カリフォルニアで本屋を作る #4 人から人へと旅する本
前回は「シェア型書店」について、
本屋としての特徴やその魅力を、
東京の「猫の本棚」さんに参加した経験をもとに紹介しました。
今回はその続編。
シェア型書店の「棚主」としての楽しみ、
「企画」にすることの楽しさ、について。
それから、棚主としての参加させていただく中で、
「不思議なことがあるものだ」
と感じたエピソードと、
モノとしての本の面白さについて触れます。
棚主/企画の楽しみ
シェア型書店のおさらいすると、
シェア型書店とは、ユーザーが棚を借りて、自分の本屋をはじめることが出来る「小さな本屋が集合した本棚を持つ本屋」
棚主(棚を借りているユーザー)は自分の棚(店)の性格、コンセプトや企画に沿って本を選んで棚に置く。
スコシフでの第1回特集テーマは「贈りたい本」。
「贈りたい本」では、
実際に誰かにプレゼントしたことがある本、
または、
これからプレゼントしてみたら面白そうかもと思う本、
を集めた。
当時はコロナの報道が連日報道されていた頃。
心にちょっとしたアソビを提供してくれるような本が良いかなと。
そして、スコシ、フフフ、となるようなユーモアも欲しい。
棚主として僕等はこうしたことを考えながら、ふざけながら企画をしていく。
どんな人が手に取るだろうか、
などと想像するのもまた楽しい。
本は旅をする
この「贈りたい本」の中には
武満徹の『夢と数』
という本があった。
世界のタケミツこと、
現代音楽の作曲家武満徹が、
自身の音楽言語や作曲についての分析や対話が視覚的にも美しくまとめられた本。形も大きさも独特で、20.5×20.5cm、厚みは1cmほどの薄さ。
今はなきリブロポートから出版されていて、
インテリアとして飾ることも出来そうな洒落た装丁。
棚に並べて3カ月ほどたった頃、
東京のアヅミさんから
「武満の本を買った人がいた」
との連絡があった。
そして、なんと
「武満徹の実の娘さん(武満真樹さん)が購入されたらしい」
とのことだった。
実の娘さんが?
あまりにも想定外のことだったので驚いた。
僕はこの武満徹の本を見つけたのは、
ロサンゼルスの南側に位置するトーランスという街にあるブックオフ。
武満徹のこの本は日本でも確かにほとんど見かけない本。
真樹さんもずっとこの『夢と数』探されていたそうだ。
印刷された本、電子のようにスピーディに移動できないけれど、
その遅さと重さの分だけ、人から人への贈り物にも、
メッセージにもなりうる物体だ。
この辺は、モノとしての本の面白さ。
ロサンゼルスから東京へ。
人から人へと旅をしていく本。
スコシフでの第一回の棚のテーマが「贈りたい本」だったので、
偶然とは言え、届けたい人の元へ本が旅立っていったようにも感じて
嬉しかった。
さて、
次回は本屋をはじめようと思ったきっかけ、その③
カリフォルニアでの生活について少し書きます。