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Work Travel-アメリカ国立公園アルバイト記

2019年の夏、私は泣きじゃくりながら成田空港を飛び立った。虚ろな目で当時の彼氏との写真を眺めつつデンバーまで10時間弱、隣の乗客が訝しげに様子を伺うのも気にせず延々と泣き明かした。デンバーで小型機に乗り換えさらに北へ数時間、アメリカンドリームを抱いた19歳はいざ山岳の地モンタナへ・・・

Work Travelとの出会い

2018年12月。上京して初めての冬を迎えた。
コンクリートの壁と吹き抜けの天井。寒く閑散とした大学の講義棟は灰色のコンクリートに包まれ、上京1年目の退屈と孤独を際立たせた。その頃講義と講義の間の空いた時間は図書館に行くか、留学の資料を覗きに3階の国際課に足を運んだ。国際課の扉前にはいつも海外留学のチラシが雑然と並んでいたが、その日は一枚のポスターに目が留まった。
「アメリカの国立公園で 世界の仲間と働こう!」ー大自然とヤギの写真。
それは陰惨な現状から逃げ去るチケットのように輝いて見え、私は「これだ!」と思った。その日のうちに説明会に申込み、心配する親を強い口調で説得。一か月も経たずに面接が決まった。片言の英語しか話せない私を星が見えるようなウインクと凛々しいスマイルで迎えた支配人のNIckは「国立公園の湖で泳げますか?水着をもっていってもいいですか??」というバカげた質問に「Excellent!! (^_-)-☆」と答え、私たちは強い握手を交わした。こうして2019年8月から2か月間の渡米が決まった。
 私がここまで強引にアメリカ行きを進めたのは、高校時代私を夢中にさせたアメリカへの憧れだった。16歳になりたての春、2週間カリフォルニア州の親戚の家を訪れた。抜けるような青い空とカラフルで陽気な人々。ハイスクールミュージカルとオースティンアンドアリー!あのハリウッドの浮かれよう!「アメリカ=カリフォルニアスカイ」19歳の私にはこの認識がすっかり定着していたのだ。モンタナ州の場所すら調べずに。

モンタナって・・?

シアトルから東に600km、カナダとの国境にある州。アメリカ北西部の山岳地で、スペイン語で「山」「山の国」を意味するMontañaを由来とする、山岳地
イエローストーン国立公園やグレーシャー国立公園など有名かつ広大な国立公園がいくつもある、山岳地なのだ。

グレーシャー国立公園1
グレーシャー国立公園2
グレーシャー国立公園3
住んでいた家とシカ
グレーシャーのお膝元。ホワイトフィッシュの街並み
家から徒歩5分の湖^^

北部の山岳地にカリフォルニアスカイはない。ジャスティンもケイティもいない。あのハリウッドの浮かれよう!夢のようなサンフランシスコ!白人割合90%のモンタナ!アメリカって国土全部あれじゃなかったのか。
本来国立公園内のホテルに配属されるはずが、国立公園から1時間ほど離れたホワイトフィッシュという小さな街のホテルに配属。カリフォルニアスカイがないならばと、満点の星空を毎晩眺める気満々だった私は戦意を喪失した。都会か大自然どっちかにしてくれ。
 こうして、アメリカ人の思い思いに使用したベッドルームを片付け、びしょ濡れのバスルームを拭き、枕を作る早業を台湾人から教わり、台湾人の女の子の背中に熱湯をかけるブルガリアのウィーズリー双子を怯えた目で見守り、それでも月2回は大自然に行きたくて早朝に手配した車が時間通りに来たことは一度もなく、朝8時から午後の4時まで週5日、Knock Knock!! House Keeping~~をやる生活が始まったのだった。
 悪いことばかりではない。たまにバカでかいショッピングモールにショッピングに行ったり、ボーリングしたり、バーに入ってみたり(19歳)、超美味しい寿司屋さんに通ったり、ハイキングで天国のような風景を歩いたり、アメリカの小さな小さな田舎街で夏が去って秋が来る寂しさまで経験できて味わい深かった。
日本人が全員帰国しブルガリア女子2人と働いてたとき、私がバスルームのシンクと鏡をピカピカに磨いたら大柄のマネージャーに「You are the BEST JAPANESE!!」と褒め称えられ、女の子には「一体どうやったんだ?」「I’m proud of you」と心底感激したみたいな顔で言われた。困惑。あとはモンタナにはアジア人が本当にいないから、walmartで急に「You are BEAUTIFUL!!」って励ますように言ってきたおばさんがいた。「Why do you say so…」「I JUST thought YOU ARE BEAUTIFUL!!」当時は嬉しかったけど、きっとそういうんじゃない。ああ、過ぎ去ったすべてが今思えばとても美しい思い出。

ビザの取得と渡米準備


必要なビザはJ-1ビザ(交流訪問者ビザ)で、インターンとしての短期間就労のために取れるビザだった。必要な手続きをしてアメリカ大使館まで取りに行く必要があったが、intraxという仲介会社のサポートもあって初めてのビザでも問題なく取得できた。「仲介手数料」で15万円(2019年当時/早割※12月までの申込で7万円割引済み)かかったが、今思えばお金を払って海外に労働しにいくのも変な話で、もう少しよく調べれば費用を抑える方法もあったのではないかと思う。ビザ取得と航空券購入以外は特に何もせず手続き等は大体intraxがやってくれた記憶があるので、海外経験の少ない学生で「航空券+手数料」と「2か月間の賃金(3000ドルくらい?)」がほぼプラマイゼロでもOKなら、深く考えずintraxを利用してもいいと思う。
私はアメリカに住んでいた親戚の助言もあり往復分の航空券はあらかじめHISのカウンターで購入したが、これは少し後悔した。稼いだお金でモンタナ→ニューヨークに行く友達やペルーに旅行に行く台湾人を横目に泣く泣く日本に直帰国することになった。帰りの航空券は別に押さえなくてもよかったかも。
◎当時私が選んだ期間と方法
8月5日(月)に日本出発。デンバー乗り換えで5日夜にカリスペル着。7日から労働開始。最長の9月30日(月)に労働終わり。10月2日(水)にカリスペル発、3日夕方に日本到着。
◎今日程を組むなら
労働終了を9月27日(金)とかにしてアメリカを旅行する。授業は10月21日スタートだったので、それまで稼いだ数十万で放浪する。

労働期間について
私の配属先にいた学生はブルガリア人、台湾人、日本人がほとんどで、ブルガリア人と台湾人はかなり仲が悪かった。国別に固まることが多く、日本人は割と日本人同士で仲良くなった。日本の大学は大体早いところで9月半ば、遅くても10月1日には秋学期が始まる。誰も9月いっぱいまで働く子はいなかった。うちの大学は教育大で大抵の学生は教育実習が秋にあるため、秋学期開始が異常に遅い。仲良くなった皆が9月半ばから順々に去り、最終的に数人のブルガリア人とお腹の出たアメリカ人のおじさんと働くのはやはり心細かった。人員も不足して、大変だった記憶がある。
★9月いっぱいまで働くことはない。早めに仕事終わらせて旅行に行くのがおススメ

通信はどう?
私はグローバルwifiを契約して行ったけど、今思うとそこまで必要なかったと思う。配属先のホテルにも宿舎にも、外では飲食店にwifiがあったので、通信環境がなくて困るのは道を歩いているときと国立公園でハイキングしているときくらい。周りの子はwifiなしもしくはsimで渡航している子が多く、私のように持ち歩き型のwifiを持っていると「ちょっと繋がせてほしい」や「ちょっと調べてくれる?」など外で頼られることが多くて少し大変だった記憶。
★ポケットwifiはなくても問題ない。今なら現地でsimを買えばいいと思う。※と思ったけど、カリスペルの小さい寂れた駅みたいな空港でsimが手に入るのか不安。デンバーとかシアトルだと買えるかな?空港到着時とか、お守り程度にポケットwifiもあってもいいかも。(価格.com経由だと大分安い)【グローバルWiFi】の料金とクチコミ・評判|海外Wi-Fiレンタル - 価格.com (kakaku.com)
ahamoなら手続きなしで海外で使えてかなり便利(日本国内ではやや不安定)

洋服とか?おしゃれはすべき?働く時の服は?
・着いたとき(8月初旬)は夏。帰るとき(10月初旬)は雪のちらつく冬!モンタナの夏は6月から8月くらいで、9月10月は寒い。私はかなり認識が甘く半袖の服しか持っていなかったので、現地で10ドルくらいのカーディガンを調達した。私の配属先は国立公園の中ではなくて、ホワイトフィッシュという小さな街だったため、1、2週間に一回くらいはwalmartというショッピングモールに買い物に行けた。国立公園内に配属された場合あんまり街に出られないと思うので、9月末までいるなら毛糸のカーディガンくらいの防寒具は必須だと思う。

定期的に働いていたホテルからバスが出る。30~40分くらい。walmartなど


・「カリフォルニア」の固定観念により、海外行くならジーンズとカラフルなシャツ♪と思い普段のひらひらのスカートやふりふりのトップスを全て置き、出国前に古着屋で安くてださいTシャツを何枚も買って持って行った。いざ現地に着くと、一緒に行動するのは大体日本人。服のダサい奴というレッテルを貼られて終わった。普通にかわいい服で行けばいいと思う。

・働く時の服装は、黒パンツ+青い被るタイプのトップス(制服)。黒パンツを持ってきてねと出国前にメールで知らされていたらしいけど、よく確認しておらずジーパンしか持っていなかった。それでも特に問題なかったから、日本のエージェントが決めたのかも。

あってよかったもの?
・登山靴

グレーシャー国立公園でのハイキングはちゃんと山道。近くにBig Mountaiinという山もあって、自然や山登りを心置きなく楽しみたいならハイカットの登山靴はあるといいと思う。現地調達も全然できるけど、日本で買うのと同じくらいの値段はする印象。

自分の登山靴があるのに、なぜか現地でローカットの靴も買った。あんまり使ってない。


・ならびに登山用品
グレーシャー国立公園は9月になると普通に寒いので、積極的にハイキングを楽しみたい場合は20Lくらいのザック、レインウェア、歩きやすいパンツはあったほうが良いと思う。観光客も大抵アウトドア系の服装をしていて(アメリカ中からハイキングのために来ている)、私服は少し浮く気がする。
・洗濯ネット
私の住んでいた寮は部屋キッチンリビングなどが共用のシェアハウスで、部屋から洗濯・乾燥機までの距離が結構あった。友人と一緒に洗濯することもあったので、下着類が何枚も入る百均のネットは持って行ってよかった。下着はGAPの適当なものを買って持って行ったけど、人に見せる機会もないし2か月使いまわすので使い捨てるくらいのものでいいと思う。
・和食調味料
基本的に夕食は自炊だったけど、日本人同士で作ることが多くて、なんだかんだ顆粒だしと醤油、即席みそ汁(味噌と具が別になってるやつ。味噌だけでも使える)、乾燥わかめ、コンソメ、鶏がらスープの素はかなり使った。ゆかりとだしでハイキング用のおにぎり作ったり。アメリカのスーパーにも日本コーナーはあっても、TERIYAKI SAUCE!みたいにちょっと趣向のずれた甘辛いものが多かった印象。
友達はごはんパックとレトルトカレーを大きい鞄一個分大量に持ってきていて、最初は笑っちゃったけどかなり助かった。

砂肝を買ってきて焼いた。おかゆと味噌汁
友達が作ってくれたハイキング用おにぎり
アメリカでもこのレベルの自炊はできる

・胃薬と整腸剤、正露丸とか
一度だけ甘辛いチキンを食べ過ぎて、消化不良になって1日寝込んだ。外食は胃が疲れやすい食事が多いかも。即効性があったかは疑問だけど、日本の薬があると安心感はあった。


その他ギャラリー

成田→デンバー→カリスペル
デンバー乗り換えではアラスカ航空の小型機の小ささにびっくり。墜落しないでしょうね??J1ビザで働くであろう日本人の子が何人も乗ってた。隣の席の子にねえ、アメリカ何回目?わたし10回目と言われて微妙な顔に。(その子には国立公園の湖で再会した際もねえ湖何回目?私たち8回目と言われた)
初日、空港近くのホテルから見たカリスペルの朝。
ちなみに、空港に迎えが来ていてみんなは系列のホテルに泊まったらしい。私は案内のメールをよく読んでおらず、自分でホテルを予約して泊まった。友達や家族と電話したり、バイキングの朝ごはん食べたり、それはそれで楽しかった。
働いていたホテル。ロッジ風のかわいいホテル。グレーシャー国立公園内に配属のはずが、なぜか日本人6人だけここに配属。
宿舎。かなり小さくて鶏小屋と友達は呼んでいた。大きいソファもあって、住み心地は悪くない。
従業員食堂の食事はこんな感じ。バイキングで毎食サラダが大量にあった。意外とヘルシー。
チキンとオニオンリング美味しかったな~
ホワイトフィッシュの街並み。空気の澄んでひんやりした秋。家から徒歩5分くらい。
シティビーチ(湖)家から歩いて30分くらい。8月ごろまではビーチみたいに使える。カヌーもできる。9月からは寒くてとても泳げない。
日曜休みの日に近所の教会に行った。アジア人も若い人も一人もいなくて隅に座ってたら前に来て一緒に座りましょうよ!!みたいにおばさんたちに声かけてもらった^^お昼もいただいた


取り急ぎこんな感じ。働いていたときの話やハイキングのことはまたいつか改めて。

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