2019年の夏、私は泣きじゃくりながら成田空港を飛び立った。虚ろな目で当時の彼氏との写真を眺めつつデンバーまで10時間弱、隣の乗客が訝しげに様子を伺うのも気にせず延々…
タイから帰ってきた 紫の光に覆われた浜辺、白く老いた人たちが女を買う。性と音、ネオンに溢れたあの浮かれた通り。絡まる黒い電線、その下に横たわる人々、痩せたネコ じ…
昼近く目を覚ますと、隣には誰もいなかった。 外の鉢植えのトマトは青々と実り、はちきれんばかりに陽に照っていた。夏日だった。 夏の暑さが扉の中にまで押し寄せ、畳の部…
出た出た 月が まるいまるい まんまるい 盆のような 月が 焼け跡に出た大きな月。涙が出るのはなぜだろうか。 「美しく強い」日本はどこへ行ったのか。底抜けに明るい…
私はパソコンに向かっている。 部屋には5,6人の人々がいて、めいめいがパソコンに向かって作業をしている。 データを打ち込んでいる間も、私の意識は常に存在する。何かを…
彼はキスと文章が上手くて、英語を話せる文学部の男の子。 彼の冷ややかさと、狂気を秘めたところが好きだった。 代々木公園でキノコ食べて、バッドトリップをしたあなた…
この、埼玉との県境近くの小さな部屋で、夜を一人で過ごすのが怖い。 一人でいるということは即ち、自分の過去や未来が、私だけの肩にのしかかってくるということだ。 何…
なんか、全然うまくいかないの。 私、幸せになれるのかな? そればっかり考えちゃって 一人になると、くらくて重い塊に押しつぶされそう。 素敵な女の子たちが誕生日祝っ…
大吉、大吉、大大吉 やたら幸先良く始まった2023年が、なんだか恐ろしいの 来年あたり、死んじゃうのかもね 原宿のビルの10階、日曜日の昼下がり、雰囲気の良いクラブ…
あと2時間半で23歳になる。 私の居場所は、東京の端っこの7畳のワンルームのベッドの上だけ。 ううん、本当の居場所なんてどこにもないのかも。 羽毛布団をすっぽり被った…
INFPはどうしたら幸せになれるんだろうね? ENFPの友人に聞かれ、咄嗟に何も言えなかった。 自分にとって完全な幸せ、完璧な「状態」を思い浮かべることはできるが、それ…
2019年の夏、私は泣きじゃくりながら成田空港を飛び立った。虚ろな目で当時の彼氏との写真を眺めつつデンバーまで10時間弱、隣の乗客が訝しげに様子を伺うのも気にせず延々と泣き明かした。デンバーで小型機に乗り換えさらに北へ数時間、アメリカンドリームを抱いた19歳はいざ山岳の地モンタナへ・・・ Work Travelとの出会い 2018年12月。上京して初めての冬を迎えた。 コンクリートの壁と吹き抜けの天井。寒く閑散とした大学の講義棟は灰色のコンクリートに包まれ、上京1年目の退
タイから帰ってきた 紫の光に覆われた浜辺、白く老いた人たちが女を買う。性と音、ネオンに溢れたあの浮かれた通り。絡まる黒い電線、その下に横たわる人々、痩せたネコ じめじめとした生に満ちた町 帰国して数日はぼやぼやと、からだと外の境界が不確実で実感のないまま過ぎていった。 この街は、白くモヤがかったようにやけに明るい。灰色に身を包んだ人々が、ランチの場所をもとめて通りに吸い込まれていく 日常に戻る。戻らされる。なんて安全で質朴な人々、なんて牧歌的な国なんだろう。ああ、、 あの
昼近く目を覚ますと、隣には誰もいなかった。 外の鉢植えのトマトは青々と実り、はちきれんばかりに陽に照っていた。夏日だった。 夏の暑さが扉の中にまで押し寄せ、畳の部屋に静かな熱気が漂っていた。 柱時計が淡々と時を告げる音が響く中、ただぼんやりと天井を見つめた。 今年に入って最初の夏日だった。やがて運動を終えて戻った彼に誘われ、まだ眠気の残る目をこすりながら、私は急いで眉を描き、青いワンピースに着替えた。 門を出て西へ向かう。 アパートの隣には広い庭を持つ邸宅があり、私たちはそ
出た出た 月が まるいまるい まんまるい 盆のような 月が 焼け跡に出た大きな月。涙が出るのはなぜだろうか。 「美しく強い」日本はどこへ行ったのか。底抜けに明るい彼らは存在したのか。今はどこにいるのだろうか。 黒澤明の「まあだだよ」を観た。 「先生」と、かつての男子生徒たちの数十年の物語。 戦前、戦中、戦後がさらりと描かれ、時々で暮らしぶりは変われど先生と妻、生徒たちは酒を注ぎ、語らい、歌う。 また出た 月が まるいまるい まんまるい 盆のような 月が 「先生 戦争中、
私はパソコンに向かっている。 部屋には5,6人の人々がいて、めいめいがパソコンに向かって作業をしている。 データを打ち込んでいる間も、私の意識は常に存在する。何かを考え、自分にとって自分を特別な存在であると思っている。 自分の意識は完全に「無」になることはない。20数年間の記憶と感情が蓄積されている。思考も意識も決して中断されることはない。 部屋の他の5,6人の人々の意識や脳も同じ状態にある。 それぞれが独立した意識と思考を持ち、今現在も何かを考えている。彼らも彼ら自身を
彼はキスと文章が上手くて、英語を話せる文学部の男の子。 彼の冷ややかさと、狂気を秘めたところが好きだった。 代々木公園でキノコ食べて、バッドトリップをしたあなたは明け方に突然わたしのアパートのチャイムを鳴らした。リュックも携帯もなくしたあなたはボールペンで書き込んだ英文だらけのジャケットを着て、ももちゃんしか助けてくれる人が思いつかなかった、そう言った。 あなたが書いた小説や話す言葉を隣で頬杖ついて聞くのが好きだった。 わたしを腕の中に抱いて甘い言葉を囁きながらあなたは
この、埼玉との県境近くの小さな部屋で、夜を一人で過ごすのが怖い。 一人でいるということは即ち、自分の過去や未来が、私だけの肩にのしかかってくるということだ。 何一つ確かなことがない今の生活で、唯一確かであったはずの過去ですら、何度も取り出して眺めているうちに次第に薄れ、不確実さを増していく。自身の記憶ですら主観的なものに過ぎない。歴史がそうであったように。 ただ、私はこの恐怖という感情でしか、もはや生の実感を抱くことができないのかもしれない、とも思う。 幼い頃のように、全
なんか、全然うまくいかないの。 私、幸せになれるのかな? そればっかり考えちゃって 一人になると、くらくて重い塊に押しつぶされそう。 素敵な女の子たちが誕生日祝ってくれたりさ、 久々に高校のときの友達と遊んだりしてね。大好きだし、楽しいよ。 でもね、なんでかな、ただ気が紛れるだけなの。 あのいやにつやつやした錆色の塊。 おはじきとか、びいどろみたいに綺麗で、口に入れたくなる質感の ホームドアの上から、必死に覗く。満員電車から富士山を仰ぐみたいに。 "彼"はホーム下に鎮
大吉、大吉、大大吉 やたら幸先良く始まった2023年が、なんだか恐ろしいの 来年あたり、死んじゃうのかもね 原宿のビルの10階、日曜日の昼下がり、雰囲気の良いクラブ。 スト缶と鬼殺し二本キメていっちゃったから、ロクに記憶がないんだけど。 友達が、口に手を突っ込んで吐かせてくれた。高校からの大好きな子。 一番お気に入りの指輪、なくなっちゃった。水色の天然石がついてて、なんだかヨーロピアンな形のやつ。ヨーロッパの風って名付けてた。 錯乱すると指輪取っちゃう癖があるみたい。気持
あと2時間半で23歳になる。 私の居場所は、東京の端っこの7畳のワンルームのベッドの上だけ。 ううん、本当の居場所なんてどこにもないのかも。 羽毛布団をすっぽり被った即席の居場所で、将来を悲観して泣いてる。 正月休みは今日で明けて、ドアの向こうで単調さが私を見てる。 ハレとケ、クソみたいな概念だ。 みんな当たり前のような顔で出勤しやがって。 20年以上サラリーマンやってたら、あんな風に狂っちゃうんだ。可哀想に! とっくに病気になった臓器に、食物を注ぎ込まれ続ける、もう、全
INFPはどうしたら幸せになれるんだろうね? ENFPの友人に聞かれ、咄嗟に何も言えなかった。 自分にとって完全な幸せ、完璧な「状態」を思い浮かべることはできるが、それはおとぎ話のように非現実的なのだ。 結局自分の内的世界(主観的現実?)でしか理想を実現できないのがINFPなのだろうか。 これから、二十数年しか生きていない私がとりあえず下した極端な結論と思考を書き連ねる。 断言口調が目立つが、私は単に自分を通して「INFP」を語っているに過ぎず、特に根拠はない。論理性も重