メニューには集客と利益確保を目的とした売る商品の設定と、あえて売らなくても良い商品を設定します。この戦略を理解したお店は必ず集客が出来て儲かります。
宇宙一外食産業が好きな須田です。
前回商品コンセプトのお話しをさせて頂きました。
業態コンセプトの最も大事な部分を、商品を通して的確に実感して頂くための軸を構築することが、商品コンセプトの役割ですと、お伝えしました。
少しだけ、前回の商品コンセプト(ストーリー)の補足をします。
商品コンセプトは、商品の方向性、軸を決めるものとお伝えししました。
もう少し具体的に解説しますと、先ずお客様に提供する商品を、大きなカテゴリーに分けます。
たとえば、中華料理店だったら、前菜、点心、豆腐、牛肉、豚肉、鶏肉、海鮮、野菜、麺飯、デザートなど、焼肉店だったら、ロース、カルビ、希少部位、ホルモン、ファミリーセットなどに分類します。
あるいは、軽いもの、早く出せるもの、みんなシェアできるもの、野菜もの、メイン、シメの料理、食後のデザートという分け方もできます。
これに基づいて、「お客様に、2時間の滞在時間の間に、こういう風に楽しんでほしい、こういう順番に注文してほしい」というストーリーを作成します。
このストーリーに乗っていただくことで、お客様は、オーダーに迷わなくなります。
また、キッチンとホールのスタッフも、あらかじめストーリーにそって動けばいいので、効率的に動けますし、お客様の滞在時間も読めるので、回転率を上げることも出来てきます。
商品コンセプト(ストーリー)を作る際は、先ず「料理の中心」を決めます。
そして、各カテゴリーに集客商品と利益獲得商品を1つずつ、必ず作るようにします。
集客商品とは、お客様がその商品を体験したくて来店する、いわゆる客寄せパンダ商品です。
お店を代表する商品であり、「○○が有名なお店」とか、「○○が美味しいお店」と、商品がお店の代名詞になります。
ですから、集客商品はどのテーブルにも乗っていて、誰もが注文しやすい価格設定であり、一般的には原価率は少し高めとなります。
私が提唱しているABC分析の方式で言えば、出数でAのトップ、売上ではAの中ほど、利益額ではAの下位あたりに位置する商品です。
この商品ばかりが注文されてしまい、それだけ消費されてしまうと、お店は利益確保が不可能になってしまいます。
そこで登場するのが、利益獲得商品です。
利益獲得商品とは、お客様に価値を提供しつつも、利益をしっかり確保する商品です。
この利益獲得商品が無ければ、必要な利益を確保することが困難になり、売っても売っても儲からないお店になってしまいます。
実は今、この利益獲得商品が飲食業から姿を消していしまっているので、どのお店も儲からない状況となってしまっています。
昔の飲食店には、どこにもこの儲ける商品がありました。
安い原材料で手間暇をかけて仕込んで、付加価値を上げて利益を獲っていたものです。
それがいつの間にか手間暇をかけることを惜しんでしまい、その結果、利益獲得商品が姿を消してしまいました。
居酒屋の刺身の盛り合わせや、串の盛合せは圧倒的な利益獲得商品でした。
“刺身は化ける”と言われていて、盛り付け一つで圧倒的な価値を提供できる商品の代表でした。
串の盛合せも、高単価商品と低単価商品を上手に組み合わせて、利益を確保していましたが、いつの間にか魅力の乏しい定番商品になってしまいました。
ですから、カテゴリーごとにしっかりと利益確保を目指した商品が必要になるわけです。
例えば、焼肉屋であれば、前菜、牛肉、豚肉、鶏肉、海鮮という各カテゴリーに1つずつ利益獲得商品を用意して、意図的にそれが売れるようにします。
利益獲得商品が売れるようにするために、あえて比較対象となる商品を置いて、お客様が自然と比較してしまうように、意図的に誘導します。
それにより、狙い通りに利益獲得商品が売れるように設計します。
先ず私が行うことは、商品コンセプト(ストーリー)を作るときは、お客様に滞在時間のあいだに総皿数で何グラムを召し上がっていただくかを決めています。
大食いの人は別として、人間の胃袋の容量は600~700gです。
特にコース料理を設計するときは、固形物で600~700gを提供するようにします。
これより少ないと物足りなさを感じますし、多いと食べきれません。
この600~700gをどれくらいの時間で、どのような価値とともに提供するのかというストーリーを考えるのです。
軽いものから始まり、すぐ出せるものとか、仕込みの段階でほぼ完成品となるような商品をオーダーして頂くようにストーリーを設定して、サラダなどのシェアできるものや揚げ物などを次に注文して頂き、華となるメインの商品となり、〆の炭水化物とダメ押しのデザート、ここまでで600~700gを消費して頂けるように、消費のストーリーを組み立てます。
このストーリーの組み立て方で、消費形態が見えてきて客単価が明確に設定出来てきます。
この様に、商品の軸を、消費の軸を決めて行きます。
この軸が決まったところで、次はメニューコンセプトです。
商品コンセプト(ストーリー)では料理の中心を決めましたが、メニューコンセプトではより詳細に、どの商品に力を入れるのか、売る商品、売らない商品を明確にします。
そのうえで、売るべき商品の組み合わせをスタッフ全員で共有します。
商品コンセプト(ストーリー)では、各カテゴリーに集客商品と利益獲得商品を1つずつ作りましたが、先ほどもお伝えしましたが、メニューコンセプトでは利益獲得商品を売れる商品にするための仕組みを仕かけます。
例えば鮮魚居酒屋が、刺身カテゴリーの中で「刺身の三種盛り」を利益獲得商品に設定したとします。
ここまでが商品コンセプト(ストーリー)です。
メニューコンセプトでは、利益獲得商品「刺身の三種盛り」を売れる商品にするための戦略として、単品の刺し身、三種盛り、八種盛りの3種類の刺身メニューをラインナップします。
価格帯は、単品の刺し身が1,000円~(原価率25パーセント)、三種盛りが2,850円(原価率25パーセント)、八種盛りが6,580円(原価率23パーセント)だったとします。
利益獲得商品を売るために、それよりも安い商品と高い商品、つまり、比較検討の基準を決めるために、見せるためのメニューを用意するのです。
このメニューのことを、「見せメニュー」と私は呼んでいます。
「見せメニュー」は売れなくてもよい商品です。
もっと言うと売らなくても良い商品です。
それぐらい強烈なポジションですし、仮に売れたなら非常に儲けられる、ラッキーな商品です。
ですから、低い価格帯で比較対処のメニューは、あえてとことんチープにします。
そうすることで、お客様に「この安い商品よりも、一つ上の商品の方がお得だ」と感じて頂くようにします。
比較した結果、上の商品に興味がわくように意図的に仕掛けます。
「こっちのほうがお得だ、価値が高い」という風に思わせるのです。
また逆に、最も高単価の商品は、ちょっと無理すれば手が届くくらいの価格設定にします。
手間がかかるぶん、利益も多めに乗せておきます。
お店にとっては、めったにオーダーされないが、オーダーされたときは売り上げと利益の両方が大きい商品といった位置づけにします。
このように価格を設定することで、お客様は知らぬ間に、お店が売りたい利益獲得商品をオーダーするように誘導されるわけです。
先ほどの例を紐解くと、単品の刺し身が1,000円で原価率25パーセント、原価額は250円、利益額は750円です。
三種盛りが2,850円で原価率25パーセント、原価額712円、利益額は2,138円にもなります。
八種盛り6,580円に至っては、原価率23パーセントで、原価額1,513円で、利益額はなんと5,067円にもなります。
当然、お刺身単品は原価が250円ですから、歩留まりを考えると、そうたいした内容には出来ません。
この単品の刺身が3種類入っている3種盛りの方が、お得に感じてしまいます。
単品を3種類注文すれば3,000円となるところを、2,850円ですからこちらの方がコストパフォーマンスに優れています。
しかし、利益額は750円から2,138円に跳ね上がります。
利益はおよそ2.8倍にもなります。
同様に8種盛りは、単品8品で8,000円となるところが、6,580円ですから相当お得感が増します。
でも、8種盛りを作るには、手間も時間もかかります。
ですから、ここはしっかりと利益を確保しておかないと、お店としては合いません。
ですから、利益額は5,067円にもなります。
売れると、完全にお店側はラッキーとなります。
ただ、原価額で1,500円もかけられますから、内容は相当豪華に盛り込むことが出来ます。
ですから、お客様の満足度も高くなり、お店も十分な利益が取れる商品となります。
あわせて、刺身三種盛り用の三種の食材だけを大量に仕入れるようにします。
さらに、プレカットしてすぐ出せるように用意しておくことで、早く提供できます。
すると、そのお店ではどのテーブルにも刺身三種盛りが乗っているという状態になります。
さらに、ホールスタッフも何を売り込めば良いのかが明確になっているので、おすすめがしやすくなります。
前回の記事で紹介した「塩だれホルモン 満天」のメニューコンセプトを紹介しますと、このお店の「見せメニュー」は豚焼肉(トントロ、豚カルビ、豚ロース、豚ハラミなど)となります。
ホルモンは1皿280円からですから、メニューを見て「豚肉を食べるならホルモンのほうが安くていいなぁ」と、お客様に感じていただくように、豚焼肉(トントロ、豚カルビ、豚ロース、豚ハラミなど)は、ホルモンよりも圧倒的に高い480~680円に設定します。
こうすることで、ホルモンのオーダー率が高くなるように、意図的に誘導します。
豚焼肉には売れなくてもよい、「見せメニュー」としての役割を果たしてもらいます。
又、多くのお客様が、さらにホルモンの中でもお得感が高い「塩だれホルモンミックス(盛り合わせ)」(980円)を注文するように意図的に誘導します。
「国産ホルモン」のカテゴリーの集客商品は、「名物塩だれホルモン(シマチョウ)」(280円)、利益獲得商品は「塩だれホルモンミックス(盛り合わせ)」(980円)と設定することで、お客様の購買心理を誘導して、意図的にオーダーを勝ち取る戦略を構築することが、メニューコンセプトの役割です。
業態コンセプトでどのような業態となり、お客様に提供する価値を決めて、商品コンセプトで具体的な商品の軸を決めて、どの商品で集客を行いどの商品で利益確保をするかと、どのように消費するのかを決めます。
そしてメニューコンセプトで、実際のメニューの戦略を構築します。
売る商品、売る商品のために売らなくても良い商品と、売れたらラッキーな商品を決めます。
損して得取れを実現させる具体的な戦略を構築するのが、メニューコンセプトの役割です。
この3つのコンセプトが、一つのストーリーとして高い完成度となることで、集客力の有る業態となり、売れる業態になり、儲かる業態へとなっていきます。
この仕組みを構築するために意図的に戦略を立てて、狙って事業を成功へと導くことが、ビジネスとして飲食業が行わなければならないことです。
飲食業は実は、非常に論理的で道理が理解できれば、多くの方が成功できるビジネスモデルです。