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納豆の起源は本当に雲南省なのか? 照葉樹林文化論

 先日「中国の食文化」という本を読んだが、そこに中尾佐助氏の唱えた「納豆の大三角形」という納豆の起源に関する記述があった。
 どうやらかつて「照葉樹林文化論」という日本文化の基盤のいくつかの要素が雲南省を起源としているという説が一定の影響力を持った時期があったらしい。
 この説にはいろいろと問題があったようで、現在ではあまり支持されていないようだが、それを踏まえてこの本の作者である周達生氏の主張をまとめると、

 ・そもそも豆豉の発祥は雲南のあたりで、はじめは日本の納豆と同じ無塩発酵のものだった(現代でも雲南省西にある徳宏タイ族チンポー族自治州では糸引き納豆がある)
 ・かつて豆豉には「塩豉」と「淡豉」と呼ばれる二種類があり、前者(塩を使うもの)は醤油のような感じで汁を調味料(=醤)に、後者(無塩のもの)は薬用だった(出典:南宋·吴曾《能改斋漫录》:“盖秦汉以来始为之耳,豉,分为咸淡两种,咸供食用,淡的则入药。)
 ・現代のような豆豉が登場したのは秦漢の頃(紀元前2世紀に作られた馬王堆漢墓から豆豉が出土している)、周縁部である雲南から中央の文化になっていく過程で有塩のものが一般的になっていった?(豆豉はそもそも南方の食文化)
 ・日本に塩辛納豆(浜納豆などのコウジカビを使うカビ納豆)を伝えたのは遣唐使
 ・一方、糸引き納豆も日本人の発明ではなく、大陸の「淡豉」と関係があるのでは

 と言った感じか。

 実際にミャンマーや徳宏タイ族チンポー族自治州に行った方が撮影した糸引き納豆の写真を見たが、見た目はかなり日本のそれと似ている(使われている菌の種類は違うかもしれない)。

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