側へのアラート発信など効率化が進むのではないでしょうか。
人が注力していくこと
安全衛生に関わる部分、特にリアルな現場がある業種においてはAIの支援で改善される部分はあるにせよ、人が主に行っていくことは残っていくのではないでしょうか。
環境的な意味での労働条件についても、実際に人が肌身に感じることも多々ありますので、人が介在することで効果は高まります。
カテゴリー8.人事データマネジメント
業務の内容
人事情報システムの運用、従業員の情報の収集、分析、報告、データの保護とプライバシーの管理、など
AIにより効率化・減らせること
自動データ入力によって人の手を介さずにできるプロセスが増えます。関わるリソースの省力化とミスの低減が期待されます。定期的なタスクやプロセスを自動化することで生産性を高められます。
自然言語処理による解析、それらをもとにした予測分析はまさにAIの本分ですので、今後もより使いやすく高度化されていきます。ビジュアライズを含めて意思決定のサポートにつながっていくことが期待できます。
人が注力していくこと
データ品質の確認、品質の向上は人間の目と手による精度が求められます。
分析されたデータの解釈は人が介在し、背景や文脈を考慮しながら意思決定に生かしていく必要があり、人の判断が求められます。
データの保管やセキュリティ管理はデジタル上でも物理上でも人が介在し、環境を担保し、管理していくことが求められます。
後半ちょっと荒くなっている気もしますが…。いったんの網羅性を目指して書いてみました。
それぞれの項目で見ていけばもっと広がった発想がでてきそうです。
これから提供価値を高めていくべき人事の仕事
ではそうした前提を置いたうえで、人事の仕事はどうなっていくのか。どうしていくべきなのか。
私の考えですが、下記については各社ごと、組織ごとに異なり、AIだけではカバーしきれません。そして企業業績に直結する領域ですので、人事として注力していく価値が高まりそうです。
人を惹きつけ、ドライブする人事戦略の策定
企業の無形資産である企業文化のデザインと実装、その文化に基づいたエンプロイヤーブランディング
従業員コミュニケーションを通じた従業員の行動促進、インターナルなIntegrated Marketing Communication、従業員のパーセプションチェンジ
チーミングや戦略的組織開発、DEI、心理的安全性の向上
従業員のジャーニーに基づく「重要な瞬間=Moment of Truth」ごとの従業員体験価値の向上、エンゲージメントの獲得
上記については、これまでの人事業務の延長線上にあるものもあれば、異なる領域の知見を取り込んでくる必要があるものもあります。
個人的にもこのあたりの探求は続けていきたいと思います。
いずれにせよ、「ジェネレーティブAIは仕事の内容、方法を変える」ということは間違いないので、どうこの変化を取り込んでいくか、各社単位で、あるいは個人単位でも考えていくタイミングなのだと思います。