咲いたねと向日葵の丘へ向かう友こっち向いてよ写真撮るから
【はなのうた】
高校の時の同級生だから、故郷で会うのはもう何十年ぶりだろうか。
通いなれたはずの学校の周辺も街並みが変わり、懐かしさも曖昧で不思議な気分。無理もないか。いつのまにか長い年月が経ってしまった。
ちょっと曇ってるけどひまわり畑を見に行こう。もう咲いてるはず。
故郷の小さなスキー場は、夏の間お花畑になる。
駐車場に車を停めて丘の上から見下ろすと、ひまわりが全部後ろ向きだった。これじゃ花が見えないじゃない。
ひまわりって太陽のほうを向いて咲くっていうけど違うのかな?ここから見る景色がベストなんだけどな。こっち向いてよ、写真撮るから。
少し丘を下って振り返り、ひまわりの花を見上げる。近い近い(笑)
後ろを歩く友だちも同じように振り返ってひまわり見てるものだから、今度はひまわりは正面だけど友だちが後ろ向きである。こっち向いてよ、写真撮るから。
写真を撮るのも撮られるのも妙に照れ臭い。だからふたりともひまわりの花の中にスマホを突っ込むみたいなことになった。
ひまわりが太陽を追いかけるのは、花が咲くまでの事らしい。
咲いたら東に固定。昼でも夕方でもずっと同じ方向を向いている。
*
私たちはひまわりだった。
太陽を追いかけた幼い日々は遥か遠く、
希望に向かって咲く花の頃は足早に過ぎた。
懐かしい故郷に帰るとき、
ひまわりに「おかえり」って迎えられる私たちは、
いつかの太陽になったのかもしれない。
ひまわり、咲いたね。
楽しかったね。
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