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残業ゼロはマネージャーの“仕組み化”で実現できる

「働き方改革」で求められる残業ゼロのためには、マネージャーの働きが不可欠です。なぜなら、個人がどんなに努力するとしても、マネージャーやリーダーと言った一定以上の権限者が作るルールや仕組みの中でしか、個人の担当者は自由な裁量を持てないからです。

もちろん、個人事業を選択することで、ある程度自由な裁量を持つことはできますけど、みんながみんなできるわけでもないですしね。

ですから、個人レベルでどんなに努力しても、一向に効率が上がらなくなったら、自らを取り巻く仕組みや、その仕組みを管理している人に焦点をあてなければなりません。


やや形骸化している感の強い「働き方改革」ですが、それは現場を知らない部署(たとえば総務とか?)に丸投げしているだけの企業のケースですよね。そのせいで、「働き方」そのものは何一つ変わっていないのに、なぜか残業の抑制がさまざまな業界で進んでいたりする企業もおおいのではないでしょうか。

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しかし、ただ何の計画性もなく「残業をなくしましょう」と声を掛けているだけで残業がなくなることはまずありません。特に、それまで当たり前にように残業が発生していた企業や部署などではなおさらです。

たとえば、残業時間を「余計なカロリー」だと考えてみましょう。すると、残業の抑制はダイエット活動と同じようなものだと言うことがわかります。

朝起きて「体重を減らそう」と口にするだけ、あるいは決意するだけで体重が減るならば、世の中のダイエット法はすべてゴミ箱直行でしょう。決意があっても、日常の習慣が変わらない限りは、体重は増え続けていきます。

そして、それはこの残業にも同じことが言えます。

「残業しないように気をつける」だけでは、まずうまくいくことはありません。習慣的に残業が発生しているなら、その習慣にメスを入れるための「仕組み」が必須となります。

現場とマネジメントの両方がわかるマネージャーを想定しながら、意識的に「残業をなくす」ことを目標に動き、その動きを支えるための仕組みを構築する考え方が必要になるのです。

残業の抑制は「仕事の進め方」の変更を生む

そのためにはまず2つ、押さえておきたいポイントがあります。
一つ目は、残業の抑制は、多かれ少なかれ「仕事の進め方」の変更を生むということです。過去とまったく同じ仕事の進め方をしているにもかかわらず「残業がなくなった」というのはまずありえません。日常の食事や運動量が変わっていないのに「体重が減った」というのがあり得ないのと同じです。収入と支出に変化がないですから、当然です。

そして人は、だいたいどんな人でも過去の慣習に倣い、「慣れたやり方」を好みます。言い換えると「変化」を嫌います。変化させる際に生じる負担(スイッチングコスト)や不慣れの居心地が悪いからです。

つまり、残業の抑制に向かって進んでいく途中では、だいたいその取り組みを実施するメンバーの中に軋轢(あつれき)が起きます。ある程度の反発を見込んでいなければ、仕組み化は挫折するでしょう。

二つ目は、仕組み化の導入の成果は即座には現れないということです。導入の成果はじわじわと浸透し、ある地点から指数関数的に成果が出てくるような形になることがふつうです。

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それは、新しい仕組みに慣れるために時間が必要なのと、当初は不信感があって、なかなか十全に力を発揮してもらえないことが関係します。もちろん、現場にしてみればスイッチングコストがかかってしまうリスクを鑑みると、現状のままで変化せずに進めたくなるのは理解できます。けれども、現状維持では何ひとつ改善しませんし、改善しなければ成長もできません。

もしも、今現在残業をしなければならないような進め方をしているのであれば、それは変化しない限り今後も同じような進め方になると言うことを意味します。

重要なのは、まずやらせてみて、その結果を見ながらフィードバックを得て、改善を加えていくことです。なんにせよ、忍耐強く取り組んでいく心構えが必要です。


仕組み化に必要な情報を持つ人々

残業を減らす心構えができたら、あとは実際の「仕組み化」です。

とは言え、残念ながらすべての職場環境に通用する絶対的な「仕組み」の方程式はありません。絶対的な「仕組み」があると信じ、現場の状況を無視して導入しようとすること自体が、大いなる無駄であり、残業の源です。

当然ですが、会社全体で適用できる仕組み…というのも、ある企業と無い企業が存在するのではないでしょうか。たとえば、生産部門と非生産部門、肉体労働部門と事務作業部門、社内作業者と社外作業者、と言った違いで同じ仕組みが導入できないケースも多々あると思います。

必要なのは、まず現場を見ることで、そこから改善のアイデアをひねり出すこと。これもマネージャー…すなわちその現場を統括する管理職/管理者の仕事の一つです。

ですが、どれだけ職場環境が多様であっても、目指したい方向性は共通しています。

 ・より少ない時間で、これまでと同等の成果をあげられるようにする
 ・業務の維持・発展において不要な作業を減らしていく

これは、「健康的な食事と適度な運動をすれば、体重は減らせます」くらいに当然な話に聞こえるでしょう。しかし、自分の職場で実践しようと思えば、「実際、仕事はどんなふうに動いているのか」を知る必要があります。

それを一番よく知っているのは、プレイヤーとしての経験があり、また現時点でマネージャーである人です。決して現場を知らない間接部門の担当者ではありません。


「非効率」を減らしていこう

以上を踏まえた上で、「仕組み」として取り組みたいのが、以下の二つのです。

 ・非効率な作業を見つける
 ・非効率な作業を改善する方法を考える

効率性を上げるもっとも簡単な方法が、非効率な作業から「非効率性」を剥ぎ取ることです。非効率な作業を発見し、別の形に置き換えていくこと自体を業務の一つにしてしまえばよいのです。そのためには、定点観測を続けることが必要です。

定点観測とは、同じ場所(定点)から継続的にある一定の視点をもって観察し、以前のものと比較してその差異を分析することです。つまり、どんなに仕事の進め方を変えても、評価するポイントは同じ箇所とし、継続して定期的に観測するデータを比較し、どのような取り組みをすればどのような結果となるのかを分析するというものです。

ですから、過去の前例にしがみついて、効率性を全く考えない人は要注意です。分析もせず、より良い方法の模索を怠り、チームや組織を著しく邪魔している可能性があるからです。

一般的な「仕組み」としては、非効率だと思える作業、ミスをしやすい環境、滞ることが多い業務といったポイントを、仮置きでいいので特定します。そして、定期的に部下から報告してもらうのです。最後に、問題個所を見つけ出した上で、どうすればそこから非効率性をはぎ取れるかを考えます。

 「メールを一斉送信する代わりに、ファイル共有を使ったり、
  チャットを用いたり、社内wikiを整備したりするのはどうか」

 「会議には「目的」と「費用対効果」の設定を義務付け、
  それらが明確にならないものは一切実施せず、
  雑談や回覧などを活用するのはどうか」

のようなかたちで、無駄と改善点を出していくわけです。
「仕組み」とは別に大切となるのは、常に

 「今が最高なのか?もっと良くはならないのか?」
 「最低限でいいのか?皆、不満は無いのか?」
 「無駄なことではないか? もっと効率的にできないか?」

を考える視点を持ち、それを実際の業務に反映していくことです。特に、多くの従業者と関係の深い間接部門は、こうした考え方が無ければ会社全体の効率を下げかねません。こうして徐々に仕事の進め方を変えていけば、次第に効果は上がってきます。

「仕事の進め方」をまったく変えないままに、厳しい残業削減目標だけを設定しても、結局は「見えない残業(サービス残業)」が発生するだけです。また、楽をしようとしすぎて早々にシステムなどの導入を安易に考えると痛い目を見ます。

市場が常に変化し、社会が常に変化し、そして環境が常に変化し続ける現代において、変化を疎かにし、また他人の変化さえも阻害するような人は、おそらく今後生き残っていくのは難しくなっていくでしょう。

システムは、言い換えれば「仕組み」を「IT化」したものです。そもそも、「仕組み」の意訳が「システム」なのですから、当然と言えば当然です。

ですから、まずは「仕組み」をきっちりと明確にしなければなりません。システム化しようと思ったら「仕様」が明確になっていないと、作れませんよね?その仕様こそが「仕組み」です。これを怠ると言う人は、言い換えれば

 「仕様を明確にしない顧客」

と同程度の存在に成り下がると言うことです。

そういった顧客のもとでシステムを開発して、まともに納品できたことがあったでしょうか。仕組み化を軽視する人ほど、こうした迷惑な顧客と同じ思想を持っているのだということを自覚した方が良いかも知れません。

仕組み(仕様)さえしっかりと出来上がり、明確になれば、システム化は難しくありません。エンジニアのみなさんも身に覚えがあるでしょう。仕様さえカッチリ決まっていれば、後は悩むことなく作るだけだったはずですから。

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