マガジンのカバー画像

短編小説から見る社会

93
菅原ゼミで読んだ短編小説の書評を順次掲載していきます。書評は全てゼミ生が書いています。授業期間中の毎週末ごろ更新です。  ※ネタバレありですので気になる方はお気をつけください。
運営しているクリエイター

#小田雅久仁

小田雅久仁「11階」書評(2)

小田雅久仁「11階」書評(2)

小田雅久仁「11階」読書会、二人目の評者は佐野竜一さんです。

小田雅久仁「11階」(『2010年代SF傑作選 2』早川書房、2020年)

評者:佐野 竜一

 今回扱う小田雅久仁の『11階』は内川良徳の視点を主として十階建てマンションの十一階を幻視する浜上日菜子との生活と、幻視される十一階の世界が舞台の物語である。

 良徳はある日コンパで出会った日菜子に惹かれ、親睦を深め帰り道をともにし

もっとみる
小田雅久仁「11階」書評(1)

小田雅久仁「11階」書評(1)

先週分の更新になります。小田雅久仁「11階」を読みました。お二人の方に書評を書いていただきました。まずは高瀬晴基さんです。

小田雅久仁「11階」(『2010年代SF傑作選 2』早川書房、2020年)

評者:高瀬晴基

罪との共存



 身に訪れた絶望から解放されるために人が取ることができる選択肢はいくつかある。乗り越えるか、死を選ぶか。手っ取り早いのは死を選ぶことだろうが、どちらを選ぶにも

もっとみる